第33.5話 希望の懸け橋

■焔の神殿 ダンジョン部 鍛冶神の試練の間


 ウチとリサとセリーヌが焔の祭壇に向かう通路を走っている間にダンジョン自身が大きく揺れた。


「おっとととっ、何が起きたニャ!?」

 

 バランスを崩しそうになるリサが、揺れる尻尾も使って上手にバランスをとっている。

 何かの異変が起きたことはウチらにはわかった。


「ジュリアンの身に何かあったんやない?」


 ウチがいうのよりも早く、リサとセリーヌが先行して走る。

 背丈が小さく、体力はあっても筋力にはあまり自信のないウチにとっては追いかけるのだけでも大変なことや。

 ジュリアンとの付き合いはエリカと一緒やけども放っておけないというか、ウチのほうが年上のはずやのにふりまわっされぱなしやった。

 それが嫌とも思えへん自分になってることをおとーちゃんに相談したら、ジュリアンに責任を取ってもらういいだして大変やったわ。

 せやけども、大切な仲間なんのか変わらんから焔の神殿にいくゆーたときは準備をしっかりしたわ。

 ウチのバックにはまだまだ隠し玉は用意しとる。

 スタンピードのドラゴン戦は出番あまりなかったから、ここらで活躍せんとな!

 なんで活躍せなあかんのかは、前の方を走る二人の揺れる果実が雄弁に語っとるわ。


「ん? どうしたのだ?」

「なにかにゃ?」


 ウチの視線に気づいたのかリサとセリーヌが走りながら振り返る。

 ぶるんと両者ともに果実が揺れて目に毒や。


「なんもあらへん! はよせな」


 そういっていると、リサが立ち止まりウチの後ろを睨んだ。


「何かが来てるニャ」

「何かってなんや?」


 リサの〈危険感知〉は便利なようで便利でない。

 身に危険が迫る脅威を何となく感じて、敵のあたりを付けるものなんやと。

 でも、ウチらエターナルホープの目や耳として重宝している仲間やな。

 そうこうしていると、飛行する小さな少女がウチらに迫ってきて、ウチらの手前の空中で停止したんや。


「あなた達はもしかしてジュリアンの仲間?」

「ジュリ坊を知っているのにゃ? ジュリ坊はあちし達『エターナルホープ』のリーダーにゃよ?」


 ジュリアンの名前が出たことで、警戒を少し緩めたリサが空中に飛んでいる女の子に訪ねたんや。

 女の子は灼熱の空間の光を浴びて輝くブロンドヘアを揺らしながら、答える。


「私はアリシア・ローレライ……ジュリアンの昔の知り合いよ」


 最後は俯きながら自分の立場を言葉にしたが、アリシアの名前は前に聞いたことあった。


「あんたがジュリアンの元婚約者!」

「「な、なんだってー!?」」


 ウチが指さして叫ぶと、リサとセリーヌが驚き、アリシアに詰め寄っていく。

 リサは女子会のときに聞いとったやろ、忘れとるかもしれんけど。


「詳しい話は後や、元婚約者がこないとこまで来るとなると、ややこしい状況なんやな?」

「はい、道中話をしますので、皆さん一緒に飛びますよ!」

「また飛ぶんかいなぁ~!」


 今度は空中にふわっと浮いたかと思うと、馬で疾走するよりも早い速度で飛んだ。

 やれやれ、えらいことになってきたなぁ。

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