討伐しに行った敵が犬系彼女でした

女神なウサギ

第1話 遭遇

 カタカタカタ・・・

パソコン室にキーボードを打つ音だけが鳴り響く。

あと少しー

「よし、終わり!」

ようやく課題が終了した俺は思わずガッツポーズをした。それから腕時計を確認して慌てて駆け出した。待ち合わせの食堂まではそれほど距離がないがそれでも心臓はバクバクする。

階段を駆け下りてダッシュすると食堂に会いたかった人の姿があった。

結依ゆい!」

結依は俺の姿を見て抱きついてきた

「もう、遅いよ弘樹ひろき

「ごめん、課題が終わらなくて」

「寂しかったんだからね?」

彼女の名前は神崎結依かんざきゆい。2年前から付き合っている俺の彼女だ。ロングヘアがよく似合う清楚系の女性で聞いた話によると彼女のゼミのなかでも人気があるらしい。

お詫びの印に優しく髪を撫でると笑ってくれた。

今日はお互いに授業が終了しているので帰るだけだ。

「結依、帰ろう」

「うん」

手をつないで最寄りの駅に向かう

「ねえ弘樹、たまには夜のドライブでも行かない?明日は弘樹も休みでしょ?」

「ごめん、夜は都合が悪くて」

「ちぇっ、つまんないの。弘樹はいつも夜の都合が悪いよね」

「面目ない」

結依は不満げに頬を膨らませて歩き、やがて笑顔を向けた。

「まあ、いいや。弘樹は浮気なんてしないって分かっているから」

「もちろん絶対しないよ。また今度デートしよう」

「うん!」

やがて最寄り駅に着いた。

「またね、弘樹」

「うん、またね」

結依の背中を見送り帰宅の途につく。

 家につくと俺は結依にも内緒にしている日課を始めた。と言ってもやましいことではなくゲームなのだが。若者の間で流行っているVRMMO、リアルライフワールド、通称リアライ。最先端の技術で作られたこのゲームは五感全てで異世界を堪能できる。痛覚まで再現してしまうため、結依に痛い思いをして欲しくないという理由から1人でプレイして内緒にしている。

 いつものようにダイブすると所属するギルドの中だった。

「こんばんはマサヒロさん」

「おう、ユウト来たか」

マサヒロさんはこのギルドのリーダーだ。リアライではアバターを作成してプレイを行い、マサヒロさんは筋骨隆々の剣を背負った姿。俺は鉄の鎧を身に着けた細身の剣士の姿だ。

 「さっそくだがクエストに行ってストーリーを進めてくれねえか」

「良いですが、どんな内容ですか?」

「実はこの近くの洞窟に敵の幹部が出現したらしい」

「幹部が?」

「ああ。だからそいつを討伐して欲しい」

「ちなみに他のメンバーは?」

「今は出払っている。出現の知らせを受けたのはついさっきでな。おそらく他のギルドのやつらもまだ向かってねえ」

「分かりました、行って来ます」

「厳しい戦いになるかもしれねえ。無理だと思ったら離脱しろ」

「はい」

 こうして俺は洞窟に向かった。松明たいまつを燃やして奥に進む。途中、岩を善良なマッチョスライムと一緒にどかしながら敵の反応がある深部までたどり着いた。地面を踏みしめながら進むと白いウサギ型のモンスター、ホワイトラビットの大群に埋もれた1人の女性がいた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

討伐しに行った敵が犬系彼女でした 女神なウサギ @Fuwakuma

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