時計台の太郎くん 第10話 急展開・発見、恐怖のスクール水着!

 六月に入って最初の金曜日。

 私と飛鳥は、放課後のY公園でブランコをこいでいた。

 プールに入ってしっとり湿った髪が、風を受けて乾いていくのが気持ちいい。

 梅雨入り前なのに、ジリジリと肌に当たる日差しはもう夏を思わせる。

 結局、『太郎くん』の体操服事件は、あれから進展がない。

 六月に入ると同時にプールの授業が始まって、泳げない私の意識はそっちにいってしまったせいもある。

「飛鳥~、クロールってどうすればいいの~?」

「簡単だよ、ほら、手をこうやって……」

 飛鳥が片手をくねらせた。

「その動き、クロールじゃなくて平泳ぎじゃない?」

 そこへ、黒崎くんが駆けてきた。

「おまたせ……帰りの会、やっと、終わった……」

 三人そろったところで、私の家に移動する。


 家の前では、ちょうどお母さんが車で出かけるところだった。

「ただいま~」

「朱里、おかえり。飛鳥ちゃん、亜希斗くん、いらっしゃい」

「こんにちは!おじゃましまっす!」

「……しまっす(小声)」

 私たちはお母さんと入れ違いに、家に入った。

「朱里、ママちょっと『ぱぴるす』まで買い物に行ってくるね。留守番よろしく」

「いってらっしゃ~い」

「あ、水着は洗濯機に入れといてよ」

「わかってまーす!」


 飛鳥と黒崎くんを部屋に案内して、私はハッピーはむはむのプールバッグ片手に洗面所へ向かった。

 バッグのイラストは、マリンルックのはむはむちゃん。うん、今日もかわいい。

 はむはむちゃんを愛でつつ、バッグのチャックを開けて、中身を洗濯機にほうり込んでいく。


 ―――あれ?

 バッグの底の方に、何かある。

 水着なら、一番最初に洗濯機に入れたはず……。


 ずるりと出てきたそれは、小さなワンピース型のスクール水着。

 背中のゼッケンに書かれた、黒い文字が目に入った。


           『 た ろ う 』



「きゃああああああ――――――――ッ!」


 私は絶叫した。

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