第008話 No Plan

 今日は朝食後からE.G.G.に参戦中。


 セイラに朝食を食べさせ、昼食用にサンドウィッチを作り冷蔵庫に放り込んできた。

 身支度も最低限してやって、今日は用事があるからと部屋に戻り、E.G.G.の方に直接ダイブしている。


 今日はミッションを受領せず適当に動き、敵勢力のアーマードギアを潰す予定。

 ただ、何故か1機付いてきている。

 別に敵機ではないが、基本ソロプレイが信条の俺としては邪魔だ。

 ラウンジにいたところを、この間の巫女服プレーヤーがこちらを見つけくっついてきている。

 無視してフィールドに出てきたがそれでも付いてくる。

 ホバーリングで高速移動し引き離そうとしたが、向こうが軽量でこちらとそれほど速度が変わらず引き離せない。


「いつまで付いてくるつもりだ?俺はソロでやっていると言ったはずだが」

「勝手に付いて行ってるだけだから、無視していいよ」

「それだとチームを組んでいるように見られて困るんだが?」

「私が否定しておくから大丈夫だよ」

「否定しないだろ?お前は」


 完全に無視するしかない。


 そろそろ国境付近に到達する頃。砦でも墜としてしまおうか。

 小さな街道の砦なら規模の小さい。運が悪くなければそれほど多くの機体が駐留していないはず。

 悪いが勝手に付いてきている機体を囮に使おう。


 離れた場所で周辺の敵機を索敵する。アクティブにスキャンするとバレるからパッシブで行う。

 向こうの動きや通信波を元に確認を行うが、最大4機程度だろう。

 囮役もいてくれるからまず問題はないだろう。


 アサルトライフルをスナイパーライフルに交換して、砦の上にいる1機の右肩を狙う。右肩を落とせば向こうは射撃武器を1つ失う。そうすれば接近しやすくなる。

 デコイ代わりの巫女服のアーマードギアにも射撃は集中しないだろう。

 慎重に狙いを定め……撃つ!


  バシュッバシュッ


  ガシュッバギィ


 狙い違わず1機腕ごと右肩を失った。

 その瞬間、クサナギを一気にホバーリングで加速させ、砦に突っ込む。

 ついてきてたアーマードギアも追っかけてくる。


 向こうはまだこちらへの攻撃態勢を整えられていないようだ。

 手前にいるもう1機の胴体を狙って、またスナイパーライフルを撃ち込む。

 胴体はさすがに硬いので大したダメージは付いていないようだが、体勢を崩し後ろに倒れた。

 隣の巫女服の機体はサブマシンガンを持っているので、まだ攻撃はしていない。

 今の内に一気に距離を詰める。


『敵襲!敵襲!』


 俺はスナイパーライフルを捨て、アサルトライフルに持ち換える。帰りに拾って帰らないと。

 皿に距離を縮めアサルトライフルの射程距離内に入る。


  ダダダ、ダダダ

  ダダダダダダダダダ


 2機で転倒している機体にアサルトライフルとサブマシンガンを撃ち込む。

 倒れて動けない機体は絶好の的だ。ほぼ全弾命中し、関節から力が抜け動かなくなった。

 砦の上の機体はヒートソードを左手に持ち飛び降り、砦の向こう側にいた機体が扉を開けこちらに回ってきた。

 飛び降りてきた敵機は、付いてきた機体の方に向かって行ったからそのまま任せる。


 小さな砦の門である以上1度に2機も3機も通れるようになっていない。

 扉が開いた所にグレネードを撃ち込む。

 1機がまともに喰らい転倒する。そのまま扉の通行の障害物になってもらう。

 一気に門扉の無くなった門に詰め寄り、転倒したアーマードギアの胴体にパイルバンカーを打ち込みとどめを刺した。

 後1機はいるはずだがこの向こうか?

