第004話 出会い

 学校からそのままE.G.G.のラウンジに来ている。

 これからミッションを確認して、フィールドに出るところだ。


 ミッションは王国の中央から発令され、所属しているプレーヤーが確認できる。

 その中で好きなミッションを選択できるが、目安の戦闘レベルが表示されている。

 その戦闘レベルに満たなくても参加は可能だけど、強制しているわけではないので大破しても自己責任。

 一応同じミッションに参加する他のプレーヤーに余力があれば助けてくれるが、広いフィールドで助けてもらえるかも運次第。


 俺は補給線を断つミッションに参加することにした。参加の申し込みをしておく。

 他にも参加するプレーヤーが多数いるが、俺は基本的にソロだから協調して戦闘することはない。

 目に付いた弱い部分のフォローに回ることはあるかもしれないが、単独で攻めることにしている。




 ミッション開始時間までしばらく時間があるからラウンジで他のミッションの状況を見ておく。

 近くのミッションの場合、敵側が勝った時別のミッションにそのまま突入してくることもある。


「ねぇねぇ、さっきエッダの補給線を断つミッションに参加を申し込んでましたよね?」


 なんだ?どこの誰だろう?見たことがあるようなないような?

 緋色の袴をはいた巫女服のような格好のプレーヤーだった。

 この間、あいつにちょっかいをかけていたような気がするが。


「そうだけど?それがどうかした?」

「私も参加するんだけど一緒にやりませんか?始めてそんなに経ってないから、大人数でやるミッションに慣れてないのですよ」

「悪いけど、俺はソロでやってるから。他のチームに頼んでくれ」

「ソロで参戦出来るんですか?」

「出来るがそれなりに戦闘レベルと経験が無いと大抵大破するぞ?どこかに入れてもらう方がいい。

 まぁ、いきなりは厳しいかもしれないが」

「探してみる。ありがとうございます」


 緋色の袴のプレーヤーはそばから離れていったが、いきなり参加したいと言ってもまず無理だろうと思う。

 こういうのは連携が問題だ。いきなり連携が取れるわけもなく、別の機会に連携の練習をしてミッションに参加となるはずだ。


 いくつかのチームに声をかけているようだが、やはり断られているようだ。

 このままソロで参加しなければいいが……




 さて、そろそろミッション開始の時間だ。

 他のチームとは離れた位置に自分のアーマードギア クサナギが出現する。

 この先にある街道をエッダの補給部隊が通るから、それを襲撃するのが今回のミッションだ。

 当然防衛しているアーマードギアもいるから、それを先に潰すか、補給部隊の車両を先に潰すか、それは参加したプレーヤーに任されている。

 参加しているチームはチーム内で意思統一しているのでどうするか決まっているだろう。みんなで協調体制を取ろうというチームはなかったから、どうなっているのかは知らない。

