第10.5話 第1回 ジュリアンをダシに語る女子会

■男子禁制酒場『薔薇の隠れ家』


「「「かんぱーい!」」」


 木のコップがぶつかる音が室内に広がる。

 各々が頼んでいた飲み物を飲み干すのを確認すると主催のレイナが仕切りだした。

 ここ、薔薇の隠れ家の個室は消音の魔法がかかっているので、騒がしくしても他に迷惑がかからない。


「今日はウチの呼びかけに答えてもらってありがとさんや、ジュリアンにかかわっている女子を集めての第一回女子会をはじめよか」


 レイナ曰く、ジュリアンについていろいろ語りたいと思って、メンバーに声をかけたとのことである。

 そして、会場の薔薇の隠れ家はレイナの伝手で個室を借りれた。

 レイナがどうして、こんな店を知っているのか気にはなったが秘密とごまかされる。

 一番付き合いの長いメイドのミツキをはじめ、”鋼の守護者”から僧侶のエレナの2名が来てくれたのは大きかった。


「それにしても女子会ができるほど、ジュリアンくんは女性との交流が多いんですね」

 

 ワインを口につけてエレナはニコニコと微笑む。


「ジュリアン様にお仲間が増えていることは実に喜ばしい限りです。私は冒険者ではないので、皆様から冒険でのジュリアン様のお話を聞けるのが楽しみです」

 

 この中では見た目では最年長のミツキがミルクを飲んだ。

 飲めなくはないようだが、メイドとして常に気を付けているらしい。


「わたくしとしてはジュリアンが昔から、あんなに達観していたのか気になりますわ。知識も同年代の人間とは違うものを感じることが多いですわ」


 実年齢最年長のエリカがミツキに素朴な疑問をぶつけた。

 その疑問は他のみんなも気になるのか、ミツキに視線が集中する。


「そうですね、私がジュリアン様の元に来たのがジュリアン様が3歳のころでした。話はじめた5歳のころから今と変わらない感じはしていますね」


 見た目はだいぶ成長していますけど……と付け加えてミツキが話しを終えた。


「ジュリアンくんはイーヴェリヒトに来てから大人っぽくなった感じが強いですね」

 

 ワインを追加で飲みながら、チーズを食べるエレナがジュリアンの初依頼のことを話だした。

 自分が守ろうとしたが、結果的に戦闘で守ってもらったというのである。

 

「ダンジョンではジュリ坊子供っぽいところあったにゃ」

 

 モグモグと料理を手に付けていたリサが会話に混ざってきた。

 リサとジュリアンの出会いはいいものではなく、盗みを働いたところを捕らえられてからの縁である。

 スラムで一緒に暮らしていた兄弟姉妹も屋敷に雇ってくれた恩から仲間になっているが、丁寧な対応をするタイプではなかった。


「たしかに、あのアイアンゴーレムとの戦闘で喜んでいたのは微笑ましかったですわ」


 どういう状況なのか気になったエレナやミツキにエリカは質問を受けつつ答える。

 ジュリアンを酒の肴に皆大盛り上がりであった。

 当人がいたら、恥ずかしがってしまうだろうが、その姿もかわいく思える。


「ジュリアン本人がいないからこそ、話せるいろいろがあっておもろいなぁ、この会定期的に開いたら参加するん?」

「次回はリリアンさんもお誘いしたいですね。今日は用事があるといって不参加でしたけど……今、魔法都市へお師匠様を訪ねにいっているとか?」

 

 レイナの問いかけに断ることはなかったが、一人エレナだけが今日不参加だったメンバーについて考えを巡らせる。


「魔法都市ですか、魔法学園にもジュリアン様の元婚約者がいらっしゃいましたが、今どうしているのでしょうか……」


「「「ジュリアン、婚約者いたの!?」」」


 ミツキのさりげない呟きに、ガタッと椅子から立ち上がった女子達がミツキに詰め寄っていく。


「はい、今は双子の弟君であるフレデリック様の婚約者になられている

アリシア・ローレライ様になりますね」

「ぶふっ! ……ローレライ家って、公爵家やないか! 逆玉やなぁ」

 

 以外な家の名前にレイナが飲み物をふきだした。

 それをきっかけに色々な質問がミツキに飛び交い、予定していた女子会の終了時間をオーバーする。

 女子会は店が閉店になる深夜まで盛り上がりながら、続いたのだった。



 


 


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る