【EXシナリオ】第2話 リリアンのOG訪問
「この景色は昔と一緒ね……」
リリアンは緑豊かな森林と静かな湖に囲まれた壮大な丘の上に城のような建物が見える。
エーテリオン魔法学院の存在感は魔法都市ルミナエアの街並みより目立っていた。
「師匠に呼び出されたのは……ジュリアンの件よね」
リリアンは定期報告として手紙を師匠であるハーフエルフのエリオットに書いていたが、ジュリアンの使う魔法に興味を持ち、直接話を聞きたいと呼び出しを食らったのである。
「まぁ、懐かしの母校訪問にもなるからいいけどね」
リリアンは一人納得すると、エーテリオン魔法学院に向けて歩きだした。
■エーテリオン魔法学院・庭園
在学中からエリオットは庭園で本を読んでいることが多かったので、リリアンも魔法学院に入ると庭園を目指す。
魔法学院の庭園はリラックス効果のある付与魔術をかけられていて、気分を落ち着かせる効果が高い。
この付与魔術をかけているのがエリオットなのだ。
「いた……師匠、お久しぶりです」
庭園の一角で、ハーブティを片手に本を読んでいたハーフエルフの青年に向けてリリアンは頭を下げる。
「やあ、リリアン。本当に久しぶりだね。ずいぶん大人っぽくなったね?」
「師匠が変わらなすぎですよ。ハーフエルフだからでしょうけど……」
リリアンは目の前にいる銀髪の青年を前にヤレヤレと肩をすくめた。
10代後半から20代前半くらいに見える細身の男だが、その年齢は200歳を超えている。
「種族的なものは僕ではどうにもならないからねぇ……さて、ここで話すことでもないから、僕の執務室にいこうか」
読んでいた魔法理論の本を閉じて、エリオットは歩きだした。
つかみどころのない飄々とした態度は以前からかわらない。
「今でも基本講義は四属性魔法を中心にしているんですか?」
「そうだね、それ以外では光と闇の属性からかな? 基本的にはこれらの元素魔法の素質を持っていることが大半だからね」
執務室に向かって、歩きながらリリアンはエリオットに尋ねた。
庭園から本館へ向かっていく中で、何人かの生徒とすれ違う。
リリアンには制服姿が眩しく映っていた。
10年ほど前までは自分も着ていたのが懐かしい。
「師匠……元素魔法を全く持っていないなんてことはありますか?」
「考えられないけれど、キミが教えてくれた少年は元素魔法の素質がまったくなかったんだよね?」
エリオットの執務室に入ったリリアンは風の魔法で外への音漏れを防いだ。
「ジュリアンについてですが、私が見聞きした限りでは元素魔法は使っていません。今のダンジョンに潜るパーティからの報告もないですね。その子たちがいうにはジュリアンの魔法はジリョク魔法というそうです」
「ジリョク魔法……ですか」
執務室のテーブルをはさんだ椅子に二人は向かい合うように座って話をつづける。
「特殊な魔法ということはわかりましたが、元素魔法と違って魔力を現象にして使わないというのが珍しいケースですね。僕としても一緒に行動して観察したいものですよ」
リリアンからのレポートに目を通しながらエリオットは微笑む。
「師匠には一度、イーヴェリヒトに来てみてもらいたいです。魔法理論の論文の参考にもなると思いますよ」
リリアンからの要請にエリオットは目を光らせた。
「なるほど、確かにいいですね。その件については考えてみましょう。ただ、ジュリアン君を見に行くだけで学校の授業をあけるわけにはいかないので、理由を何か考えなければいけませんが……」
ふむとエリオットは顎に手を当てて思案をはじめる。
「師匠?」
「いえいえ、なんでもありませんよ……ただ、近々話がいくかもしれません」
「わかりました。せっかくなので、訓練所でちょっと後輩と遊んでっていいですか?」
「ほどほどにお願いしますよ」
話が終わり、リリアンはよっしと立ち上がると杖をクルリと回してふふふと笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます