第28話:説明
「おまえは、俺と話がしたいんだろう? 大人しくするなら、話くらいは聞いてやるって」
それでもライラはしばらく暴れていたけど。無駄なことが解ったのか、大人しくなる。
腕の中から解放すると。ライラが俺を睨む。
「いくら混じりモノだとは言え……グレイ、貴様の力は何なのだ?」
「だから俺は混じりモノじゃないって言っているだろう」
「混じりモノでないのなら……まさか、貴様は!」
ライラの警戒レベルが一気に跳ね上がる。ようやく可能性に気づいたみたいだな。
こんなところに
「貴様は……人間の姿に化けた人外の存在なのか? ならば、本当の姿を現わせ!」
ライラは全力で魔力を込めて、サーベルを構える。だけど、こんなことをしても。人外の存在が相手なら無駄だと、ライラも解っているだろう。
それでも敵意を剥き出しにするのは、ゴーダリア王国の軍人としての意地か。それとも王国の支配者であるフェンリルに忠誠を誓っているからか。
「俺は別に人間に化けている訳じゃなくて。これが本来の姿なんだよ」
「それが本来の姿だと……つまり貴様は、カイスエント帝国の竜人ということか?」
竜人以外に、普段人間の姿をしている人外の存在はいない。まあ、ここまで来たら。言い逃れしても意味がないからな。
「確かに俺は竜人だけど。竜の姿になれない出来損ないで、家を追い出されたからな。もうカイスエント帝国とは関係ないよ」
「竜の姿になれない竜人だと……そのような話を聞いたことがあるが。ならば、貴様がダンジョンを崩壊させた目的は何だ?」
「ダンジョンを破壊したことは謝るよ。だけど別に他意はないんだ。ラスボスの部屋で、もっと下の階層があると思って。隠し扉を探していたら、壊してしまっただけの話だ」
「何だと……そんなデタラメな話を、誰が信じると思うか?」
ライラが一気に不機嫌になる。全部、俺の自業自得だけど。隠し扉を探すためにダンジョンを崩壊させるとか。信じなくても仕方ないからな。
自分でも馬鹿なことをした思うけど。ジャスティアとの鍛練で、自分がどれだけ強くなったのか解らなくて。力の加減が上手く出来なかったんだよ。
「やはり貴様は他国の諜報員であろう! 竜の姿になれない竜人などと、私を謀ろうとして。カイスエント帝国に罪を擦りつけるつもりか? カイスエント帝国に混じりモノがいるなど、あり得ぬからな!」
ゴーダリア王国はカイスエント帝国に隣接しているから。ライラも竜人について、それなりに詳しいみたいだな。
竜人と人間の間に子供ができることは絶対にない。竜人は胎生じゃなくて、卵から生まれるからだ。
だからと言って、問題が解決した訳じゃない。ライラは俺を完全に疑っているから。もう何を言っても無駄だろう。
「だったら俺を捕まえて拷問するとか。おまえの気が済むまで、好きにすれば良いだろう。おまえが暴れると、周りに迷惑だからな。俺はもう抵抗しないよ」
自分が女に甘いという自覚はある。まあ、ライラが何をしても、どうせ俺には効かないからな。
「何だと……グレイ、貴様は私を愚弄しているのか? だが……良いだろう」
ライラは何か考えがあるのか。武器として使っていた金属製の鞭に魔力を通して、俺を縛り上げる。
それでも抵抗しない俺を見て、ライラは悪人のように笑う。
「私としては不本意だが……貴様の処分は、シャルロワ閣下にお任せすることにしよう。貴様がいくら強かろうと、所詮は混じりモノだ。本当の人外の存在であるシャルロワ閣下の前で、同じことが言えるかどうか試してやる」
シャルロワ閣下ってのが、迷宮都市トレドを支配しているフェンリルのことだな。
憲兵の指揮官であるライラに目をつけられて。ライラの手に負えないとなると、次はフェンリルが出て来るって流れだ。
国を支配する人外の存在に関わると、面倒なことになるのは解っているけど。
今回は自業自得だし。向こうから絡んで来たから。大人しくしていれば、見逃されるって訳でもないだろう。
だったら、
俺は鞭で縛られたまま、ライラに迷宮都市ドータの街中を連れて行かれる。これって何の罰ゲームだよって感じだけど。
俺は大人しくついて行く。抵抗したら、またライラが暴れるからな。
迷宮都市ドータの太守であるフェンリルがいるのは、街の中心部にある城だ。
金属で補強された分厚い壁に囲まれた城塞。臆病だから防備を固めているんじゃなくて。自分の力を見せつけるために、力の象徴である堅牢な城塞を造ったって感じが何となく解るよ。
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