時計台の太郎くん 第13話 すずかけ洋服店にて
「そうかい、やっぱりのう……」
ムラサキババアこと、すずかけ洋服店のおばあさんは、そうつぶやいた。
私、飛鳥、黒崎くんの三人は、『太郎くん』の体操服事件が解決したことを報告しに、おばあさんのお店をを訪ねたところだ。
おばあさんはいつもの全身紫ファッションで、膝にはお人形を抱っこしている。
お人形の顔立ちは昭和なのに、ファッションや小物はバリバリの令和スタイルだ。紫色のラメ入りスーツを着ている。
「手作りのしーくんの『ぬい』じゃよ」と、紹介された。
……コメントに困る。
「田老の奥さんは、もちろん知っとるよ、お得意様じゃったしね。可愛い女の子と買いに来たもんじゃった」
おばあさんはしーくんのお人形、いや、ぬいぐるみを手放さず、静かに語る。
「田老さんは、私より、二つ下だったかのう。そうか、もうそんなにボケているのか……」
「おばあさん、田老のおばあさんより年上なの!?」
飛鳥がびっくりして叫んだ。
「人間が年を取る早さは、同じじゃないんよ」
おばあさんは、しんみりとと言い、それからニヤリと笑った。
「若さの秘訣はこのとおり、生きがいをみつけることじゃ」
「でしょうねぇ……」
黒崎くんがボソッとつぶやいた。
おばあさんは私達に、小袋のお菓子をすすめてくれた。
紫色のスイートポテト。
「なにこれ、初めて見る……」
私はびっくりした。おやつの色まで推しカラー……。
「あっ、これ沖縄のお土産のおいしいやつだ!いっただっきまーっす!」
飛鳥が、大口を開けてかぶりついた。
黒崎くんがおそるおそる口をつける。
「う、うまい……!」
目を輝かせて、無言でモグモグする。
私も一口食べてみた。
「おいしい!」
「フォッフォッフォ、しーくんオタク定番のおやつ、沖縄銘菓、紫いもタルトじゃよ」
おばあさんが目を細めて笑う。
私たち三人は、すりガラス越しに光のさす洋服店の中で、事件解決の喜びと、紫色のおやつの味をかみしめたのだった。
これが、私たち『S小学校秘密組織・怪談解決☆あああ団(仮)』の、記念すべき最初の事件。
そして、『あああ団(仮)』の活躍(と書いてドタバタと読む)は、これからも続くのだった―――
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