第6話 最初の仲間は錬金術師
■イーヴェリヒト・冒険者ギルド
「これがDランクのカードよ。ジュリアンくん、おめでとう」
「エミリアさん、ありがとうございます」
初依頼を終えた俺はFランクからDランクへ二段階アップしていた。
冒険者としてパーティリーダーになる権利もついてくる。
カードの発行に1週間かかるということで、すでにあれから1週間たっていた。
「パーティを作って活動できるようになりましたから、メンバー募集の掲示板を見て
みてくださいね」
「はい!」
俺はパーティメンバー募集の掲示板を眺めにいく。
初依頼の翌日、鋼の守護者のパーティに入りたいと相談したが、アーヴィンさんに断られた。
理由は俺の能力的に大きな仕事をしていくことになるので、年齢とランクが近いメンバーを探したほうがいいといわれる。
「合同依頼などがあれば受けてくれるし、何かあれば頼ってくれるということだからそれでいいかな」
話そうかどうか迷ったが、俺は磁力魔法について話をした。
磁力という概念を伝えるのが難しいので、今は金属物を動かすことができるとだけ説明している。
異世界から転生していることはまだ話すことはできない。
話す機会が本当にあるかは今はまだわからない……。
「せっかくの異世界だから、エルフとか人間以外の種族とパーティ組んでみたいよな」
そういってメンバーを見ていると錬金術師のレイナというドワーフの少女が目についた。
ドワーフといえば鍛冶だが、錬金術も得意なのは当然だ。
実にイーヴェリヒトらしい人である。
連絡先はイーヴェリヒトの工房とのことなので、挨拶ついでに色々聞きたかった。
「よし、エミリアさん、ちょっと行ってきますね。あとでソロか二人で受けに来ます」
「はい、行ってらっしゃいませ」
俺はエミリアさんに手を振ってギルドを後にした。
■イーヴェリヒト・工房街
ギルドに掲示されていた紙に書いてあった工房の名前を工房街から探す。
油のにおいや、金属を叩く音などが聞こえ、前世でいうところの下町の工場街のような感じだった。
「ストーンブレイカー錬金工房、ストーンブレイカー錬金工房……あった」
探していた工房が見つかり、中を覗く。
薬品の香りがただよう店内に、カラフルなポーションが並んでいた。
「ポーションか、MP回復系は俺はいらないかな」
「いらっしゃい、ウチの店に何の用?」
やってきたのは小学生くらいの少女……下手したら幼女だ。
ただ、耳がちょっととがっていて、肌は赤褐色である。
茶色いショートカットの髪型で、ゴーグルを頭につけていた。
その姿は似顔絵のままで、彼女が錬金術師のレイナだということがわかる。
「合法ロリ? いや、まだそうと決まったわけじゃ……」
「何? なんかごっつ失礼なこと言われた気がするんやけど……」
ジトーとした目でレイナが俺を見上げてくる。
背丈は小さいが顔の作りは俺よりも年上っぽい。
「ええっと、パーティメンバーを募集しているジュリアンです。レイナさんに興味があってきました」
「へぇー、錬金術師をパーティに入れたいなんて変わってとるよね。まぁ、応募しているウチがいうもんでもないけど」
敬語で正解だったようだが、この世界のドワーフの女性はロリらしかった。
幼女に敬語で話さなければいけないのは前世の知識からすると妙な感じではある。
「俺は特殊な魔法を使うんだ。簡単にいうと金属を移動させたりぶつけたりできるというものなんだ」
俺は手に持っていた剣を抜くと魔法を使う。
ヒュンヒュンと剣を加速させて飛行させると手の中に戻した。
「今はこうやって操ることもできるから、ポーションを鉄の容器なんかに入れてくれれば渡したりできるし、燃えるポーションとかあれば敵に投げつけて爆発させたりだってできるから戦闘の幅が広がるんだ」
俺が一例を出して説明すると、レイナは目を輝かせて詰め寄ってきた。
「そりゃ面白いわ! ええな! ぜひ、ウチはアンタのパーティに入ってみたいわ」
「わかった。お試しで一緒の依頼を受けてみませんか?」
「ええなぁ。ほないこか! ウチの錬金術も見せたるわ」
ニィと笑ったレイナと共に冒険者ギルドへと戻る。
さっそくと俺はレイナのポーションの材料を探す依頼を受けよう張り紙をはがして
受付のエミリアさんのところへ持って行った。
「こちらの依頼ですね。ジュリアンくんと……あ、あなた……様、は……コホン。いえ、お二人での依頼確かに受理いたしました」
エミリアさんはレイナを見るといつもの笑顔から、青ざめた顔に一瞬なったが、レイナがウィンク一つすると咳ばらいをして、いつもの笑顔へと戻る。
一体なんなんだと思いながらも、薬草採取のためイーヴェリヒト周辺にあるエメラルド草原へと俺たちは足を向けるのだった。
■エメラルド草原
俺は目の前に広がるのは宝石のエメラルドのような緑の草原だ。
日の光を浴びて、鮮やかに輝いているようにも見える。
「綺麗な景色だ……こんな場所があったんだね」
「せやでー。ウチがHP回復ポーションを作るときに使っているエメラルドリーフの採取場所や緑色の葉に白い斑点があるのが特徴やから、覚えときー」
徒歩で現場に向かう間に色々話したおかげか、俺はレイナと打ち解けた。
今日はこの草原の近くで野営して、帰る一泊二日の日程である。
「わかった、あとはエメラルドリーフを狙う、ホーンラビットに注意だったね」
鉄の円形の盾を左腕に装備してから、エメラルドリーフを探して採取していった。
目標は籠一つ分。
乾燥させて煎じるので結構な量がいるらしいが、ここまで集めるのは大手工房で量産して、魔法都市など大きな街へ売り出すためとのことだ。
良質なエメラルドリーフが生えているのはイーヴェリヒト周辺らしく、ポーションづくりも貴重な産業とのことである。
「レイナ! 危ない!」
エメラルドリーフを探してしゃがんでいるレイナの背後の草むらが揺れて、ホーンラビットが飛び出してきていた。
俺はレイナとホーンラビットの間に割り込んで盾で、鋭い角による攻撃を防ぐ。
「よっと!」
攻撃を防いだら、カウンターで鉄の剣を横なぎに振るいホーンラビットを切り裂いた。
「あんがとなー。頼りになるやないの」
「どういたしまして、夕飯はホーンラビットを美味しく食べるとしよう」
べしべしとレイナに叩かれた俺は倒したホーンラビットの解体を行っていく。
夕暮れまでに目標の数量を回収でき、野営の準備を整えるのだった。
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