第010話 体育実技の授業
実技系の授業以外はいつも通り学校で授業を受けてきたが、週に4時限分実技系の授業がある。今日は体育の実技の授業が2時限分ある。
実技系の授業は近くのコミュニティセンターの体育館で行う。
今月はバスケとなっている。
体育の授業の場合、個人の運動能力の問題もあるので最低限出来ればいいレベルをクリアすれば単位をもらえようになっている。
バスケならドリブル、パス、シュートが一定レベル出来ればOKだ。
ただし、能力的に出来る生徒はそれらと別にコーチングも課題となる。ただ出来れば終わりというわけではないようになっている。
今日はアリーシャが初めてこちらのコミュニティセンターで体育の実技の授業を受ける。
体操服というものはなく、施設で準備されている競技に合わせた服を借りている。今日はバスケ用のタンクトップに短パンだ。
事前に申請してあるので受け取り着替える。
セイラとアリーシャと別れて更衣室で着替えた。
着替えた後は更衣室の外で待ち、セイラの状態をチェックする。
アリーシャがいてくれたので直してくれたようだ。
バスケは地下の体育館で行う。
空調完備で夏だろうが冬だろうが快適に調整されていて、激しい動きをしなければあまり汗をかかないようになっている。
「アリーシャはバスケはどのくらい出来る?」
「結構上手い方だと思うよ?向こうでは地域のチームに入ってやってたから」
「海外だと昔から地域のチームに所属してスポーツをするのが普通だったよね。日本だと野球くらいだったけど、野球もやる人が少なくなったしな」
「そうなんだ」
普通に話してはいるけど、アリーシャのスタイルの良さは目の毒だ。
セイラのは慣れはしたけど、ここの競技用の薄い服はスタイルをはっきりさせるからやばい。
今日一緒にやる野郎共が変な気を起こさないといいけど。
体育館のバスケのコートがあるスペースで、授業が始まる前に準備運動をする。ストレッチをして身体の各所を伸ばしながらほぐしていく。
しっかりやってないとケガをしやすくなる。
セイラは相変わらず身体が固く、補助してしっかり伸ばさせた。
そうやってストレッチをしてる間も、野郎共の多くが盛り上がり揺れる部分を見ていた。セイラについてはなるべく見えないようにしてはいたが、アリーシャは一人でやってるから隠しようがない。
本人は気にしていないようだけど。
トレーナーが来て授業が始まった。
ドリブルやパスの練習に始まり、シュート練習に移る。レイアップ、セットシュート、ジャンプシュートをする。
2人一組でパスランからのシュート、ポストプレーからのシュートなどした。
それから10人ほどに分けて、中に2人ボールを取る役を配置してパス回しの練習を行った。
俺はアリーシャとセイラが同じグループになった。
アリーシャが中にいる時に、一部男子がジャンプしないと取れないようなパスをしてアリーシャをジャンプさせていた。
アリーシャの胸が揺れるのを楽しんでいる不届き者なので、ノールックで顔に向けて強烈なパスをしてやった。当然、虚を突かれ顔にボールがまともに当たっていたが。
更に今度はセイラが中に入った時も同じ事をしようとしたいた奴がいた。これはセイラはジャンプせず大して揺れず落胆していた。
俺が睨んでいる事に気付いているはずだが、今度はセイラを左右に揺さぶり同じ事を試みていた。これも俺が顔にボールをぶつけ沈黙させた。
トレーナーもこれを黙認し、野郎共に注意をしてやっと終息した。
それから休憩に入った。
ここでしか会わない別のクラスの奴が話しかけてきた。
「おーい、相変わらず今日もセイラさんを過保護にしてるんだな。それであの子も一緒だけど誰だよ」
「そっちのクラスには話がいってねぇの?転校生の話」
「ああ、あの転校生の子か。こんな美少女だったんだ。しかも……ねぇ?」
「なんだよ?『ねぇ』って」
「そりゃあ、あのスタイルはすごすぎるだろ。動く度に胸が揺れるんだぞ?」
「まあ、そうだけどな?でも、あんまり大きな声で言うなよ。アリーシャも恥ずかしいだろうから」
「そうだな。静かに楽しんでるよ」
回りにいる野郎共もそれに頷いていた。
仕方ねぇなぁ、野郎共は。恥ずかしいよ、男として。
きちんと知り合いになってちょっかいかけるというならいいけどさ、回りでエロい目で見ているのはどうかと思うぞ。
