第28話 快楽の罪悪感

 暗闇の中。

 上の服を無理矢理に脱がされそうになる。

 俺よりも強い力で、抵抗する事もできない。

「やめなさい」

 と俺が言う。


「はぁ、はぁ、はぁ」

「はぁ、はぁ、はぁ」

 と2人の吐息が聞こえた。


「私は何もしてません」

 とミロが言った。

 彼女は奴隷紋を意識しているんだろう。


 俺の服を脱がそうとする腕は2本だった。


「ニケ」と俺は怒る。


「……わかってるよ」

 と彼女は言いながら、服を脱がそうとしてくる。


 コイツは何がわかってるんだ?


「マッサージしましょうか?」

 とミロの声が聞こえた。


 服が捲りあげられ、脱ぐ途中で止められた。

 顔面が服に覆われて喋る事もできない。


「やめろ」

 と叫んでいるのに、言葉が布で封じられる。


 どうにかしようと思ってモガいていると、服の上から顔面を乗られた。

 

「暴れたらダメ」とニケの声が聞こえた。

 彼女が俺の顔面に乗っている。


「マッサージしますね」とミロの声。

 半裸になった皮膚の上に、細い指が這う。

 クスぐったい。


「私も」

 とニケの声。


 4本の手が俺の体を弄る。


 俺の顔面に乗っているお尻が、擦りつけるように揺れる。

 息ができなくて苦しい。


「ズボンも脱がそうか」

 とニケの声。


「私はズボンを脱がすのが難しい」

 とミロの声。


「なんで?」


「奴隷紋が」


「ふ〜ん。ご主人様をなぶる事ができないんだぁ」


 カチャカチャ、とベルトの音が聞こえた。


 ニケが俺に覆いかぶさって、ベルトを外している。

 70の1つ手前の数字みたいな体位になっている。


 ミロが横腹をさわさわ、と撫でている。


「ズルい」

 とミロが呟いた。


「なぶれないんでしょ?」


「私のもんだもん」

 とミロ。


「硬くなってんじゃん」

 とニケ。


「触ってるの?」

 とミロ。


「秘密」

 とニケ。


「ご主人様、私も触っていいですか?」


「2人とも離れろ」

 と俺は言ったけど、口は服が抑えられていて、その上に乗られているから「うー、うー、うー」としか声が出ない。


「ありがとうございます。ご主人様のモノいただきますね」

 

 了解してねぇーよ。


「私のヤツだから」

 とニケが言う。


「私のヤツです」


「もう無理」


「もう食べてますか?」


「私が先にいただいたもん」


「ズルい」


「ミロは違うところ食べたらいいじゃん」


「私もほしい」


「ダメ」



 朝が来るまで俺は何度も朽ち果てた。

 快楽の後には罪悪感が広がり、次にオールヒールが機能する。

 俺はダメなヤツだ。もう日本に帰る事ができない。落ち込んだ後には2人の女性が快楽を求めて来る。


 もう日本に戻れないんだろうか?


 洞穴の入り口に太陽の光が差す。

 彼女達は眠っていた。


 黒猫は帰って来ていなかった。

 もしかしたら途中で洞穴に戻って来たのかもしれないけど、……気を使って入って来なかったのかもしれない。

 脱ぎ捨てられた服を着て立ち上がり、洞穴を出た。


「チェルシー」

 と俺は叫んだ。



「逃げろ」

 とチェルシーの声が森の中から聞こえた。

 鳥の羽ばたきが聞こえ、空に何匹もの鳥が飛んだ。

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