第6話 先輩のアトリエ訪問

 今日は、忍田先輩はダサメガネをかけていた。

 内心、少し安心したかも。素顔を見たら、またドキドキしてしまうから。

 先輩をわたしの家に連れて行く。鼻歌が自然と湧いてきて、高校生でなければスキップくらいはできそう。

 わたしは中学生くらいまで、嬉しいことがあると自然とスキップしていた。

 家の中に入ると、おばあちゃんがフライパンを持って現れて、先輩は殴られるのかとビビってる。先輩、冗談だから安心しなよ。

 お母さんに途中まで案内されて、その後、奥のアトリエの和室まではおばあちゃんに案内されてる。

 でも、わたしの計算外のことが起きた。

「あの絵は?」

 先輩が指さしてるのは、わたしの絵!

 しかも、おばあちゃんが、先輩にいらぬ情報を吹き込んでいる。

「スミレ色なんだよ。あの子がそう言ってた。昨日会った誰かさんにインスパイアされて、今朝から熱心にアトリエにこもってたんだよ」

 やめて! やめてよおばあちゃん。

 おばあちゃんが去ったあと、わたしは半泣きになって、先輩に弁解した。

「嫌ですよね。こんな絵。先輩にもっといい絵を見せたかったな」

 許してもらいたいわけじゃない。

「じゃあ、この『スミレ色』って、俺なんだ」

 さすが、生徒会長をしてるだけある。忍田先輩は終始、落ち着いた表情で、わたしが描いた「わけのわからない絵」を観察していた。

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