第8話 突然の提案

 「お前たちを呼んだのは、他でもない......って、この言葉使い。やめよ。堅っ苦しくて、なんかヤダ」


 今まで、威厳たっぷりに話していていたアンフィニ卿レオナルド殿下は、そう言うと急に、“幼馴染の顔”に戻り、友人“レオ”として、こちらに話しかけてくる


 「アル、噂には聞いていたけど、今、父上の城の護衛兵やってるんだって?聞いたときビックリしたよ」


 「殿下のお耳にも、そのような......」


 「いいって、アル。昔みたいに“レオ”って呼んでくれ」


 そう言うと、レオはまた、威厳たっぷりの表情で、従者たちに命令を下す

 

「皆のもの、この方々は、我の古き友人たちである。もう下がっても良い。そして、この後丁寧にもてなすように」


 そういうと、ポールを含め、従者は去っていった。広い応接間には、俺たち3人だけとなった。しばしの沈黙のうち、座から降りたレオが、俺たちのところに駆け寄った


 「ようやく、俺たち揃ったな。『幼馴染の次男坊』復活だ」


 そう、おどけるレオに、エルがすかさず、疑問を投げかける


 「ところでレオ、なぜ、あなたがアンフィニ卿を名乗っているの?そして、私たちを呼び出した理由は?」


 先代アンフィニ卿、アルベルト・ヴァンケルは、3年前、病により崩御した。独身であった先代は、本家の当代である、ギュンター・ヴァンケルに自身亡き後、次男レオナルドを養子にする様、遺言を残していたのだ。その遺言に従い、レオは6代目アンフィニ卿を継いだのだと言う


 「とは、言ってもウチは分家だし。公務と言っても時折、本家の父上、そして兄上と一緒にミクラスの皇帝に挨拶いく程度だからね。まあ、基本的には偉そうに座ってるだけだよ」


 「レオ、まだ何か隠してない?」


 アルがすかさず尋ねる。レオは昔から嘘をつく時、目が泳ぐ癖があった。アルはそれを見逃さなかった。するとレオは頭をかきながら、笑った


 「実は、身分を隠して街で剣術道場をやってるんだ。結構評判なんだぜ」


 「へぇー、レオ、剣術の先生もやってるんだな。あとで、手合わせお願いしようかな」


 「ああ、いいぜ。この後にでも道場に案内するよ」


 男2人でワイワイと話が弾む中、痺れを切らしたエルが遂にキレた


 「......ッじゃなくて!!レオ!貴方が、私たち庶民2人を、こうして呼びつけた理由よ!」


 ハッとしたレオが『忘れてた』と言わんばかりの顔をして平謝り。そして咳払い一つして、こう言った


 「俺と一緒に旅に出よう。魔界の脅威から世界を救おうぜ!」


 「「は?はいぃ!?いま何と!?」」


 アルとエルは、また同じセリフを同じタイミングで放ったのであった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る