水晶玉から見えたのは sideリーリエ
水晶玉には、岩場に立って悪魔と対峙するアナベルさんが映っていた。
『ご機嫌よう。不法侵入者さん。わざわざ魔界まで来てどうしたのかしら。出来ればこのまま帰っていただきたいのだけど』
可愛らしく首をコテンと傾けながら、彼女は悠然と微笑む。その微笑みの美しさと言ったら。同性の私でも思わず見惚れてしまうほどだった。
風に靡ても艶を損なわないストロベリーブロンドの髪。切れ長な形を長いまつ毛が縁取る、まるで宝石をそのままはめ込んだような真紅の瞳。この世のものとは思えないほど整った顔立ち。その顔が、一番美しく見えるように計算された微笑みを浮かべるのだ。浮世離れしすぎていて最早恐怖を感じてしまいそうなほどだった。
『コトワル。
『〜〜〜〜〜〜』
ボン!!
私が見惚れている中でも、水晶玉の中での銭湯は続く。アナベルさんに向かって、悪魔は
「危ない…!」
ここの声が届かない事はわかっているけれど、思わず叫んでしまった。
『
ジュウゥゥ
熱したフライパンにベーコンを乗せたときのような音をたてて、
「これは…」
「
魔術自体、魔界に来てから初めて見る私が目の前に映ったものを理解できずにいると、魔王様が解説をしてくれる。
「なるほど。
「ほぅ、この説明だけでそこまで分かるとは。大したものだ」
魔王様が満足気に頷く。そんな大したことはしていないのですが…
『随分なご挨拶ね。いきなり攻撃してくるなんて、マナー違反だと思わないの?…まぁ、戦闘にそんなの関係ないか』
アナベルさんが話している間にも次々と
ボン!
てっきり目に前にいる悪魔に放つとかと思ったら、彼女は空に向かってそれを放った。
「ギャーーーー!」
悪魔の悲鳴が聞こえた。たしかに、報告では中級悪魔が一体と下級悪魔が二体だった。まさか奇襲してくるとは。
『じゃあね、不法侵入者さんたち。
更に魔を開けず、驚いて固まっている二体の悪魔に向けて、アナベルさんが無数の攻撃を放つ。
ボン!ボン!ボン!ボン!ボン!…
「ア!ッギャ!グゥ!ア!ヴ!」
「〜!〜〜〜!」
一つ一つが小さくても、少なくとも千はある
「すごい…」
なんの前触れも無しに、あんなに多くの
「無から何かを生み出すのは、すでに存在するものを動かすよりも魔力を使うんです。あんな数を一気に、しかもその前に巨大な
カイトさんが苦笑しながらも言う。結構自由奔放なアナベルさんのことだから、今日みたいにササっと一人で行ってしまうこともあるのだろう。諦め気味だ。
『
そう唱えて手を振ると裂け目がバリン!と音を立てて壊れた。
『さ、仕事が終わったし帰ろ。
そうして、アナベルさんは水晶玉から消えた。
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