第16話:翌朝


 

「なあ、ミランダ。そろそろ起きろよ。朝飯を食いに行くからな」


 全裸で眠っているミランダを起こす。まあ、そういう・・・・ことだ。


「うう……グレイ、おはよう……昨日はホント、凄かったよ。ねえ、私はどうだった?」


 ミランダが恥ずかしそうに頬を染める。ミランダも、こんな顔をするんだな。


「ミランダが可愛くて最高だったよ」

 

 俺はミランダを抱き寄せて、唇を重ねる。


 ミランダを誘ったから、それなりの宿屋に泊まった。

 俺たちはシャワーを浴びて。服を着て、宿屋を出ると。オープンカフェで遅めの朝飯を食べてから。昼過ぎに、ハンターズギルドに向かう。


 昨日は虎の獣人ギースと騒ぎになったし。その後も、早々に引き上げたから。あまり情報収集が進まなかった。

 だから今日も引き続き、ゴーダリア王国に関する情報を集めるつもりだ。


 俺とミランダがハンターギルドに入ると、周りのハンターたちが注目する。

 昨日のことがあったからか。それとも俺とミランダが腕を組んでいるからか。まあ、理由は両方だろう。


「グレイ。君が何をしようと、僕が文句をいうことじゃないけど。さすがに黙っていなくなるのは、ないんじゃないかな?」


 クリフは先に来ていて。ジト目で俺を見ている。


「クリフ、悪かったな」


「グレイは全然悪いと思っていないよね……まあ、それは良いとして。グレイのそういうところ・・・・・・・だけは、僕には理解できないよ」


 クリフが言いたいことは解る。俺はシェリルと別れたばかりなのに。別の女と関係を持ったことに文句が言いたいんだろう。


「クリフに理解してくれと言うつもりはないよ。ミランダが良い女だから、誘ったんだ」


「うふふ……グレイ、ありがとう。そう言ってくれると、嬉しいよ」


 俺はミランダを抱き寄せる。

 ジャスティアの城塞にいるとき。俺はシェリルと、こんな感じで。シェリルはジャスティアの目を気にしていたけど。俺は他人の目とか、全然気にしないからな。


 幼馴染みのイリアには、素っ気なく振舞っていたけど。イリアがそういう関係を望んでいたからで。

 俺にとって大切なのは、一緒にいる相手がどう思うかだ。他の奴のことなんて、正直どうでも良い。


 手当たり次第に、口説いていると思うだろうけど。俺にも自分で決めたルールがある。

 同時に複数の女を口説かないこと。本気で良い女だと思った相手以外には手を出さないこと。一緒にいるときは、そいつのことだけを考えることだ。


「なあ、ミランダ。俺はゴーダリア王国に来たばかりで、情報を集めているところだけど。おまえは依頼を請けなくて良いのか?」


「私もお金に困っている訳じゃないし。そんなにガツガツ仕事をするつもりはないからね。情報収集するなら、私も協力するよ」


 ちなみにミランダはB級ハンターで。ソロで依頼を請けたり、臨時でパーティーを組んだりと。結構自由に活動している実力派らしい。


 ミランダが知り合いのハンターたちに声を掛けて。ハンターたちから、ゴーダリア王国について。色々と話を話を訊くことができた。


 ちなみに俺の知り合いで、人間のC級ハンターのカイラムは、今日は依頼を請けて出掛けている。


「ミランダのおかげで、助かったよ。ありがとう」


「これくらいは、お安いご用だけど。ねえ、グレイ。お礼がしたいなら、身体で払って貰いたいね」


「別に構わないけど。それじゃ、礼にないだろう。俺の方が礼を貰うようなモノだからな」


「グレイ……じゃあ、決まりだね」


 俺とミランダは周りなんか気にしないで、唇を重ねる。


「グレイのそういうところ・・・・・・・には、慣れたつもりだったけど。まあ……ほどほどにね」


 クリフが顔を赤くして、目を反らす。クリフは俺より2歳年上だけど。そういう・・・・経験はないみたいだからな。


「グレイ。今日も来ていたんだな」


 夕方になると。ハンターズギルドに、ガゼルたちA級ハンター4人組がやって来る。

 ガゼルたちが来ても、俺とミランダは腕を組んだままだ。


「おい、ギース……」


「ああ……解っているぜ」


 鹿の獣人ガゼルに促されて。虎の獣人ギースが、バツが悪そうに前に出る。


「ねえ、グレイ。私はちょっと知り合いと話をして来るよ」


 ミランダは俺の頬にキスして、離れて行く。別に気を遣うことはないと思うけど。ホント、ミランダは良い女だな。


「グレイ……昨日は、その、何だ……F級ハンターだと馬鹿にして、悪かったな。この通りだ……本当に申し訳ねえ」


 ギースが深々と頭を下げる。喧嘩っ早いだけで、こいつも意外と悪い奴じゃないのかも知れないけど。


「おまえが謝る相手は、俺だけじゃないだろう?」


「ああ、そうだったな……おまえのことも、殴ろうとして悪かったな。俺を許してくれ 」


 ギースはクリフに頭を下げる。


「僕は殴られた訳じゃないし。謝ってくれるなら、文句はないですけど。無闇に喧嘩を売るのはどうかと思いますよ」


「ああ。気をつけるぜ。それと……おまえの名前を教えてくれ」


「そう言えば、自己紹介がまだでしたね。僕はクリフ。グレイの友だちで。昨日F級ハンターになったばかりです」


「俺はギースだ。よろしく頼むぜ。なあ、クリフもグレイみたいにつええのか?」


「嫌ですね。僕をグレイと一緒にしないでください。僕は正真正銘、素人同然のF級ハンターです」


「いや、何を言っていやがる。おまえの動きは、どう見ても素人じゃねえだろう!」


 ギースが殴り掛かったとき。クリフは咄嗟に飛び退いて躱した。

 ギースはクリフのことを舐めていたけど。A級ハンターのギースの攻撃は、素人が簡単に躱せるレベルじゃない。クリフは気づいていないみたいだけど。


 俺がギースを殴り飛ばして、壊したハンターズギルドの天井も。ギースが修理代を払うことになって。これで俺たちは完全に手打ちをしたことになる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る