第51話:ローゼンファミリー
家を買ってから1週間経って、この家で暮らしにも慣れた。この家にはデカい風呂もあるし、結構、快適に暮らせている。
俺とライラは毎晩一緒に寝て、
ガゼルたち『野獣の剣』の他の3人は毎日午前中に来て、俺はみんなの鍛錬に付き合う。
ライラも鍛錬に加わるようになって。俺とライラが手合わせするとき、『野獣の剣』のメンバーたちとクリフはじっと見ている。混じりモノのライラの実力は、他のみんなとは段違いだからな。
俺は適当な時間に犯罪都市ガルブレナを抜け出して。街から離れた場所で、魔物狩りと自分の鍛錬をしている。鍛錬をすることは習慣で、しないと身体の切れが悪くなる。魔物狩りで魔物の素材と魔石が手に入るから一石二鳥だ。
この一週間。家に張った結界に何かが触れて、アラームが鳴ることは度々あった。だけど、まだ結界を破られたことはない。
夜中にアラームが鳴ったときは、侵入しようとした奴を確かめに行った。案の定、ガラの悪い連中が門を抉じ開けようとしたり、塀をよじ登ろうとしたりしていた。
だけど俺は立体状に結界を展開しているから。結界を破らない限り、家に侵入することはできない。
「おまえたちは、何をしているんだよ?」
一応、質問するけど。何も答えずに逃げようとしたから、当然仕留める。
誰かの命令で動いている可能性もあるけど、口を割るか解らないし。相手が解ったところで、部下が勝手にやったとか言われたら、それまでだからな。
そんなことが毎晩のようにあったけど。朝になると、俺が仕留めた奴の死体は決まって消えていた。
ガゼルの鍛錬の相手をしているとき。家の門の前で2台の馬車が停まる。馬車から出で来たのは4人の獣人で、全員黒服を着ている。
無視していると呼び鈴が鳴る。一応、門のところに呼び鈴を設置している。これがないと俺に用がある奴が来ても、侵入者と同じように扱うしかないからな。
「あんたがグレイか?」
門のところに行くと、虎の獣人が言う。4人の中で一番強そうで、同じ虎の獣人のギースよりは品がありそうなイケメンだ。
「俺に何か用があるのか?」
「俺は『ローゼンファミリー』の幹部マーシュ・ロフトンだ。うちのボスがあんたたちに話があるらしくて。一緒に来てくれないか」
『ローゼンファミリー』は『獣王会』と同じ、犯罪都市ガルブレナの三大組織の1つだ。
話があるなら向こうが来るのが筋だけど、そんなことでゴネるつもりはない。
俺たちは2台の馬車に分かれて乗る。俺とライラとクリフがマーシュが乗る前の馬車に、『野獣の剣』の4人が後ろの馬車に乗る。
ライラがマーシュに見せつけるように俺に抱きつく。
「ちょっと、ライラさん! グレイも止めた方が……」
「いや、構わないぜ。あんた、良い女だな。グレイの女じゃなかったら口説いているところだぜ」
マーシュは事もなげに言う。本当に気にしていないようだな。
「貴様などが、私に釣り合う筈がなかろう。私の身も心もグレイのモノだ」
ライラは嘲るように笑う。
「俺も随分と安く見られたものだぜ」
マーシュは笑顔だけど目が笑っていない。クリフがハラハラして、居心地悪そうにしている。こいつも俺と一緒にいるんだから、そろそろ慣れないとな。
馬車で案内されたのは『獣王会』の本部と同じくらいの規模の豪邸だ。ここが『ローゼンファミリー』の本部って訳か。
建物の中に入ると。これも『獣王会』の本部と同じように、たくさんの構成員たちが待ち構えている。マーシュたちのように黒服ばかりじゃないけど。大きな組織の連中は、どこも人数を見せて威圧しようと考えるようだな。
広い部屋に案内されると、壁際に構成員たちが立ち並んでいて。テーブルを囲んでいるのは年配の獣人たち。如何にも人を殺すことに慣れているって感じの奴らだ。
「わざわざ来て貰って悪かったな。俺が『ローゼンファミリー』を束ねるガルシア・ドレイクだ。立ち話も何だ、座ってくれ」
ガルシアは犬の獣人で年齢は40代。目立った特徴のない顔をしているけど、こいつは結構強いな。『獣王会』のルクレチアに匹敵するS級ハンタークラスの実力だろう。
テーブルを囲む幹部たちも、ハンターならA級ってところか。
俺たちがテーブルに着くと、酒を注がれて豪華な料理が運ばれて来る。
「おまえたちは随分と派手にやっているようだが。俺は元気が良い若い奴が嫌いじゃねえ。今日はお互いに腹を割って話をするために呼んだんだ」
ガルシアの言葉は裏がある感じじゃない。力の差を見せつけて、俺たちに立場を解らせようって意図を感じるけど。
乾杯して、料理を食べながら話をする。まずはガルシアが『ローゼンファミリー』について説明する。
『ローゼンファミリー』は配下の組織を入れると、構成員3,000人を超える犯罪都市ガルブレナ最大の組織だ。
だから、それだけ余裕があるんだろう。ガルシアと幹部たちは特に威圧する感じじゃなくて、普通に俺たちを見ている。目つきは鋭いけど。
今度は俺たちの番で名前だけ名乗って、スプリタス商会を助けたことで『ザクスバウルの毒蛇』の構成員を殺すことになったけど。特に他意はないと説明しに行ったら、不当な要求をされたので反撃したと正直に説明する。
「なるほど。『ザクスバウルの毒蛇』の連中が、やりそうなことだ。グレイたちが奴らを返り討ちにするのも当然だな」
俺たちは100人いた『ザクスバウルの毒蛇』の構成員を皆殺しにしたけど。それくらいのことは犯罪都市ガルブレナでは、めずらしくないようで、ガルシアたちは平然としている。
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