第73話 再戦と螺旋の槍
灼熱の
牙が外殻に食い込み、内と外から熱で炙る。
攻撃はそれだけに留まらない。炎は
「――――‼」
「ぐっ!」
全身に脚が掠り、鋭い痛みが走る。
まだだ、まだ
「どっせぇぇええい!」
そこへ
騎町さんが、『クリエイトシールド』を展開しながら俺と
『クリエイトシールド』は盾を作成する
クリエイトシールドは実用レベルで使える人間が少ないと聞いていたが、騎町さんのそれは確実に
業を煮やした
「させるか!」
今度は空道が空中から
「――シネ、シネ」
それでも倒れない。
「ぐぁっ!」
「キャァ!」
赤い光が血の代わりに噴き出し、二人とも声を出すこともなく視界から消えた。
いい加減にしろよ。
俺は
「うっ!」
戻した炎が身体中を駆け巡り、全身が沸騰したように熱くなる。血が濁流となって流れ、血管が広がり、視界が赤く染まる。
露出した肌にひび割れのように赤のラインが走り、火の粉が散る。
これは、長くはもたない。
膨大な
踏み出し、
想像以上の速度で、俺は
しかしそのためには、まず刃脚を殴って体勢を崩す。
元々の六本であれば希望がなかったが、王人や星宮たちのおかげで脚は四本。
一本でも弾き飛ばせば、崩せる。
「──」
瞬間、
後ろの二本脚で身体を持ち上げたのだ。
デカ──!
元々大きかった身体が、立ち上がったことで二倍近く高くなる。
本能的に感じる威圧。
それだけではない。高くなったということは、シンプルに女の上半身が遠くなる。
更に、高い位置から振り下ろされる
ガガガガガガ‼︎ と地面が掘削され、瓦礫が弾丸のような速度で身体にぶつかってくる。
「いっ──!」
予期せぬ方向からぶつかってくる衝撃に、思わず声が漏れる。
こんなことに構うな。
『
むしろ集中力が切れたところに攻撃を受ける方が最悪だ。
二本足で立ってくれるというのなら、好都合。股下まで潜り込めば、こちらが有利。
そう思えたのは、ほんの一、二秒だった。
絶え間なく振り下ろされる刃脚はもはや分厚い壁に等しく、抜けるのは至難の業。
しかも何とか攻撃を避けて一歩前に進んでも、
一定の間合いを維持しながら、攻撃を続けてくるのだ。
徹底している。
やはり、ただ力が強いだけじゃない。こいつは俺よりも強いのに、油断することなく、叩き潰しに来ている。
しかも
蜘蛛の身体の向こう側で、赤い糸が散るのが見えた。
糸を避けながら刃脚を捌くのは不可能。『
しかし今回に限っては、糸は俺が対応しなくてもいい。
それが俺へと振りかかろうとした時、その全てが軌道を曲げ、周囲に散らばった。
「――‼」
そのからくりに、
俺たちから少し距離を取って腕を振るう紡だ。
彼女が発動する『
俺に当たることはない。
そこで初めて
迷いは行動にためらいを生む。
それは、隙だ。
「――」
息を吸う。
吸った息を燃焼させ、身体を燃やす。
刃脚と刃脚の隙間に見えた、道。今なら、ねじ込める。
踏み込みと同時に
それでも行く。
そしてその思いを、紡が後押ししてくれた。
跳んだ直後に、背後で糸が爆発した。『
攻撃と攻撃の合間に生まれた一ミリの
そこへ矢のように身体をねじ込み、抜ける。
「ッ――‼」
「――」
目前に、
確実に手が届く距離。ここまで来れば刃脚での迎撃は不可能。
そして糸も紡によって無力化されている。
構えるのは、喰らった炎を圧縮した右腕。五枚の花弁を揺らし、刃のように輝く。
これが今出来る俺の限界だ。
「
今まさに拳を放とうとした瞬間、あることに気が付いた。
その巨大な回転は、外部からの生半可な力など、全て弾き飛ばす。もはや
何のために作られたものなのか、俺は直感的に理解した。
しかしもう賽は投げられた。運命が決するまで、その動きが止まることはない。
「振槍‼」
五枚の花弁が激しく燃え上がり、拳はあらゆるものを
迎え撃つのは、糸の
糸を貫き、拳は突き進む。
『
そう、これがただの糸であれば、振槍はこのまま
しかし、この糸は捉えるためでも、防ぐためのものでもない。触れたものを破壊しつくす、殺意の
「
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