第3話 変わり果てたレオナルド
レオが姿を見せなくなってから、1週間が経った
アルは、前にレオから教えてもらった秘密の抜け穴を通り、領主ヴァンケルの城に忍び込んでいた
「コラ!何をして...っとこれは、レオナルド坊ちゃんのご友人、アルフレッド坊や」
辺りを見渡しながら、見つからないように廊下を進んでいたアルを、聞き覚えのある老人の声が引き止めた。彼の名はポール。このヴァンケル家の執事の1人だ
いつも勝手に忍び込む、アルやエルマーを叱りつけるも、お茶やお菓子をご馳走してくれる“良い人”だ。格好は普段通り、
「ところで、レオ......レオナルドは元気?」
すると、ポールの表情が曇る。ついておいでと、言われたので、ポールについていく。レオの部屋の前までくると、ドアを2回ノックした
「レオナルド坊ちゃん、お友達のアルフレッドくんが、お見舞いに来てくれましたよ。坊ちゃん、入りますよ」
ガチャリと空いた先には、ベッドの上でまるで別人のような雰囲気で、静かに腰を下ろした幼馴染の姿だった。アルの姿を見るなり、「君が、アルフレッドくん?」なんて寝ぼけたことを言っている
「何言ってんだよ、レオ!なんだよその喋り方は!ふざけてないで、元気ならいつも通りでいいって......」
「坊ちゃんは、ふざけてるのではありません。何もかも、忘れてしまっているのです」
その言葉に、アルは強いショックを受けた
ポールの話では、原因不明の高熱が続いたレオは、2日前、なすすべなく息を引き取った。だが、その翌日、レオは息を吹き返したのだと言う
だが生き返ったレオは、何故か「サカグチ アキラ」と別人の名を名乗り、「ニホン」なる聞いたこともない国から来た、「タダノ サラリーマン」と言うこれまた聞いたことのない、種族であることを話したと言うのだ。その代わり、両親や兄弟はおろか、自分の名前さえ忘れてしまっているとのことだ
「神は残酷だ。坊ちゃんを、生き返らせた代わりに、魂を持って行かれた。ああ......おいたわしや......」
アルは、返す言葉もなかった。あのレオが、自分たちのことすら忘れているのではないかと思うと、怖くなり、涙が出てきた
「お辛いですな......。そうだ!アルフレッド坊や、暫く、坊ちゃんの話相手をしてくれませんか?何か思い出すかもしれないですしな。今、お茶を淹れてご用意致しますのでお待ちを」
ポールは、そう言い残すとアルとレオを残して部屋を出て行った
「......なぁ、アルフレッドくん。笑わないで聞いてくれる?」
沈黙を破ったのは、レオだった
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