第007話-2 散歩
パンを食べながら歩き、公園に入って中をぐるっと回ってみる。
池があったり、樹木が植えられちょっとした森になっていたり、売店があって回りを見渡せるイートインスペースがあったりで、散歩にはいいところだ。
都市開発もこういった森のある公園が作られ、住宅地にも樹木が多く植えられていて森の中に居住地があるような雰囲気になっている。
大昔はこの辺りも建物だらけだったそうだ。樹木もほとんどなくて夏になると熱帯のような暑さだったらしい。
セイラはいつものように売店の方に吸い寄せられて行った。
俺としてはアリーシャがいるのでちょっと恥ずかしい。きちんとしつけておけば良かったと思う。
でも、アリーシャは微笑ましく笑っていた。
売店でフルーツジュースを購入し、イートインスペースでくつろぐことにした。
「ここの公園は池や小さい水路が多くて水がいっぱいですね?」
「日本は国土が狭くて川はすぐ海に流れていってしまうけど、山が水を蓄えてくれてるから意外に水が豊富な所なんだ」
「いいですね。前住んでた所は皆雨水をしっかり蓄えられるような家の作りになってました。それで雨水を大きいタンクに溜めて使ってます」
「そういうところがあるんだな。話では聞いたことがあるけど」
「だから、私はいろんな所のリアルに触れたいと思って、パパの引っ越しに付いてくことにしてます」
「そっか。俺は親に付いていかなかったからなぁ」
「セイラが心配だからですか?」
「ん?私?」
セイラが心配じゃないわけではないけど、それだけで両親に付いていかなかったわけではない。
学校は問題ないし、メタバースで会うならどこに住んでいても問題は無い。
ただ……
「セイラが心配だから残ったわけじゃない。どこに行ってもうちの両親は忙しくて家にいないことが多いから、引っ越しても意味は無いんだ。
結局1人になるなら、隣にセイラの家族がいる所の方が心配が少ないしな」
「そうなっても、セイラが絶対に行かせない。うちの子にする」
「あはは、セイラはいい子だね」
手間はかかるけどな。それさえなければいいのにな。
フルーツジュースを飲みながら公園内の風景を堪能して、公園を後にする。この後はいろいろふらふらと歩きながら、セイラのお腹を満足させつつ実店舗巡りをした。
最後は俺のひいきのお店、スーパーマーケットだ。
普通はメタバース内で購入してドローンで送られてくるけど、実店舗は結構珍しいものを扱っている。店長の伝手で小さな生産者から良いものを仕入れてくれているから嬉しい。
まぁ、料理マニアしか来ないけどな。
「おや、ヤマトくんじゃないか。セイラちゃん以外にも美少女連れちゃってハーレムかい?お盛んだね。メタバースじゃないからちゃんとしないとダメだよ?」
「ちげぇよ、おっさん。セクハラか?
隣に越してきた子だよ。リアルのこの辺を案内しながら散歩してきたんだよ」
「ヤマト、言葉使いがよくないよ」
「ああ、いいんだよ。ヤマトくんが小さい頃からの付き合いだからね。その位いつもの事だよ」
「それならいいんですけど」
結構付き合いが長いんだよ。
小さかったから口の聞き方を知らなかったけど、店長も面白がって付き合ってくれたから今も通ってる。良いものの入手経路は手放せないから。
「先日ヤマトの隣に越して来たアリーシャです。
料理は出来ないのでヤマトみたいにここに来るかは分かりませんけど」
「それも大丈夫。ここにはそんなに数を揃えてないからいっぱい来ても困るから、何かあった時に欲しいものがあれば相談に乗るよ。
ヤマトもセイラちゃんの偏食を治すために相談に来て知り合ったんだから」
「余計なことを言うなよ」
「初めて知った。ヤマトはそんな事してたんだ」
そうだよ。せっかくのじいちゃんの野菜が食べれないとか許せなかったからな。
今ではじいちゃんの野菜に関しては食べてくれるようになった。でも、そうなるまでどれだけ店長に相談して大変だった事か。
店長のお陰で調理技術も身に付いたからいいけど。
というわけで、せっかく来たのでいろいろ調味料とか食材、特に肉類を見て回る。
肉類は特殊な肉も扱っているので面白い。流石に熊肉は処理に手間がかかり過ぎるので手を出したことはないけど。
普通になかなか手に入らないすじ肉仕入れてもらったりもして、シチューや牛丼を作ったりもした。セイラは喜んで食べるから。
今日も肉のいい所を買って帰るとしよう。店長にいいレシピもらったし。
セイラが買った肉で作る料理に、期待で胸を膨らませているのが分かる。
何を作ろうかな?
アリーシャも公園やお店とかいろいろ案内したけど、気に入ってくれたようでなによりだ。
他にも離れた所にいいお店があるから、また連れて行こう。
アリーシャSide
近くにいいお店がいろいろあるのを教えてもらった。
いい公園もあったし、良い所みたい。
でも、お店はヤマトがセイラのために見つけたとこが多いんじゃないかな?
いいなぁ。
セイラSide
いっぱい歩いて疲れたけど、いろいろ食べれて満足。
夕飯もお肉が美味しかった。
これならまた散歩もいいかもしれない。
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