 俺は敵のアーマードギアを潰すつもりだ。ある意味他の奴らの代わりに囮役をやる事になる。

 馴染みのプレーヤーはこちらの行動は知っているから、それに合わせて作戦を練っているだろう。


 <<Mission Start>>


 ミッションがスタートした。エッダ側はこのミッションのことは知らないはず。

 突然、こちら側の攻撃を食らうことになる。知っていればしっかりとした防衛体制を整えているだろう。


 クサナギを一気にホバーリングで加速させ、補給部隊の先頭に躍り出る。

 まずは車輌の先頭にグレネードを撃ち込む。

 車輌が止まれば、防衛しているアーマードギアも大きく動けないだろう。

 一番近くにいる動きの止まったアーマードギアの脚部を狙ってアサルトライフルを撃ち込む。

 まだ慣れていないプレーヤーだったのだろう、あっさり脚部に命中した。すぐに壊れはしないが動きが悪くなる。

 後はもう狙い放題だ。

 接近するまでそのまま脚部を狙い、最後にパイルバンカーの一突きで機能停止させる。

 その機体を補給部隊の先頭車輌の前に放り出せば、車輌はすぐには動けなくなる。他のチームが補給部隊の車輌を潰しにかかるだろう。


 さあ、次を狙いに行こう。

 ……と思った矢先に向こうに目立つ機体がちらつく。白と赤の女性型のアーマードギア。

 多分声をかけてきたあのプレーヤーだろう。着ていたスーツと同じだ。

 やはり、戦闘レベルも経験も低いのが敵機にバレているようで狙われている。既に結構ダメージを受けているのが分かる。

 でも、他のプレーヤーもフォローしてやる余裕はなさそうだ。


 こちらとしては囮役になってもらってるうちに、あの敵機を墜とそうか。




静御前Side

 どうしよう……あの人の言った通りだった。

 他のチームはやっぱりいきなり連携取れないから無理って言われた。

 でも、経験を稼ぎたいからソロで参加したけど甘かった。

 補給部隊の護衛くらい倒せると思ったのに。

 もう、ダメージが限界に近くなってきてるよ、どうしよう?


  ダシュダシュダシュ


 ??やられてない?




タケルSide

 ちょうどいい的だ。

 アサルトライフルを連射した。

 敵機はこちらに一切注意していなかったため全弾命中した。

 敵機のアサルトライフルに着弾し破裂し、右腕関節、頭部カメラアイも破壊した。

 そのまま背後に一気に接近して、シールドバインダーのパイルバンカーで背後からコクピットを貫いた。


 次の瞬間、敵機は力を失い前へ倒れた……

 これで2機目。補給部隊の車輌も停止させたし十分な戦果だ。

 後は、味方のフォローに向かうか。


『待って。助けてくれてありがとうございます』

『いや、助けていないが。そのままちょうどいい囮役になってもらっていただけだ。

 楽に墜とせて助かったよ。じゃあな』


 次のターゲットを探す……

 ………………

 …………

 ……



 その後は2対1の局面になるように、こっちで戦場をコントロールした。

 順に墜としていけばもうこちらの勝ちペース。

 最後に補給物資をぶん取ればミッション終了だ。


 << Mission End >>


 戦闘を終え、ラウンジで休憩する。


「ふぅ、疲れた。最終的に6機墜とせた。1日の戦果としては極上か」

「あのぉ……」

「何?」

「先程は助けてくれて、ありがとうございます」

「だから、助けてないって。君を囮にして敵を倒しただけだ。

 楽をさせてもらったって言っただろ?」

「それでもいいんです。こちらが助けてもらった事には変わりがないので」


 ったく、そんなのはどうでもいいんだよ。

 こっちは助けるつもりで助けたわけじゃないんだよ。そっちが運良く助かっただけ。恩に着せるつもりはないし、恩を返さないとと思う必要もない。

 放っといてくれればいいんだ。


 結局助けた助けてないの押し問答になり、いつまでもそばから離れてくれなかった。

 そうしているとセイラからのメッセージが届いた。

 いつも通り「夕飯、まだ?」という内容だ。

 ミッションはクリアしたし、今日のノルマは達成したということで落ちよう。


「悪いけどこっちはもう落ちるよ。そっちが運良く助かっただけで助けたつもりはないから、特に気にする必要はない。

 こっちはソロでやりたいんだから構わないでくれ。

 じゃあな」


 相手の返事も聞かずにゲームから落ちた。




静御前Side

 何だろう?吊り橋効果ってやつ?

 あのプレーヤーが気になって仕方がないよぉ。

 ああいう素っ気ないのが好きだったっけ?

 プレーヤーの名前は分からないけど、アーマードギアの名前は「クサナギ」って覚えたから。


 次も会えるかな?

 あっ、こっちの名前を名乗ってないんだった。

 次会ったらちゃんと自己紹介しようっと。

 出来れば私と組んで欲しいな。

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