時計台の太郎くん 第11話 謎は解けた!急げ公園へ!

「朱里!どうしたの!?」

「何?今の悲鳴……」

 飛鳥と黒崎くんが、洗面所に飛び込んできた。

 私は、震える指先で、床に放り投げた水着を指差す。

 ふたりはそれをのぞきこんで、『たろう』の文字を確認し、


「いや――――――――あああああぁぁ!」

 ドッシーン!


 飛鳥は、盛大に悲鳴を上げた。

 黒崎くんは、尻餅をついてへたりこんでいる。

「こ、これ……たった今、バッグを開けたら入ってた……」

「どどどどどういうこと?『太郎くん』からの新たな挑戦状?ていうかこれ、女の子のスクール水着!?」

 飛鳥がうろたうえる。

 体操服と同じ、少し小さな、古い水着。

 きっと同じ年代のものだろう。

 水着は濡れていなかった。

 ――誰かが乾いたものを、プールバッグに入れたのだ。


 洗面所の床に座り込んで、私たちは状況を確認する。

「体育は五時間目で、私が更衣室で着替えたときには、絶対入ってなかったよ!」

「そして、すぐに帰りの会をして、公園でブランコこいで、朱里の家に来たよね」

 黒崎くんが腕組みする。

「うーん、プール用の更衣室で水着入れるの、特に男子には、絶対、無理だと思う……。

 昔バカな生徒のイタズラがあったらしくて、花山先生が、アリの子一匹通さない!って腕組みして男女の更衣室前で仁王立ちして見張ってたし……」

「じ、じゃあ、やっぱり公園しかないよね?」

 そこまで話し合ったところで、飛鳥が首をかしげる。

「それよりさ、『太郎くん』なのに、女子のスクール水着ってどういうこと?」

「そう。私も、そこがおかしいと思ってた」

 私はあらためて考える。


 ―――『たろう』くん、いや、『たろう』さんは、30年前にS小学校の体操服と水着を着ていた

 ―――ゼッケンの名前が、『たろう』。


 私の中で、一つの仮説が浮かんだ。

 ―――『たろう』というのは、ひょっとして……!


「わかった……」

 私はすっくと立ちあがった。

「行くよ、飛鳥、黒崎くん!」

「ち、ちょっと、朱里!?」

「朱里さーん!?」

 私は水着と体操服をはむはむのバッグに放り込み、

「今ならまだ、公園にいるかもしれない!」

 公園を目指し、玄関から外へと走り出した。


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