第44話 王都での出会い
■クイーンズボート 貴族街
朝の少し冷える中、ローレライ邸を出た俺はぐるりと街並みを確認した。
王宮の周りには貴族街があり、その先には魔法研究エリア、商業エリアと続き港湾エリアとなっている。
それらが王宮側からだんだんと低くなっている街並みにヒエラルキーを嫌でも感じさせられた。
「港湾エリアといっても、たぶん貧民街を兼ねてるんだろうなぁ……」
人通りの少ない道を歩いていく。
朝の冷たい空気が心地よく、たまにはこうして一人で歩くのも悪くないなと思った。
馬車が通ることもなく、静かな街を進んでいくとキョロキョロと周囲を見渡している少女を見かける。
頭から赤いローブをかぶっているので、童話の赤ずきんのようだ。
すると、静寂を破るように足音が聞こえてきて、少女がたたたと速足で研究エリアの方に向かっていく。
「追われてるのか? 朝から穏やかじゃないなぁ……」
少女を追いかけるようにかけて来たのは黒いローブを着ている集団。
明らかに怪しい奴らだ。
「見かけたんだからしょうがないか……。朝の運動をするかね」
俺は少女を追いかけている集団を背後から追いかけていく。
足音に気づいた、後ろの方の人物が仲間を先に向かわせて、俺に遠慮なくナイフを向けてきた。
だが、ナイフという金属は俺相手ではいただけない。
グィンと手に持っていたナイフが反対側に動いたところを見て、ローブがちらりと見える目が見開いた。
「そらよっ!」
そのままボディブローを当てて倒し、俺はそのまま少女を追いかけていく。
少女が狭い路地に入っていくのを見て、追いかけていた人物は二手に分かれた。
俺は路地に入ると、少女の前に降り立つ。
「どうしたんだ? こんな朝早くから追いかけられているってどういうことだ?」
「ひゃぁ!? な、なんなのよ!? 貴方こそ何者!」
俺が声をかけると、驚いた少女が被っていた赤いローブが取れて、栗色の髪をしたツインテールが飛び出してくる。
可愛い美少女であることは確かだが、気の強そうなところが打ち消していた。
「俺はジュリアン・シュテルン。Aランク冒険者パーティ【エターナルホープ】のリーダーをやってる」
「エターナルホープ! 最近王都でも噂を聞く冒険者パーティね! 貴方せっかくだから、朝食と共に話を聞かせてよ」
「朝食かぁ……まぁ、俺も食べてないからいいけどさ。追いかけている奴らを撒いてからだよな……ごめんよ」
少女をお姫様抱っこした俺は壁を駆けあがる。
磁力魔法の応用で、こういう技もできるようになった。
「きゃぁ!? これどういうこと!」
「これも魔法さ、掴んでろよ!」
壁を駆けあがり、屋根をまたぐように飛ぶ。
太陽が港の方から登っていくのが視界に入ってきた。
王都の朝はとんでもない状況から始まるが、これも俺らしい……かな?
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