第2話 俺たち、『幼馴染の次男坊』

 マズーダ領主国。海に面したこの小さい国は、帝国ミクラスの属国であり、漁業や貿易で栄えている


 ある公園で、3人の少年たちが遊んでいる。『幼なじみの次男坊』。仲良しな彼らはそう名乗り、木陰の“作戦室”で地面に書いた、架空の戦略図をみながら作戦会議をしている


 「いいか、今日は隣国サムーゲの悪の大王、ビルゲを討つ。アル将軍、エル参謀。作戦は?」


 ウェーブのかかった褐色の髪をした少年は、イタズラっぽい笑みを浮かべた。このマズーダ領主国、領主の次男坊『レオ』、レオナルド・ヴァンケルである。


 彼がこう言うと、黒髪の少年、商家の坊々ボンボンの次男坊『エル』、エルマー・ロベールが進言する


 「領主様、サムーゲは寒い冬の国。コートや温かいスープを用意するお金がないので、春を待って攻めてはいかがでしょう?」

 

 「エル参謀、それでは我が国が責められ、あっという間に滅びてしまう......どうすれば!」


 「領主様、私にお任せください!」


 そして、この少年。漁師の次男坊『アル』ことアルフレッド・エンデは、自慢の木の棒を振り回しながら、木陰の外に出る。レオは笑って、エルは少し呆れた表情でその様子を見守っている


 「我こそは、アルフレッド・エンデ大将軍だ!さあ、死にたいやつからかかってこい!領主様、私めが敵を薙ぎ払ってご覧に入れましょう!」



 日が暮れて、遊んでた広場にレオとエルの世話係が迎えにきた。手を降って2人と別れると、アルは1人、家路につく。レオとエルとは違い、アルの家は漁師だ。親父は毎日漁へ出て、お袋は魚市場で魚の選別。こうしてアルと2つ上の兄に飯を食わせ、学校に行かせてくれた


 大人の身分の話など、アルにはさっぱりわからない。だが、レオもエルもそんなことお構いなしに、アルと仲良くしてくれる。皆10歳の子どもで兄貴がいる、次男坊。性格や家柄は違えど、馬が合う『幼なじみ』なのだ


 次の日、なぜかレオは広場に現れなかった。代わりに広場に来た、レオの家の召使いが、レオが高熱で寝込んでしまったことを教えてくれた


 「レオ、大丈夫かな。風邪でも引いたんじゃない?」


 心配するエルを、アルは笑い飛ばした


 「大丈夫だって!レオが風邪引くような奴かよ、きっと悪いもの食ったんじゃないか?」


 だが、1週間経っても、レオが広場に現れることはなかった

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