第3話 戦闘開始
「おいおい、お前らこんな村の奴らにやられたのか?」
「ひ、光の紋章持ちがいたんですよ!それと火の紋章持ちも…」
「ったく、そいつらどこにいんだ?探し行くぞ、ミズキ」
「…どーやら探さなくても出てきてくれたみたいだよ♪」
青髪の男が指差した方向には、アランとリサが立っていた。
二人は男達の前に立ち、剣を抜いた。
「なんだ、お前らこんなガキに負けたのかよ」
「モクバさん、気をつけてくださいよ…こいつらなかなかやりますから…」
「ちぇ、お前らと一緒にすんなよ。ミズキ、お前は左の女を頼むぜ。俺は右のガキをやるからよ!!」
そう言った瞬間、モクバは地面に手を当てた。
すると、地面には緑色の紋章が現れた。
「なんだ!?」
「気をつけてアラン!下から何か来るわ!」
リサの言葉を聞き、アランはとっさにその場から飛び上がった。
すると、地面から木の根っこのような物が数本飛び出してきた。
「根っこ!?」
根っこはアランの方へ向かって行く。
なんとか避けようと体を動かすが、あまりのスピードに対応出来ず、左足に根っこが絡み付いてしまった。
「ヤバ…」
「食らいやがれ」
モクバは手を上げ、勢いよく下に下げる。
すると、根っこも勢いよく下に下り、アランを思い切り地面に叩きつけた。
「ドォン!」
という音とともにあたりには砂煙が舞う。
「アラン!」
リサがアランの方へ走ろうとした時、すぐ目の前に青髪の男…ミズキが現れた。
ミズキは肩まである髪を耳にかけ、手のひらをリサに向けた。
「!?」
「お嬢ちゃん、君の相手は僕だよ♪」
リサに向けられた手のひらから、勢いよく水が噴き出した。
(水…!?)
リサは横に転がり水を避けた。
後ろを向くと、水が当たった家の壁は貫通し、大きな穴が開いていた。
「貫通してる!?」
「どーだい?僕の"水鉄砲"の威力は♪」
(あんなのまともにくらったら確実に死ぬ…それに、火と水じゃ相性が悪い…どうすればいいのよ…)
リサは立ち上がり、剣を構えた。
「なかなか勇ましいねー、君。それじゃ僕もちょっぴり本気出しちゃおうかな♪」
そう言うと、ミズキは右手の平を下に向けニコッと笑った。
ーーーーーーーー
あたりに舞う砂煙。その中から、人影が飛び出した。
「イテテ…死ぬかと思ったぜ…」
砂煙から出たアランは右手を押さえて言った。
「ほう、あれを受けてかすり傷とはなかなかやるなぁ。ガキの割には」
「こんの…誰がガキだ!!」
アランは剣を構え、モクバの方へ走って行く。
「ふん、隙がありすぎだぜ、ガキ」
モクバはその場にしゃがみ、地面に手を当てた。
「"木柱もくちゅう"!!」
モクバがそう言った次の瞬間、地面から四角い木の柱が、アランめがけて飛び出してきた。
「うわ!?」
アランはとっさに柱を交わし、勢いを止めないようまた走り出す。
「まだまだ行くぜ!!」
モクバの声とともに、今度は三本の柱がアランめがけて向かって行く。
(くそ、今度は避けきれねぇ…!)
避けきれないと悟ったアランは、後ろに回避し一本目の柱を避けた。
さらに迫って来る二本目の柱も同じく交わし、最後の一本に向け思い切り剣を振った。
「ガキン!!」
金属の音があたりに響き渡る。
アランは剣で柱を押さえ、その体制を保つため足に力を入れる。
「ははは!無駄無駄!この柱はお前を潰すまで力を抜かないぜ!」
どんどんと柱の力が強くなる。
(くそ…このままじゃ潰される…!)
そう思い目を瞑った時だった。
突然、アランの手の甲が黄色く光り始めた。
(なんだ、これ…体中から力が込み上げて来る…!)
アランは徐々に力の強くなる柱をはじき返し、素早い動きで柱を切り刻んだ。
刻まれた柱は、その場にバラバラと崩れ落ちた。
「すげぇ…体がめちゃくちゃ軽い…」
あまりの体の軽さに笑みをこぼすアランとは対象に、木柱をいとも簡単に切り刻まれたモクバは焦りの顔を浮かべていた。
「俺の木柱をいとも簡単に…ネズ達がやられた理由も分かるかもしれねぇな…。ちっ、多少は本気を出してやるか…」
そう言うと、モクバは体に力を込め始めた。
「ウォォォォ…!」
(なんだ?一体何をするつもりなんだ…?)
あまりの気迫に、アランは反射的に身構えた。
モクバの背中がメキメキ、と音を立てる。
次の瞬間、モクバの左右の肩甲骨辺りから木のツルのようなものが数えきれないほど現れた。
「な、なんだ!?」
「ウォォォォ…!!」
背中から生えてきたツルのようなものはモクバの両腕に巻きついていく。
巻きついたツルは徐々に形を変え、モクバの両腕は木目状、まるで木製人形の腕のように変化した。
(腕が木目状になった…あれも奴の能力なのか…?)
