第46話:別の組織
広間に転がる大量の死体を『
ここは広い敷地がある邸宅だから。周りの家に火が燃え移ることはないだろう。
建物の外に出ると。門番をしていた2人の獣人が、慌ててやって来る。
「て、てめえら……何しやがった?」
「見ての通りだよ。だけど先に手を出したのは、向こうの方だからな。おまえたちもやるなら、相手になるけど?」
俺たちは無傷で出て来て。『ザクスバウルの毒蛇』の奴らは誰も追い掛けて来ないのだから、こいつらも状況を察したんだろう。俺たちが門に向かおうとすると、後退って道を空ける。
「俺に喧嘩を売るなら、いつでも相手になるからな」
そう言って、『ザクスバウルの毒蛇』の本部を後にする。燃え上がる邸宅に、野次馬が集まって来るけど。俺たちは無視して、夜の街を歩く。
「グレイらしいやり方だな。これだけ派手にやれば、他の組織からも目をつけられるだろう」
ライラが面白がるように笑う。
「俺は狙われる前に、先手を打っただけだからな。他の組織が仕掛けて来るなら、叩き潰すだけの話だよ」
俺たちは宿屋に戻る。今日は尾行されることはなかった。
※ ※ ※ ※
そして次の日。俺たちは犯罪都市ガルブレナの市街地を散策することにした。『ザクスバウルの毒蛇』の件が、とりあえず片づいて。特にやることもないからな。
俺たちはしばらく、この街にいるつもりだし。昨日鍛錬していて、宿屋だと狭くて鍛錬する場所にも困ったから。ついでに適当な住むところを探すつもりだ。
街中をブラつきながら、目についた店に入って商品を見る。だけど、俺たち趣味も違うし。団体行動に向かない奴がいるから。直ぐに、それぞれ勝手に行動するようになった。
昨日の今日だし。『ザクスバウルの毒蛇』の生き残りに狙われる可能性はあるけど。簡単に殺されるような奴は、俺たちの中にいないからな。
俺はクリフ、ライラ、レベッカと4人で行動する。他の2人は解るけど、レベッカが一緒に来るのは意外だな。レベッカは戦闘のことしか頭にないから、勝手にどこかに行ってしまうと思ったけど。
「グレイと一緒にいる方が、面白そうなことが起こりそうだから」
ガゼルとシーダは一緒に買い物をして。ギースは適当に酒場に入って、酒を飲んでいる。この辺はいつもの行動パターンだ。
俺は総菜を売る店で、大量の料理を買い込んで『
ついでに店員に、家を扱っている店について訊く。上客だと思えば、変な店は教えないだろう。逆にカモだと思われる可能性もあるけど。そのときは借り撃ちにすれば良いだけの話だ。
店員が言うには、この辺りで家を扱っているのはワグナー商会というところらしく。俺たちは場所を教えて貰うと。ガゼル、シーダ、ギースと合流して、ワグナー商会に向かう。
一緒に住むかどうかは解らないけど。こいつらと鍛錬したり。拠点的に使うつもりだから、一緒に見ておいた方が良いだろう。
古風な屋敷という感じのワグナー商会の建物に入ると。中には高そうな服を着た店主と、用心棒らしい男。俺たちが入るなり、店主は品定めするようにジロジロ見る。
「10人は住める庭が広い物件を探しているんだけど」
俺がカウンターに金貨を積み上げると、店主の態度が一変する。
「その条件でしたら、最高の物件をご用意できます!」
店主の案内で、俺たちは幾つかの物件を見て回る。条件は敷地と建物の広さに、周囲の環境。後で場所を変えるのは面倒だから、最初に良く検討する。
結局、最初に見た物件が1番条件に合った。だけど結構な値段を言われて、検討するとだけ伝える。別に払えない金額じゃないけど、ボッタくられるのは嫌だからな。決めるのは相場を調べてからだ。
ワグナー商会を後にして、街中を歩いていると。
「『ザクスバウルの毒蛇』を壊滅させたのは、貴方たちですか。この辺りでは見ない顔ですね」
不意に、鮫の獣人が声を掛けて来る。ダークスーツを着た細身だけど背の高い男。部下らしい獣人たちを引き連れている。
「俺たちに何か用か?」
「申し遅れました。私は『ロズワルド会』という組織の幹部マービー・ウェインと申します。犯罪都市ガルブレナへ、ようこそ。我々『ロズワルド会』は強者を歓迎します。お近づきの印に、これから私どもの店に招待しましょう」
ライラが言ったように、他の組織に目をつけられたって訳だ。
俺たちはマービーたち『ロズワルド会』の連中について行く。別に他に用がある訳じゃないし。向こうから接触して来るなら、相手の出方に合わせて対応するまでだ。
その店は『ザクスバウルの毒蛇』傘下の店とは、雰囲気が全然違った。
流れる音楽に合わせて、下着姿の女たちがポールに跨ってダンスを踊る。客たちは酒を飲みながら、チップのコインを下着の中に入れている。
コインの重みで下着がズレても、女たちはお構いなしだ。
俺たちは女が3人いるのに。女を連れて来るような店じゃないと思ったけど。ライラとレベッカは全然気にしていないし。シーダはむしろ興味津々という感じで、女たちのダンスを見ている。やっぱり、シーダも変な奴だな。
マービーは俺たちを個室に案内する。俺たちの人数に合わせて、下着姿の女たちが給仕のために、俺たち1人1人の間に座ろうとすると。
「グレイの隣は私のモノだ。誰にも邪魔はさせん」
ライラに睨まれて、女が引き下がる。俺も知らない女に下着姿で囲まれたところで、別に嬉しくないからな。
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