時計台の太郎くん 第8話 あああ団(仮)、公園で聞き込みをする!(後編)
そして再び、私のターン。
次のターゲットは、遠野のおばあさんだ。
「おばあさん、こんにちは」
私は身をかがめて、おばあさんに話しかける。
ムラサキババアみたいに癖が強くない、背中が大きく曲がってしわの深い、ごくごく普通のおばあさんだ。
おばあさんは、無言でにっこりわらいかけてきた。
私のあいさつに、小さくうんうん、とうなずいている。
「ちょっと質問、いいですか?おばあさん、ここで変な人とか、かわったこととか、見てませんか?」
おばあさんは笑顔のまま、ほんの少し首をかしげた。
わからない、ってことなのかな?
そして、私はふと思った。
このおばあさんが、『太郎くん』の家族だったりしないかな?たとえば、『太郎くん』のお母さんやお祖母さんだったり……。
「おばあさんに、息子さんとか、男の子のお孫さんとかは、いますか?」
おばあさんは、ゆっくりゆっくりと、首をふった……ように見えた。
う~ん、はずれかぁ。
そのとき、角の家から、遠野のおばさんが、おばあさんを迎えに来るのが見えた。
私はおばあさんにぺこりと頭を下げて、飛鳥たちのところに戻った。
「うーん、やっぱりあんまり話はできなかったかぁ~」
飛鳥が残念そうに言った。
「じゃあ、あたし的に一番怪しい、あそこのおじいさんにアタックしてくるね」
「飛鳥、あんまり手荒なことはしないでね……」
飛鳥は腕まくりをして、自動販売機のそばのベンチに腰かけているおじいさんに突撃していった。
ハラハラして見守る私と黒崎くん。
おじいさん、ビビってる……。
飛鳥がグイグイ話しかけている。おじいさんはしどろもどろだ。
ほどなくして、飛鳥が戻ってきた。
「どうだった?」
「はっずれー」
飛鳥は続ける。
「あのおじいさん、別に怪しい人じゃなかった。糖尿病でダイエットしてるんだって。奥さんにウォーキングしてこい!って家を追い出されるんだけど、甘い飲み物がやめられなくて、そこの自販機でこっそり飲んでるんだって。奥さんや知り合いに見つからないようコソコソしてたってわけ」
「なあんだ」
私は脱力する。
「今もファンタグレープ飲んでるとこだった」
飛鳥は肩をすくめた。
「ただのファンタ
……私と黒崎くんはずっこけた。
その後、黒崎くんがカラスに秒でソーセージを奪われて、今日の聞き込みは終わったのだった。
「……ヒトもネコもカラスも……コワイ……」
やばい、黒崎くんが生き物全部不信になってる!!
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