第006話-2 転校生

アリーシャSide

 セイラの所に行ってからメタバースから落ちた。

 お昼ご飯が楽しみだ。今日は何かな?

 シート型のPCから降りて、ヤマトの家に行こう。

 玄関前に行ったら、もうセイラがいた。

 彼女も楽しみなんだね、ヤマトのお昼ご飯。

 

  ピンポーンピンポーン


 ヤマトが玄関を開けてくれた。

 う~~ん、いい匂いがするなぁ。




ヤマトSide

 セイラとアリーシャが来たので中に入れ、ダイニングで待たせる。

 今日は炒飯だ。ご飯はタイマーで炊飯済み。具材も朝のうちに切っておいたので後は炒めるだけ。

 一気に炒めて炒飯を仕上げた。


「はい、出来たよ。炒飯」

「やった、炒飯だ」

「?炒飯?どんな料理?」

「ピラフに近い料理かな。炊いたご飯を卵やチャーシューなどの具と一緒に炒めて味をつけてる」

「へぇ、香ばしい匂いが美味しそう」

「ピラフは生米を炒めてスープで炊くから、香ばしい匂いはしないよね」


 どっちが美味しいとかっていうことはないけどね。

 ピラフなら炊く前まで準備して、学校から戻るまでの間にタイマーで炊けるから、帰って来てすぐ食べれるけどね。


「ヤマトのはどっちも美味しい。今度はピラフ作って」

「はいはい、しばらくしてからな」

「やったー!」

「セイラはいいなぁ。私も食べてみたい」

「いいよ。どうせ1人分も2人分も大して変わらないし、食材も余ってるから」

「いいの?やったー!いつも食べてるのよりヤマトの料理の方が美味しいから」

「そう言ってくれるなら嬉しいよ。セイラのとこ以外の反応も見たかったしな」


 親父も上手くなりたかったら、もっと他の人にも食べてもらえって言ってたし。ちょうどいい。

 将来的に料理人目指してるわけじゃないけど、美味しいって言ってくれるのは素直に嬉しいから。




セイラSide

 昼食も食べたし、学校に戻った。

 まだ休憩時間があるから教室で大人しくしてた。


「セイラさん、今日のお昼ご飯も美味しかったからですか?」

「うん、美味しかったよ。パラパラの黄金炒飯」

「あらあら、いいですわね。私も食べてみたいですわ。

 ヤマトは中華も出来るんですか?」

「出来るよ。どんなのでも出来るかは知らないけど、家庭料理的なのは大体出来るって」

「そうですか。やっぱり私にも作って欲しいですわ。あまり高級料理店での中華も飽きてきましたし」


 やっぱりお嬢様なのかな?

 でも、私は高級な料理よりヤマトのいつもの料理がいい。

 高級な料理は食べたことないけど、多分舌が胃袋がヤマトの料理じゃないと満足しないと思う。


「そういえば、お隣のクラスに転校生が来たそうですね。珍しいですわ。

 しかも、すごいスタイルのいい美少女なんですって?」

「ん、アリーシャの事だよね。すごくボインで腰もキュッとくびれててお尻は安産型かな。女神みたいな感じ」

「……時々あなたの発言はポンコツになりますね。ボインとか安産型とか。おじさんとかおばさんみたいですよ」

「そう?」

「私的には楽しいからいいですけど。これから会いに行ってみませんか?」

「ヤマトの隣に越してきて、さっきもお昼ご飯を一緒に食べたけど、いいよ」


 珍しくエリーも気になるみたい。

 エリーは美人だから対抗意識でもあるのかな?

 お嬢様だから下々の人に負けるなとか言われてるとか?




ヤマトSide

 教室にアリーシャと戻って来た。

 教室ではアリーシャを待ち構えていた男女のクラスメイトに連れ去られていった。

 自分の席に着くとトキオとダグが寄って来て話しかけてくる。


「よう、美少女2人との昼食はどうだった?」

「よろしくやってたんだろ?ヤマト」

「トキオ、言い方が下品だぞ?普通に昼食を食べてただけだ、炒飯を。」

「炒飯か、いいなぁ。俺も食いてぇ。美少女2人にあ~~んとかされたら昇天しちまうよ」

「妄想だけで昇天しちまえ!そんなもんはねぇんだよ」


 そんなトキオの妄想話に付き合ってると、セイラとエリーがこっちの教室に入ってきた。

 その瞬間、教室のざわめきが止まった。刻が止まったかのように。

 アリーシャの方に近寄って、エリーの紹介をしている。

 回りの野郎どもは目の保養とばかり、顔が蕩けまくってた。そりゃあそうだろう。エリーも含め学校でトップクラスの美少女が揃っているのだから。

 スタイルもトキオ曰く悩殺ものな3人が揃ってるからなぁ。


 その3人がこちらにやってくる。

 またセイラが余計なことをしてエリーに迷惑をかけたか?

 エリーにはいろいろと迷惑をかけてるから、何かで礼をしなければと常々思っているんだけど。


「ヤマト、遊びに来た」

「どうした?珍しいな?」

「転校生さんを私も見たかったのでセイラさんに連れてきてもらいました」

「エリーにしては珍しいな。そんな情報はとっくに画像付きで手に入れてるだろうに」

「メタバースでもきちんとお会いしておきたい人はいるんですよ。特にヤマトやセイラの近くにいる人は」

「こちらとしては助かるけど」

「ヤマト、何だそれは?」


 エリーは一応お嬢様というだけあって友人でも付き合う人に関してチェックが入る。

 別に平民だのという話ではないが、下心があって近づいてくるのかどうかは確認が入っている。下心についても恋愛的な部分はエリー自身に任されてはいるが。

 一応その関係で、友達になっている俺やセイラ経由で近づく人間もチェック対象となっているため、俺達の安否も概ね補償されていることになる。


「友達付き合いも慎重にしなきゃいけない人がいるんだよ。特にトキオは慎重に見極めなきゃいけないやつだって事だ」

「何だそりゃ。俺は何もしてないぞ」

「いろいろと妄想を膨らませているお前は、娘をもつ親御さんには注意しなければいけない危険人物なんだよ」

「ひでぇ」

「「「「「あははは」」」」」


 実際はそんな対象ではなかったけどな。


「アリーシャの方はクラスメイトに囲まれてて大丈夫だったか?」

「うん、大丈夫だよ。でも、もうちょっと静かにして欲しいかな。あんまり囲まれすぎるのも困るね」

「分かった。ほどほどにしておくようにみんなに通達しておくよ。

 でも転校生なんて普通ないからな。どうしても珍しいし、アリーシャみたいな子が来れば男が放っておかないから仕方がない。

 特にトキオ、こいつには注意しておいた方がいい」

「ヤマト、俺は紳士だぞ。なぁ?ダグ」

「そうか?昨日もセイラさんの……」

「うわぁ、止めろ。ダグ」


 まあ、ちょっと品がないところもあるけどトキオは面白いやつなんだけどな。

 それが女子に分かるかは知らないけど。




アリーシャSide

 『アリーシャみたいな子が来れば男が放っておかない』だって、そんなこと言われたことないよ。

 私は向こうだと普通だったし、お世辞ってやつなのかな?

 でも、ヤマトに言われると嬉しいね。


 この後、ヤマトが学校の中を案内してくれるって。

 メタバースだから校内の案内図にアクセスすれば問題は無いんだけど、静かな方がいいって言ったから連れ出してくれるみたい。

 セイラやエリー、ヤマトの友達のトキオとダグラスも一緒だけど、このくらいなら大丈夫。


 特別教室や図書館を案内してくれた。この辺はいずれ来るだろうし、案内を見れば簡単に行ける。

 その後、屋上に上がって休憩する事にした。


「リアルだと見れない風景だ。リアルと同じだと言うことだけど上れないんだよな」

「そうだよな。でもここは静かだからゆっくり出来る」


 やっぱり私のことを考えて連れてきてくれたのかな?

 それなら嬉しいよ。




ヤマトSide

 アリーシャを俺が面倒を見るように、と先生に言われてることをいいことに、教室から連れ出し屋上に来た。

 ここはあまり人が来ない穴場なのでちょうどいいだろう。作られたメタバースで遠くが見えたって大して面白く無いからな。

 リアルならこういう所は人気スポットなんだそうだ。


「ここならゆっくり話せるだろう?エリーもトキオも聞きたいことがあるならゆっくり話せばいい」

「そうですね。教室だと回りの人が気になりますから、ゆっくり話しにくいですね」

「俺はお近付きになれればそんなに話はないけどな」

「まぁ、ゆっくりしよう」


 ダグは彼女もいるから積極的に話はせず、聞き手に回っているようだ。それでも要所要所で質問をしてフォローしていた。よく出来たやつだよな。

 セイラはぼぉーっと聞いてるだけ。昨日大体聞いていたし、回りの人がいないここでのんびりしたいのであろう。


 アリーシャも知り合いが増えたし、学校生活もなんとかなるだろう

 最悪俺がフォローに入ればいいし、元々ここに興味があって来たんだからなんとかなるか。

 他の人達とはまたゆっくり仲良くなればいいかな。



 そんな感じでみんな午後の授業を受けず、話し続けた。

 その代わりしばらくの期間午後の授業は長く受ける事になり、E.G.G.に参加する時間が短くなってしまった。

 まぁ、いいか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る