第12話 欠損

 ミロは村のために故郷を出て、聖騎士団に入り出世した。


 そしてココから勇者パーティーとしての冒険が始まる。

 冒険とは成功するかどうかわからない事を行うことである。

 

 勇者が召喚された。俺と同じように、王都から離れた草原に召喚され、冒険者ギルドを介して馬車で王都に勇者は招かれた。


 勇者は、まだ17、18歳ぐらいの青年に見えた。俺と同じように見た目だけ若返っている可能性があるので本当の年齢はわからない。

 

 まだ魔法も使えないし、剣も握った事もないのに、王都に付いてすぐに魔王を倒しに行くように王様から命令された。

 その時にミロと新妻が紹介された。

 勇者は新妻さんを見た時、日本人がいる事で少し安心したような顔をしていた。異国の地で、帰り道もわからない状態で、同じ国の人間がいる事で勇者は安心したんだろう。

 勇者パーティーは、異世界に来たばかりの勇者と新妻とミロ、その他3人。全員で6人だった。


 王様に魔王を倒すように命令された勇者は、ゲームのような設定に喜ぶわけではなかった。

 家に帰りたい、という自分の主張が聞いてくれない事に困っていた。



 ミロの記憶を見ていて、デジャブ感があった。勇者の立場は、俺とまったく同じなのだ。この国では同じ事が繰り返され続けている。それは魔王を簡単に倒せるようなSS級の勇者を引くまで続くのだろう。


 王様は勇者ガチャをやっているのだ。


 そして勇者は訓練もしていない状態で冒険を始めた。それにミロは同行する事になった。

「魔王を倒したら、日本に帰れるぞ」と新妻さんは勇者に言った。




「この辺は武蔵と同じだから早送りするぞ」とチェルシーが言う。「つーか、呪われるところを知りたいんだっけ? それまで一気に飛ばそうか?」


「いや、早送りでもいいから見たい」

 と俺は言う。

 自分の過去を追体験しているような感じだった。

 魔王を倒しに行ったパーティーも似たような感じである。新妻さん以外は変わっているけど、俺のパーティーも同じように聖騎士から選ばれていたのだ。


 映像が猛スピードで動いていく。編集されて早送りされているけど、なんとなく物語はわかる。冒険を始めた勇者。始めはゴミカスだったけど、勇者という称号を貰っているだけあって強くなるスピードが早かった。


 ミロの記憶にある勇者は圧倒的に俺より強い。俺がEランクの勇者なら、彼はBランクぐらいかな?

 自分をEランクとは言いたくはないけど、俺は回復魔法しか使えない。勇者である事が奇跡なぐらいである。


 そして俺の冒険と違って、優秀な魔法使いもついていた。彼はミロから魔法を教わり、恐るべき速度で上達していく。

 そんな勇者に対してミロは恋をした。

 頑張る勇者に……才能溢れる勇者に……恋をしたんだろう。もしかしたら単純に、顔が好きだったのかもしれない。


 すごいスピードで映像が早送りされる。

 たぶん重要な内容も早送りされていく。

 勇者と新妻さんとの確執はあったんだろうか?

 たぶん、冒険の最中は、それほど無かったんだろう。

 日本の話をしたり、故郷に子どもを残してきた事を話したり……。

 早送りしすぎて勇者のキャラクターも掴めていないけど、別に、それでいい。じっくりと見たいって訳じゃない。



 魔王戦になったところで早送りの速度が遅くなった。魔王は目を奪われるぐらいに美しい女性である。イライアというのが魔王の名前だった。彼女には剣も魔法も効かない。魔王に辿り着くまでに様々な魔物と戦い、色んな魔法を使えるようになったのに、勇者達はイライアに敵わなかった。ただ負けを認めて、必死に逃げるしか出来なかったのだ。魔王戦で残ったのはミロと勇者と新妻の3人だけだった。



 傷はエリクサーで治して、3人は王都に帰った。

 全然、魔王には歯が立たなかったのだ。

 再戦するだけの気力も3人には残っていない。

 何日もかけて、城に辿り着くと玉座がある部屋に通された。


 ココからは見ているだけで不快だった。

 俺は目を閉じて、映像を見ないようにした。


「見るのやめるか?」

 とチェルシーに尋ねる。


「いや、見る」と俺は言って、瞼を開けた。



 チェルシーが映し出す映像の中から声が聞こえた。「魔王を倒せなかったのじゃな」と王様の声である。髭を生やして王冠を被った、いかにも王様である。

「すまぬが次の勇者を召喚するために死んでもらう」

 と王様は言ったのだ。


 俺も同じ事を言われた。


「何を言っているんですか? 王様」

 とミロが尋ねた。

「勇者は魔王を倒すために戦って来たんですよ?」


 その時に新妻さんの手によって、勇者の首ははねられた。

 ミロの隣で首をはねられた勇者。

 彼女は勇者の首を見つめた。 

 映像が一気に真っ赤に染まる。

「キャーーーーーーーーーー」とミロが悲鳴を上げた。


 そこから、ありとあらゆる魔法をミロは新妻さんに放った。だけど彼には魔法無効化がある。ミロの攻撃は彼には効かない。


 映像は赤色に染まっていた。それが黒に変化していく。壊れた液晶画面のように。

 暗闇の中で、新妻さんが剣を振っているのがわかった。

 彼の刃はミロに向けられていた。


 次の映像でも、液晶画面が壊れたように黒く染まっている。

 どうやら彼女は牢屋に入れられ、芋虫のように地面を這っていた。

 彼女の手足は新妻さんの手によって切断され、魔力を使えないように耳たぶも切られていた。


 エルフは耳たぶに魔力を溜めている。新妻さんは彼女が魔法を使えないように耳たぶを切っていた。金だった髪も耳たぶを切った事で黒色になっていた。

 エルツにとって髪質と魔力には関係性があるんだろう。


 

 それからミロは道具のように扱われた。壊れた道具。粗大ゴミに出すまで誰にも見向きもされず、ただ何も出来ずに地面に転がっていた。たまに叫んで泣いていた。次第に何も発する事も無くなり、粗大ゴミを引き取る人物が現れた。


 誰かが手引きして、忘れられた粗大ゴミを売ったのだろう。彼女を引き取ったのは杖をついた老人だった。老人は貴族らしい。ミロを引き取り、馬車でミロを自宅まで連れて行った。その時に見えた窓から、彼の自宅が大豪邸である事はわかった。


 老人に引き取られたミロは地下室に監禁された。そこで老人のオモチャになるために、紫色の水晶を飲まされていた。それが呪いなんだろう。紫色の水晶を飲まされた時からミロは発情するようになった。

 老人は生殖器が不全らしく、杖でミロを犯していた。




「この杖ジジィの家は、ココからそう遠くねぇー」

 とチェルシーが言った。


「そうか」

 と俺は頷く。

「もう映像を消してくれ」

 と俺が言う。

 ミロが杖で犯される映像が流れていた。


「ココからは杖ジジィが別のオモチャを手に入れてミロに飽きて手放す。そしてお前と出会うだけだから、白熱した料理バトルが展開される訳じゃねぇー」

 とチェルシーは言って、映像を切った。















(作者からのお願い)

 面白かったら作品フォロー、作者フォロー、☆☆☆での評価よろしくお願いします。


関連作品は『性奴隷を飼ったのに』です。もしよかったら読んでください。

https://kakuyomu.jp/works/16817139558183718127

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る