第22話:野獣の剣 ※レベッカ視点※
※レベッカ視点※
「おい、グレイ。ちょっと待てよ! チッ……もう見えねえ。行っちまったぜ」
グレイは魔物を瞬殺しながら、一瞬でダンジョンを駆け抜けて行った。やっぱり、グレイは凄い……私はグレイと戦ってみたい!
「じゃあ、俺たちも攻略を始めるぜ。なあ、クリフ。おまえは本当に上層部で魔物狩りをするのか?」
「はい。初めから,そのつもりですけど?」
「おまえの実力なら、中層部くらいなら余裕だろう。グレイが行っちまったことだし。俺たちと一緒に行かねえか?」
「いやいや。僕なんて、正真正銘のF級ハンターですから。皆さんの足手纏いにしかなりませんよ」
「クリフ、そんなことはないだろう。この街に来る途中で、魔物と戦ったとき。俺たちもクリフの戦いぶりを見ているし。昨日だってB級ハンターを一発で倒しているだろう」
「いや、あれは不意打ちが、まぐれで決まっただけで……」
クリフが謙遜しているけど。
「クリフが強いことは私が保証する。私の方が強いけど」
「レベッカさんの方が強うのは当然ですけど……」
「ツベコベ言う暇があるなら、先に進む。ほら、みんな行くよ」
「あ、レベッカさん! ちょっと、放して!」
結局、私たちはクリフを連れて5人で行動することにした。
クリフは普通に強い。魔法は使えないみたいだけど。剣の使い方は誰かにキチンと習ったモノで。型に嵌らない戦い方は、戦い慣れしている感じ。
グレイに戦い方を教えて貰った? だけど、そんな感じでもない。何て言うか、上手く説明できないけど。グレイとは全然タイプが違う。
だけどクリフが強いのは確かで。中層部の魔物と戦っても、クリフは手こずることなく。次々と魔物を仕留めて行く。
「皆さんのおかげで、たくさん魔物を仕留められましたから。これで当面は、生活費に困りませんよ。本当にありがとうございます」
だけどクリフが謙虚なのは相変わらず。クリフが謙虚なのは、グレイと一緒にいるからってだけじゃないんだね。
「ですが魔物の素材や魔石を、全部持って貰って本当に良いんですか? 少しは僕も持ちますよ」
「いや。俺たちはマジックバッグを持っているから問題ない。普通に持ち運ぶと、魔物の素材は持ちきれないからな」
それに金銭感覚と言うか。クリフは装備だけ見ると、本当に只のF級ハンターみたいだ。大したお金を持っていないらしい。クリフの実力なら、ハンターをしていれば十分稼げる筈なのに。ハンターとして登録したばかりっていうのは本当みたい。
「まだ全然余力があるし。もっと先の階層に進もうぜ。今日はクリフもいることだし。5人いれば下層部も余裕だぜ!」
「いやいや。僕なんて、そこまで戦力になりませんよ!」
ギースが調子に乗っている。だけど確かにクリフがいれば、戦力に余裕がある。
これまで私たちは4人でダンジョンの下層部に何度か挑んでいるけど。下層部を攻略するには、もう一枚戦力が欲しいと思っていたところ。
もしクリフが『野獣の剣』に加わったら、直ぐは難しいかも知れないけど。下層部を完全に攻略できるかも知れない――クリフは人間だから。そのときは『野獣の剣』って名前を変える必要があるけど。
そんなことを考えていると。突然、ダンジョンに激震が走る。
「じ、地震ですか? ですがダンジョンで地震なんて……」
「え……ダンジョンで地震って起きないんですか? だったら、もしかして……いや、まさか……」
クリフが何かブツブツ言っている。そんなに地震が怖いの?
地震が収まった後。私たちはダンジョンの攻略を再開する。
『螺旋迷宮』は螺旋階段のように渦を描いて、緩やかな下りが延々と続く。壁の部分に時折扉があって、その中に玄室があるという構造だ。
私たちはA級ハンターだから、中層部に出現する魔物は弱過ぎるから。ここまでも玄室の扉は全部無視して、下層部を目指していたんだけど。
「おい……魔物が来るぞ。それも1体や2体じゃねえ!」
螺旋階段を駆け上がって来るように、大量の魔物の群れが近づいて来る。他のハンターたちが、魔物の群れに追われて逃げている。
そして群れの中には、中層部の魔物だけじゃなくて。明らかに下層部の魔物が混じっている。
「モンスタートレインか? あいつら、下手を打ちやがって!」
ギースが舌打ちしながら大剣を構える。
「いや、そんな感じじゃないな。
ガゼルが冷静に判断をする。こういうとき、ガゼルは本当に頼りになる。私より弱いけど。
「魔物が来るなら、迎え撃つだけ。ガゼル、ギース。私と一緒に来て!」
「レベッカさん。僕も戦います!」
「うん。クリフもお願い!」
私たちは逃げて来るハンターたちの間を擦り抜けて、魔物と接敵した。
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