第60話 俺の異世界ハーレムは間違っている!
■酒場兼宿屋【夜の宿木亭】
俺の叫び声を聞いた二人がもぞもぞとベッドから起き上がる。
寝起きの仕草が同じで、姉妹なんだなぁと感じた。
二人はもちろん裸である。
隠しもしない大きな胸が4つ元気に跳ねていた。
「おはようなのだ」
「おはようだ、旦那殿」
ほんの僅か、ほそーい糸くらいには期待していた希望はぷつりと切れた。
「ああ、おはよう? 俺は昨夜の記憶があんまりないんだが……何があったんだ?」
俺の言葉にセリーヌとゼノヴィアは顔を見あって、ニヤニヤと笑い始める。
「すごかったのだ」
「ああ、酒を飲むと旦那殿は変わるのだな。雄々しかった、惚れたぞ」
「お、おぅ……」
顔に手を当てて天を仰いだ。
確かに試合数が少ないから、ちょっとくらいいいよなと思って酒を結構飲んだ記憶がある。
飲まされたと言っても過言ではないかもしれないが、この店を選んだのはゼノヴィアだったし、ハメられた気がしてならない。
二重の意味で……。
「とりあえず、昼から試合があるし着替えて飯を食おうぜ」
「朝食を食べたらもう1回なのだ?」
「やらねぇよ! とっとと服着て下の酒場に来い。これからの話はそれからだ」
俺は脱ぎ散らかされた服を着直して部屋を後にした。
朝からどっと疲れたんだが、もうどうしたらいいんだよ。
■酒場兼宿屋【夜の宿木亭】 酒場
俺が先に目玉焼きにソーセージ、それにパンとスープという軽めの朝食を食べていると、セリーヌとゼノヴィアが下りて来た。
テーブルに二人が座ると、周囲の視線が俺に集中する。
「なんなのだ?」
「見られているな、旦那殿。給仕よ、我らも旦那殿と同じものを」
ウェイトレスにゼノヴィアが注文をしていると、旦那殿という言葉にさらに周囲の目が俺に刺さった。
(ああ、早く飯食って移動してえぇ……試合開始までどこにいればいいんだかわからんが)
どちらもパワーがあるから忘れがちになるがセリーヌも、ゼノヴィアも顔は悪くない。
正直言ってワイルド系美人の部類に入るだろう。
体も筋肉質すぎるわけではなく、無駄がなく整った肢体に巨乳と巨尻があるのだから魅力的だ。
15歳になった俺がこんな美女二人を連れていたら注目されるのは仕方ない。
(闘技場の訓練所で体を動かしているのがいいかなぁ……)
「それで今日の試合はどうなっていたっけか……」
「トーナメント表によれば、ジュリアンと戦うのは私なのだ♪」
なぜか上機嫌にパンをもぐもぐ食べるセリーヌに俺はため息をつく。
「このトーナメント表悪意あるんじゃね? なんで俺がゼノヴィアとセリーヌと戦わなきゃならねぇんだよ」
「そのようなことはないぞ旦那殿、強いものを程よく配分しているトーナメント表だ。当たったのは旦那殿が強かったという訳だ」
ソーセージを突っついているとゼノヴィアは顔をちょっと赤くしながら話してきた。
え、何を考えたのこの人……チョロインというか、こんなキャラだったっけ?
って、俺もこんな想像をするレベルなので似たようなものか……。
「準決勝まで行けたし、ここはセリーヌを不戦勝にさせて御前試合は終わりにしようかなぁ……」
どっと疲れた俺は当初の目的をある程度達成したのでやる気がなくなってきている。
「試合を放棄するというのであれば、今日一日は我が旦那殿を独占できるということだな。婚姻の儀を済ませ、一族へ発表するための手はずを整えていこうぞ」
「あー、試合やる! 試合をやりたくなったな~」
ゼノヴィアの瞳が猛禽類のように鋭くなったのを見て、俺は闘技場で戦って時間を稼ぐことに決める。
それに俺のパーティメンバーにゼノヴィアの件を話して相談する必要もありそうだ。
もっと、カッコいい展開をイメージしていたんだが、どうしてこうなったんだろうなぁ……。
「飯を食い終わったら、まずはローレライ邸に行って朝帰りの言い訳をするしかねぇか……」
「ふふふ、ジュリアンの初めてを貰ったと自慢してやるのだ」
「やめてー! 生々しい言い方はやめてー!」
「いやいや、姉上。ほぼ同時だったので我にもその宣言の権利はある。優秀な雄が複数の女を侍らすのは当然。だが、女の序列は大切だ。上位にいくのは譲らんぞ」
「ゼノヴィアもやめてー!」
顔を赤くして二人を止めて、お代を払い朝食も途中で酒場を後にした。
朝からオープンに猥談のネタにされるなんて、もう嫌っ!
10年前は異世界ハーレムにあこがれていたが、こんなハーレムは間違っている!
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