休憩も終わり、1ゲーム15分の試合を行う事になった。
トレーナーがチーム分けを行い、セイラと俺は同じチームとなり、アリーシャのチームと対戦する事となった。
ただ、両チームの上手い生徒を呼んで、追加指示をした。「あまり上手くない人をしっかり使うように」と。
とりあえず作戦会議。
相手選手のマークの徹底と速いパス回し。ゴール近くでボールを持ったら外れてもいいからシュートを狙う事。いつか入ると信じて。
そんな感じで、もう一人の上手い選手と追加の打ち合わせ。ゴール下の取り合いでなんとか勝ちたいという事を話しておいた。
さあ、ジャンプボールでスタートし試合開始だ。
こちらがタップしたボールを取りどんどんパスを回していく。ゴール前への切り込みは俺ともう一人で。
そのままシュートせず、上手くない選手に回してどんどんシュートさせた。セイラもどんどんシュートした。
するとコート外の試合をしていない生徒から「おおお」と言う声が聞こえた。
……いやらしい奴らめ。どこを見て言ってるんだ。
俺は外れたボールはせっせとリバウンドして確保し、そのままシュートするか他の選手に回してシュートさせた。
得点はそんなに出来ないけど、ボールの支配率はこちらが高かった。
アリーシャのチームは、もう1人とボールを運んでいくけど、こちらが他の選手をマークしていてパスを回せない。
アリーシャが自分でゴールしようとするのをマッチアップしている俺がブロックするが、「ポヨン」と胸が当たる。
「「「ブーブー」」」
見てる奴らがブーイングしてきた。狙ってやってるわけじゃないし。セイラまでブーイングするな。
何度となくアリーシャをブロックする俺に、試合後見ていた奴らがまた大ブーイングをしてきた。
結局、マークが上手くいったかどうかで差が出たようだ。アリーシャともう1人を上手く抑えてこちらが勝った。
「ヤマト、バスケ上手いんだね?」
「まあまぁだよ。そんなに凄く上手いわけじゃないからアリーシャと互角程度だよ。完全に抑えられなかったし」
「向こうでは男子でも抑えられる人はほとんどいなかったよ?」
「ヤマトは小さい頃からバスケのチームに誘われてたんだよ。でも、どうしてか入らなかったんだよね?」
お前の面倒を見るのが大変だからだろ。
確かにバスケのチームに誘われた。けど、俺と同じレベルの選手がいっぱいいたから、俺でなくてもいいだろうと思ってチームに入らなかった。
セイラの面倒を見るのは俺しかいなかったしな。なら、そっちに力を入れた方がいいと思った。
それで悔いが残るとか考えなかったし、実際悔いはない。
趣味レベルでやるには十分な実力だ。アリーシャをある程度抑えられるし。
「でも、もったいない?惜しい?よね。背もこんなに高いんだし、バスケに活かせたのに」
「背は昔から高かった事もあって誘われたんだと思うよ。それでもバスケに専念しようとは思わなかったんだよ。はっきりした理由はあんまりなかったけどな」
「ヤマトはいい選手になれたのに。みんなそう言ってたよ。なんで辞めたの?」
「バスケに専念してたら、お前の面倒を一緒に見れねぇよ」
「やっぱりセイラの面倒を見るために断ったの?」
「俺レベルの選手がいっぱいいたからね。だからだ。セイラが理由の全部じゃないよ」
「ヤマトは頼られるのがいいんだよね?」
一方的に頼られたいとは思わないけどな。
セイラについては、もう面倒を見るのが日課として染み付いてるだけの話。
今の所セイラの面倒を見るやつが出てこない事には辞められない。
もう父親とか兄貴の気分でいるだけだ。
「早くセイラの面倒を見てくれる奴が現れれば、やりたい事もはっきりするのかもな」
「……」
「あてがあるの?ヤマト」
「あったらいいな?」
他のチームの試合が終わり、もう少しで授業が終わるからクールダウンのストレッチをする。
それで体育の授業は終わった。
後はシャワーを浴びて着替えて次の授業に移る。
さて次の授業は……調理実習だ。
調理実習は学生だけでなく、一般の人も参加する料理教室と合同だった。
俺やセイラ、アリーシャ以外にも結構な人数の生徒が参加している。
「本日の料理教室ですが、特別講師として……両国ヤマトくんが来てます。
よろしくお願いしますね」
「へ?」
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