 向こうの様子を確認するが見当たらない。更に進んで確認しようとしたが……


  ガシッ ドガッ


 後ろの方で付いてきた機体がタックルされ倒れたようだ。

 そこに敵機がヒートサーベルで斬り付けようとしているのが見える。

 流石にそのまま放っておいて大破されても寝覚めが悪い。


  ダダダ、ダダダ


 アサルトライフルを後ろの敵機に向けて撃ち込んだ。

 撃ち込まれた敵機は体勢崩すとヒートサーベルを落とし、たたらを踏んだ。

 その隙を逃さず、付いてきた機体がサブマシンガンを撃ち込み続けた。


 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダ


 敵機が崩れ落ちようとも撃ち続け、マガジンの弾数を全弾撃ち尽くしようやく落ち着いた。



 門の向こう側の敵機がこちらに向かって来ない。仕方ないから向こう側に飛び出す。

 砦の向こう側には敵機はおらず、既に逃走していた。その後ろ姿見える。

 逃がすのは後々面倒になる。敵機のバックパック目掛けてグレネードを撃ち込んだ。


  ドガン


 そのまま敵機はベタンと前に倒れ、動かなくなった。

 倒れた敵機に接近し蹴ってひっくり返し、コクピットの装甲を引っ剥がしプレーヤーを引き摺り出す。


『他に味方はいないのか?』

「いません。俺が最後です」

『そうか。悪いけど、機体は破壊させてもらうな』

「やめてぇ、またお金がかかるぅ」

『ほんとに悪いな』


 コクピットにパイルバンカーを撃ち込み大破した。

 引き摺り出したプレーヤーが号泣していた。




 砦の向こうに戻り、王都の統括部門に連絡し砦を落とした報告をする。

 担当者がいつものプレーヤーだったから話が早かった。


『またお前が落としたのか。お疲れ』

『おお、小さい砦だったからな。敵機は4機しかいなかったしな』

『タケル、全部お前が墜としたのか?だよな?』

『いや、今日は他の奴が1機墜としてる』

『何ぃ、ソロプレイ辞めたのかよ?』

『付いてきただけだ。チームを組んでねぇ』


 付いてくるなと言っても付いてくるんだから仕方ないだろ。

 どっか行ってくれれば楽なんだけどな。


『ちょうどいいデコイになったから楽だったよ。

 まぁ、敵も弱かったけどな』

『国の端の小さい砦だからな。ていうか、付いてきたからってデコイに使うとかひどいだろ。

 で、連れのプレーヤーと機体の名前を教えてくれ』

『おい、国の統括に報告してるんだが、お前のプレーヤー名と機体名を教えろて』

『はい、プレーヤー名が静御前で、機体名がアリスティアです』

『だそうだ』

『分かった。それで登録しとく。

 直に駐留する部隊が行くからそれまで守っててな。じゃあな』

『ああ、またな』



 しばらくしたら、駐留部隊が来た。

 その前に国境線と砦の位置が変更され、エッダ側に100mほど移動した。

 これでヤマタノオロチの領土が少し増えた。その分、俺も報酬が増える。

 領地が確保されている間は、一定周期で結構報酬が貰えるから美味しい。

 大きい砦を落した方が報酬がでかいけど、ソロじゃあ落とせないけどな。




静御前Side

 やっとプレーヤー名を知ってもらえた。それに彼のプレーヤー名が分かった

 付きまとってきたけど名前を聞いてくれないし。タケルだって。

 別の理由とはいえ知ってもらえたのは嬉しい。たまたまだけど分かって嬉しい

 囮にしたって言ってたけど、でも今日も助けてくれてた。

 ぶっきらぼうだけど、やっぱり優しいね。


 まだ駐留部隊が来ないので話しかけてみる。

 また嫌がられると思うけど。


『さっきはまた助けてくれてありがとうございます』

『助けたわけじゃない。ちょうど背面を見せていたから、撃墜数を稼げるかと思って撃っただけだ。墜ちなかったけどな』

『それでも助かったのは確かなんですから』


 それ以上は話してくれなかった。

 ソロに拘るけど、どんな理由があるんだろう。




ヴァルトラウテSide

 ラウンジで、国の端の砦が墜とされたらしい、という話題で持ちきりだった。

 重要な砦じゃあないとはいえ何をやってんだ?

 領地が減るし、せっかく墜とした私の報酬が減るし。

 護ってた奴らを締め上げてやらねぇと気がすまない。


「おい、聞いたか?砦を墜とした奴、いつもお前とやり合ってる奴だと。

 今日は2機で攻めてきたらしいぜ。しかも、女のプレーヤーらしい。ネカマかもしれんけど」

「どういうことだ?あいつはいつもソロプレイしてるとこしか見たことないぞ?昔、チームでやろうって誘ったのに断りやがったのに」

「何?それで今まで突っかかってたのか?可愛いとこあるのな、お前も」

「うっせぇ。それで誰なんだ?」

「この間から見かけてた巫女服ちゃんらしいぜ。名前は知らんけど」


 ああ、あいつか。

 まだ所属する国が決まってないからって、一緒にって言ってたのにな。

 結局男の尻を追っかけて行ったってわけか。しかも、ああいう見た目の奴ならチームを組むのか?あの男は。

 ふざけやがって。


 とりあえず……こっそりと巫女服を買った。しかもリアル用のも。

 ヤマトもああいうのが好きだったりするのかな?


 今日は気分が悪い。もう落ちよう

 ヤマトに夕飯の催促のメッセージを送って落ちた……




タケルSide

 セイラから夕飯の催促メッセージが来た。

 ったく、飯のことだけかよ。

 まだ駐留部隊が来ないから落ちることができない。

 しばらく待ってるようにと返信しておく。


 とりあえず今日もまずまずの戦果だ。

 静御前とかってのが付いてきたのは邪魔だったが。

 明日は機体のメンテだけで、後はリアルでゆっくりしていよう。

 野菜の下ごしらえをして冷凍しておくのもいいな。


 ようやくこっちに来てるのが見えてきた。

 もう少しで落ちることができそうだ。

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