第26話 ポータル異常レスキュー (2)

【シルバーハンド道場】

【東京、日本】

【2018年4月22日】

【10:00】


 空想の友達と約束してから1週間後、私は道場で稽古を続けた。


「ミキチくん。刀の振り方、上手くなったね」


「ありがとうございます、師範」


 私の師匠はハマモトサトウという中年男性である。彼は黒い目、黒い長いポニーテール、黒い稽古着を身に着けている。


 稽古が終わってから、私は師匠に新しい人生の目標を打ち明けることにした。


「師匠。私は道場を出たいのです」


「なぜ?」


「恥ずかしいのですが、その理由とは」


「いいから、理由を言ってみろ。笑ったりしないから」


 師匠は私の背中を撫でて微笑んだ。


「空想上の友達と、ランナーになるって約束したんだ」


「空想上の友達? それは興味深いね」


「ちょっと待って。笑わないの?」


「ミキチくん。ランナーになることは、素敵な人生の目標だと思うよ」


「なるほど」


「それから、よく聞いてくれ。将来、あなたは王女に仕えることになる。王女はあなたを甘やかすだろう」


「それって、作り話?」


「うん。からかってるんだよ」


 しかし、師匠が冗談を言っているのかどうかは判断できない。その言葉を発した師匠は真剣な顔をしていた。


「ご主人様。私を鍛えてくださってありがとうございます」


「いいんだ。 でも、帰る前に弓の射方を教えてやる」


「なぜ?」


「弓と矢は、将来役に立つだろう」


「修行を受けます」


 1か月後、私は弓矢の使い方を習得した。




 ***



【住宅街】

【魔法のランナー旅団本部】

【ルナ王国、 フェブルタウン 】

【310年】

【08:00】



 私の腕時計が鳴り始めた。ボタンを押した。


「私は子供の頃の夢を見ていたのだろうか?」


 その夢のおかげで、師匠の言葉を思い出した。私はその言葉を口にした。


「将来、あなたは王女に仕えることになる。王女はあなたを甘やかすだろう」


 まあ、今は王女に仕えている。王女は私を甘やかしてくれる。師匠は冗談を言っていたわけではないのだ。


 師匠はレイラニと関係があるのではないかと思い始めた。


 突然、玄関のドアをノックする音が聞こえた。数秒後、ドアが開いた。


「お邪魔してすみません。起きてますか?」


 レイラニがドアを開け、パジャマ姿の私を見た。


「おはよう」


「おはよう」


「ミキチ、緊急ミッションだ」


「そうか。それと、君に言っておきたいことがある」


「何だ?」


「シルバーハンド道場の師匠が、あなたのことを知っていると思う」


 私はレイラニに師匠の言葉を伝えた。


 レイラニはその言葉を聞いて顔を赤らめた。そしてすぐに落ち着きを取り戻した。


 その間、私は笑いをこらえていた。


「からかっているんじゃないでしょうね?」


 レイラニは不機嫌そうに言った。


「からかっているわけではない」


「信じてるよ。マスターのことは後で調査しよう。正装して司令室に報告してくれ」


「了解」


 レイラニは私のアパートを出て行った。私はいつものランニングウェアに着替え始めた。着替えを終えると、魔法のランナーの制服を起動させた。


【魔法のランナー起動】

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