おやおや?
「あらららら」
「なにをしているんだい?アナ。覗き見とは関心しないな」
「ひゃ!っリ、リアン」
私がコソコソと窓から外を覗き見してると、後ろからリアンが話しかけてきた。
(ち、近い…)
話しかけるついでに私を覗きこんできたから、顔がとにかく近い。おそらく、顔を上げたら唇がぶつかってしまうだろう。果たしてリアンは無自覚なのか、わかってやっているのだか。後者だとしたらタチが悪い。だって、さっきから心臓が暴れてうるさい。顔も紅潮しているだろう。あぁ、上を向けない。
「あれみて」
そう言って私が指差した先には、庭園を歩くリーリエとオースティンがいた。オースティンが花を指してリーリエに何か言葉をかけた。すると、リーリエが笑顔でその花を撫でながら何かを話し始めた。きっとオースティンが花について聞いたのだろう。花に一切興味がない彼は知識がない。だから、リーリエが王妃教育で培った知識を当てに尋ねているのだ。まぁ、多分リーリエと話すための口実なんだと思う。だって最近オースティンたリーリエを見る目が優しい。いつもの彼からはありえないくらい。
「あぁ、あの二人か」
「うん」
「オースティンが仕事を爆速で終わらせて、楽しそうに出て行ったのはこういうことか」
「お似合いだと思うのよ」
「リーリエ嬢も満更でもなさそうだしな」
「オースティンってあんな顔できるのね」
「…あぁ、そうだな」
まさにリアンの言う通り、リーリエも嬉しそうに頬を赤く染めて笑っている。そのエメラルド色に目に混じる感情は、オースティンへの恋慕だろうか。二人で寄り添う姿はとてもお似合いだ。
「魔界の端っこで女の子拾ったんだけど、なんだか魔王様といい感じじゃない?」
「ん?何か言ったか?」
私はぼそっとそんな事を言ってみる。リアンには聞き取れなかったらしい。怪訝な顔をしている。
「んー?なんで、も」
バチッ
「やっば」
「ん」
私はシュバっと効果音がつきそうなくらいのスピードでしゃがみ込んだ。オースティンと目があった。これじゃあ、わざわざコソコソ覗き見していた意味がない。恐る恐る窓の方に顔を出すと、オースティンがこちらを軽く睨んでいた。
「バレちゃった」
「バレちゃったね」
「どうしよっかな…お?」
リーリエがオースティンを見上げると、彼のの眉間に刻まれていたシワが一瞬にして消えた。穏やかな表情を浮かべている。変わり身が早い…と思ったら、リーリエに見えない角度で改めて睨んできて、口パクをした。
(えーっと)
『さ っ さ と い な く な れ』
『は い』
流石にこれ以上は無理だと悟り、私達は廊下を歩き始める。
「リーリエちゃんが魔王妃になってくれたらいいのに…『あの』オースティンが明らかに惚れる相手なんていたことないもの」
「…正確には一人いたけどな…まぁ、あちらも楽しそうだし、これから俺の部屋でお菓子でも食べない?さっき、新作のケーキをもらったんだ」
「行く!」
前半部分は聞こえなかったが、なんて魅力的な誘いだろうか。新作という事は初めて食べる味だろうし、楽しみだ。
「いきましょう!」
そう言って私は、鼻唄を歌いながらリアンの手を引いた。
「全く、警戒心がないんだよ。いくら幼馴染でも男の部屋に行くのは無防備すぎだ…俺も男だぞ…」
あまりの楽しさに、リアンのひとりごとは私の耳には届かなかったのであった。
その頃の、レオナルド&ソフィア。魔界の中心部でデート中。こちらの雰囲気はさながら熟年夫婦といったものであった。
今日も今日とて、魔界では恋人(?)達のイチャイチャで溢れていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます