第005話 引っ越し 新たなお隣さん

 補給部隊襲撃のミッションを終えて数日、いつものようにセイラの家で面倒を見ていた。

 夕飯を作っていたら、マイケルさんが仕事を早く切り上げたらしくダイニングに現れた。


「ヤマトくん、久しぶり。

 知ってる?ヤマトくんの隣が埋まるらしいよ」

「引っ越してくるんですか。どんな人ですかね?」

「そこまでは聞いてないけどね。良い人だといいね」

「そうですね。セイラみたいに面倒なのでないといいですね」

「……ごめん」


 セイラは確かに面倒だけど完全に嫌なわけではない。自分の調理技術などのスキルアップに繋がるから。

 その点では自分にプラスになったから。

 まぁ、それだけで何年も面倒を見ていられるかと言われれば否ではある。

 一応可愛いと思っているから面倒を見てやれている、妹分として……今のところは恋愛感情はない。


 何にせよ、引っ越してくるお隣さんがどういった人かは分からないのか。

 家族構成が分かっても性格までは分からないしな。


「ヤマト、可愛い子がいるといいね?」

「それはどういう意味で?」

「私と二人、ハーレムだよ?」

「それはセイラが俺にいろいろとしてくれるのであればハーレムかもしれないが、現状俺がお前に色々してやってる以上ハーレムではない」

「ぷーー」


 ちゃんとした子なら大歓迎だが、セイラのようなのだったらお先真っ暗という感じだ。俺が引っ越したい。

 とにかく引っ越してくるのを待つしか無い。




 数日後、お隣が引っ越してきたらしい。

 今の世の中どこからでも大抵の仕事は出来るから、引っ越し自体する事はあまりない。

 結婚、離婚、独立など人生の節目に住まいを替えるくらい。

 それ以外は趣味で住む所を替える人もいる。どこどこの地域が好きとか言って。

 日本なんかは割と引っ越し先としては多い。アニメの聖地巡りとか神社仏閣に実際に行きたい人が越してくる率が高い。

 お隣さんはどうなんだろう?


 ピンポーーンピンポーーン


 誰か来たみたいだ。

 昼食を準備しているのでセイラが来る予定だが、それはまだ後のはず。

 玄関に出ると金髪碧眼の大人の男女と近い歳くらいの女の子がいた。両親とその子供だろう。


「初めまして、隣に引っ越してきた美瀬です。よろしくお願いします。

 私はアムロです。こちらは妻のアンと娘のアリーシャです」

「ご丁寧にありがとうございます。両国ヤマトです。

 両親は仕事でいろんな所を飛び回っているので今いません」

「そうですか。ではご両親が戻られた時にまたご挨拶に来ますね」

「分かりました」


 いい人そうだ。でも、うちの両親は料理人として売れてるから、いつ帰ってくるか分かりませんけどね。

 帰って来たら両親にも都合を付けてもらおう。少しぐらいは長く家にいてくれるよね?


「そうだ、引っ越しの片付けでお忙しいですよね?お昼を食べて行きませんか?」

「いいんですか?」

「ちょうど隣のやつのも準備してたので、そんなに手間ではありませんから。ナポリタンですけど」

「ナポリタンですか?日本で独自に作られたパスタ料理ですよね?嬉しいです」

「じゃあ、中に入ってちょっと待っていて下さいね」


 リビングに通してお茶を出す。

 パスタはもう茹でてあるものを準備してあるので、追加で解凍すればいい。

 セイラに連絡を入れてこちらに来るように伝えた。とにかくきちんとした格好で来るようにと、しっかり。


 ソーセージや玉ねぎなど具材を炒め、ケチャップや自家製のトマトソース、極少量のタバスコを入れて混ぜ、パスタを入れて絡めれば完成。

 それを皿に綺麗に盛り付けた。

 その頃にセイラが来たので、紹介しておく。


「この子は、そちらの反対隣の晴海さんの娘のセイラです。僕と同い年で学生です」

「……よろしく」

「お前、もうちょっとちゃんと挨拶しろよ」


 セイラは何かむくれてた。ご近所さんになるんだからちゃんと挨拶しろよ。


「セイラさんですか。ガンダムですね?」

「あなた、そんなことを言っても分かりませんよ?」

「随分古典なロボットアニメですね?」

「おー、若いのによく知ってますね。嬉しいです」

「ロボットものは好きなので」


 マニアだな、名前も「アムロ」だし。

 親も好きだったのかな?じゃなきゃそんな名前付けないか。


 あまり話し込んでるとせっかくのナポリタンも冷めてしまうので、先に食べることにした。

 料理はいつも通りの出来だった。隣のセイラも満足して食べている。

 向かいの美瀬さん家族も満足しているようだ。


「これが引っ越し蕎麦ですか」

「違います。引っ越し蕎麦は引っ越してきた側が振る舞うものですから」

「でも、美味しいですね。調理されていたようですが、レンジで温めるだけじゃないんですか?」

「ヤマトはちゃんと料理をしてるよ!美味しいんだから」

「おい、セイラ。うちは両親が料理人なんで最低限の事は仕込まれてるんで」

「いいご両親だね。うちの娘はレンジで温めるしか出来ないよ」

「パパ、恥ずかしいんだけど」


 ああ、レンジを使って温めることが出来るのか。素晴らしい。

 うちの隣のポンコツはレンジすら使えないんだけど。


「すごいじゃないですか、レンジを使って温められるなんて」

「はぁ?レンジなんて普通使えるでしょ?そんなにすごいとか言われるようなもんじゃないわよ!」

「いえ、うちの隣にはそれすら使えないのがいますから。な?セイラ」

「ぷーー」


 良かった。これで2人も面倒を見なくて済む。

 なんて素晴らしい。


「ヤマトくん。すごく嬉しそうだね?」

「そりゃあもう。嬉しいです。もう1人面倒を見なければいけなくなったら、僕は引っ越しますよ」

「……なんか大変そうだね。うちの娘は多分大丈夫だよ」

「パパ、多分って何よ!!」


 この後は引っ越してきた理由とか以前住んでいたところの話を聞いた。

 住みやすい所に住んでいたようなんだけど、わざわざこっちに来る理由を聞くとやっぱり趣味のためだそうだ。

 所謂ヲタク趣味とそこから城好きになり、実物を気楽に観に行きたいからだそうだ。

 メタバースでは味気ないと言ってた。


「アリーシャさんは元の学校に通うんですよね?」

「アリーシャでいいよ。こっちの学校に通うよ。せっかく日本に来たんだからここの人とコミュニケーション取りたいの」

「そうなんだ。じゃあ同じ学校になるわけか。学年は?」

「一緒みたいです。同じクラスになれると助かるんだけど」

「セイラのクラスだとエリーって子を頼った方が良い。セイラは頼りにならない」

「その分ヤマトがいてくれるから大丈夫」

「お前なぁ。自分でどうにか出来るようになれよ」


 同じ学校に来るのか。アリーシャなら人気が出そうだな、美少女だし。

 トキオが好きそうなタイプだな。

 セイラと同じクラスならエリーと一緒にセイラの面倒を見てくれるかな。

 そうすれば心配事が減るんだが。


「じゃあ、明日は一緒に行きますか」

「お願いします」

「こいつの面倒を見た後行くから連絡するよ。8時30分頃かな」

「これ、私の連絡先」


 連絡用のデバイスでお互いの連絡先を交換した。

 セイラがそれを見て頬膨らませてむくれてた。

 必要なんだから仕方がないんだよ。


「ヤマトくん、セイラさん。うちのアリーシャをよろしくね」

「よろしくね、ヤマト、セイラ」

「はい、それじゃあ明日」


 アムロさんたちも忙しいだろうから、ここらで話を終わらせた。

 話してたけどいい人達みたいだった。趣味に結構傾倒してる人なのは面白いかな。




アリーシャSide

 セイラは綺麗だったな、清楚なお嬢様って感じで。

 日本の子ってあんな子が多いのかな?

 そうならここに来れば私も同じようになれるかな?


 ヤマトは料理も出来て、セイラの面倒も見ていて、セイラへの言葉使いがよくないけど黒い執事みたい。

 私も欲しいな。

 でも、そんなに大変なのかな?セイラの面倒を見るの。




セイラSide

 アリーシャ、美少女だった。

 ヤマトが連絡先を交換してたけど、私から乗り換えたりするつもり?

 やだなぁ。

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