「さぁ、本気度五十パーセントってとこだな…お前にはこれくらいで十分だろうよ」
ふぅ、と息を吐きモクバは不敵な笑みを浮かべる。
「ちぇ、舐められたもんだぜ!お前なんか一瞬で…ってあれ!?」
手の甲を見ると、先ほどまで光り輝いていた紋章は普段通りの黄色い紋章へと戻っていた。
「…さっきのはなんだったんだ?まぁいいか、今はそんなこと考えてる場合じゃない…」
「さぁ、今度こそ殺してやるぜガキ」
モクバはアランの方へと走り出した。
ーーーーーーーー
下を向いた手のひらから、一滴の水が零れ落ちた。
地面にぶつかり割れた水滴はまるで水たまりのようにミズキの足元に広がって行く。
(一体なんなの…?)
これから何をするのか予想のつかないリサは、いつでも動ける姿勢をとりつつ様子を伺った。
「さぁ、これから不思議なものを見せてあげるよ♪」
そう言うと、ミズキは足元の水たまりに手のひらをつけた。
すると、水たまりの下には水色の紋章が現れた。
「水写し…」
ミズキがそうつぶやいた瞬間、水たまりから勢いよく何かが現れた。
あまりに一瞬のことでよく分からなかったが、リサはよく目を凝らしミズキのほうを見た。
「あれは…!?」
ミズキの前に立つ者。それは紛れもなく"ミズキ"そのものだった。
「ふぅー、これなかなか疲れるんだよね♪」
「な、なんでミズキが…!?」
「ふふ、なかなかいいリアクションだね♪。ご褒美に教えてあげるよ。これは"水写し"と言ってね?自分の分身を"水"で作る技なのさ♪」
「自分の分身を…!?」
「あぁ、そうだよ♪」
水たまりから現れたミズキは首を左右に曲げ、腕をブルブルと振った。
「ふぅ、無駄な話は無しだ。俺がやるからお前は黙って見てろ」
「分身のくせに俺に命令すんなっての♪」
「なんだと?」
(分身と言えど性格はかなり違うのね…って感心してる場合じゃない…。奴一人でも厄介なのに二人だなんて…しょうがない、ここはなんとかするしかないか…!)
リサは先ほどより深く身構える。
「さ、行きなよ分身♪、好きなだけ暴れていいからさ♪」
「ちっ、言われなくても行くっての。さぁ、遊ばせて貰うぜ?お嬢ちゃん」
そう言うと、分身のミズキは右手のひらに水を溜め始めた。溜まった水に左手を合わせ離して行くと、青い柄の剣が右手から現れ始めた。
右手から現れた剣を握り、分身のミズキはゆっくりとリサに近づいて行く。
(来る…!)
「行くぜ…!」
剣を後ろ手に構え、分身のミズキが走って来る。
それをじっと見つめ、リサはその場で構えをし続ける。
「死ね!!」
分身のミズキは剣を右から左へと振る。
それに合わせ、リサも左から右へと剣を振った。
「キン!!」
と刃物のぶつかり合う音があたりに響く。
リサと分身のミズキはそれぞれ見つめ合い、一度後ろへと下がった。
「なかなかやるなぁ、嬢ちゃんよぉ」
「あんたも分身のくせにやるじゃない」
二人はそれから数秒見つめ合い、同じタイミングで動き始めた。
上下左右に振り乱れる分身ミズキの剣をリサは全て弾き返していく。
(ちっ、女ガキだと思って舐めてたがなかなかやるみてぇだな…。"アレ"を使うか)
分身ミズキは一度後ろに回避し、剣を前に突き出した。
「おぉ、"アレ"を出すんだね♪」
「あぁ、食われねぇように注意しとけよ」
(アレ…?アレって一体なんなのよ…)
リサは一度剣を下ろし、分身ミズキの方を見る。
すると、分身ミズキの足元に水色の紋章が現れた。
紋章からは水が湧き出し、分身ミズキの体を覆っていく。水は徐々に上へと登り、最終的には腕の先の剣を覆い尽くした。
「さぁ、これからがショータイムだぜぇ!!」
水に覆われた剣は徐々に形を変えていく。
剣の刃は硬い鱗に覆われ、徐々に大きくなる。
そして、剣の先端が避け、鋭いが歯がはえてきた。
(剣に口が…?まるで生き物じゃない…!)
「ククク…これぞ我が相棒…太刀魚たちうおだ!」
「太刀魚…なんだか気持ち悪いわね…」
「ふん、言ってろ。今こいつは相当腹を空かしててな…ちょうど人間の肉が欲しかったところだ。さぁ、好きに暴れていいぜ、太刀魚!!」
(来る…!)
リサは剣を構えた。
続く
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