第33話 ポータル異常レスキュー (9)

【荒野のジャングル】

【中立地帯】

【310年】

【12:50】



 この恥ずかしい状況から抜け出すために、私はすかさず話題を変えた。そして咳払いもした。


「健二。前のチームはどうした?」


「待ち伏せされて捕まったのを見た」


「それと、茂みに隠れていたのか?」


「はい。彼らのチームリーダーが私を茂みに押しやり、水筒をくれました」


「彼らが捕まったとき、チーム全員が生きていたのか?」


「はい」


「失礼します」


 私はヘッドセットでレイラニに伝えた。


「レイラニ。次の計画は?」


「まず、健二に魔法のランナーになりたいか聞いて」


「了解」


 私は健二のところに戻った。


「魔法のランナーになりたい?」


「断ったらどうなるの?」


「記憶を消して地球に帰すよ」


「そうなんだ」


「あと、ランニングウォッチにはゲーム的な要素もあるよ」


「せっかくの異世界滞在のチャンスを逃す手はないね。魔法のランナーになるよ!」


「魔法のランナー旅団へようこそ」


 ヘッドセットとランニングウォッチを健二に手渡した。


 ヘッドセットを装着した健二に、レイラニが説明を始めた。


「わかった。ゲームみたいなものなんだね」


「そう」


 数分後、健二がランニングウォッチを起動させた。


「魔法のランナー!変身!」


 健二の私服が魔法のランナーのユニフォームに変身した。


 私は健二に予備の水筒とエネルギージェルを渡した。


「ありがとう」


「どういたしまして」


 その間、ミアとエリーは周囲に敵がいないか目を光らせていた。


「準備はいい?」


「はい!」


 私はフードをかぶった。ミア、エリー、健二もフードをかぶった。


「行くぞ!」


 私たちは一緒に走り出した。


「北に向かう囚人たちを見かけた」


 と健二が言った。


「了解」



【魔帝国キャンプ】

【荒野のジャングル】

【中立地帯】

【310年】

【13:40】



 走っていると、魔帝国の野営地が見えた。


「チームアジュール。まずは魔帝国の野営地を観察する必要がある」と


 レイラニが通信してきた。


「了解」


 私たちは野営地の近くの木の後ろに隠れ始めた。観察していると、デーモンたちが話し始めた。


 デーモン兵士が地面にひざまずいた。彼はテントに向かって報告を始めた。


「閣下! 魔法のランナー旅団がまたチームを送ってきました」


 赤いフード付きマントをまとった男がテントから出てきた。


「そうか。犠牲者は出たか?」


「はい。魔法の狙撃手と弓兵を失いました」


「そのチームは腕が良いに違いない。捕虜がいるので、ここで彼らが攻撃してくるのを待とう」


 領主は笑った。

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