第60.5話 きょーてー? 何それおいしいの?
■王都 ローレライ邸 食堂
朝を迎えたアリシアは欠伸をかみ殺す。
昨夜はなかなか眠れずにいて、寝たのもいつの間にか食堂で寝てしまっていたので時間はわからなかった。
「まったくもう、ジュリアンはかえってきたの?」
「帰ってきてないにゃねぇ~」
アリシアの問いかけに食堂で朝食を食べているリサが答える。
パンとスープをモグモグと食べる姿は上品とは程遠い。
「そういえば、レイナさんとエリカさんは?」
「二人はもう出かけていったにゃ。試合時間も近いから会場に行くようニャね。今日のセコンドはアリシアにゃ。よろしくニャよ」
「ええ、それはいいけれど……リサ、私……いえ、私達に何か隠してない?」
「いや~、アチシは別に~何も~」
「こっちの顔を見てから話なさいよ」
アリシアがリサの顔をジーっと見つめている。
数日間一緒にいたので、アリシアはリサが何かを隠していることがこの態度で分かっていた。
「じゃあ、話を変えましょう。いくらなら話してくれる?」
「金で仲間は売らないニャ!」
「仲間……昨日からいないということは、セリーヌ! 淑女協定はデビュタントで終わりといったから……ああ!?」
アリシアはぶつぶつとつぶやいていたかと思うと、その天才的な頭脳の中で今の状況が一本の糸で繋がったことがわかる。
「セリーヌが抜け駆けしたのね! しまったわ、御前試合が終わるまでおとなしくしていると思ったけど、契約魔法の効果は既にないようなものだから、野放しにするべきじゃなかったわ」
あああと、狼狽したアリシアがリサの方を向く。
問題はどうしてリサがセリーヌの抜け駆けに協力したのかだ。
「どうしてなの?」
「アチシはセリーヌと一番仲がいいからにゃね~。それと今夜は譲ってくれるって約束が……はっ!」
「リサ!」
墓穴を掘って理由を吐き出してしまったリサは急いで屋敷から出ていく。
素早い猫獣人の脚力に追いつける気がしないアリシアはもぅ!と頬を膨らませながら怒りを露わにした。
野生的なセリーヌとリサについてもっと警戒するべきだと思いながらも積極的に動けていない自分にも問題があるとは思う。
「けど、私は公爵家だから……今のジュリアンとそういう風になる訳にはいかないんだよね……早く爵位を上げれるように援護しなくちゃね」
しがらみを捨てて冒険者になれたらと思う心と自分の失態で家に迷惑をかけた自責の念に挟まれたアリシアはモヤモヤした気持ちを抱えながらもセコンドとしてジュリアンの控室に行って詰め寄らなければならないと覚悟を決めるのだった。
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