たとえ1人ぼっちになっても

「キミたち、予定通り空くんを連れてきた」

「「「わぁー!空様くんだー!生の空様くん、かわいい〜!」」」


(ルナ、ちゃんといるかな……?)



空が会場へ入る少し前


「空くんは、暁学園の、鬼神夜行の大スターだ、だからこの学園でもファンは多いし、その分アンチも多い、だからこそ空くんとイチャつくのは控えたほうがいいだろう」


男装少女はこの学園での空について説明している

もちろん、ルナと空が一緒にいるとこをみられるとまずいと踏んだ上で、人目につかないところで話している


「空って結構すごかったんだね……」

「おや?キミ、まさか空くんのことを知らなかったのかい?意外だね……学生アイドルなら誰でも知ってる存在だと思ってたのだが……」


ルナは空のことについて男装少女からみっちり説明を受ける

暁学園のこと、鬼神夜行のこと、そしてアイドルとしての砕月空のこと


「空くんのイノスタのフォロワー数は25万、青い鳥のフォロワー数は30万人です、もちろん個人で、ですよ?」

「そ、空……?これ、ほんと……?」


(空ってすごいわね……あたしと離れている時にこれ……才能とか努力とかがすごすぎるわ)


イノスタ、青い鳥とは世界的に使われているSNSのことである

ルナは目を輝かせながら空のことを凝視する

空は思わずルナから目線を逸らす


「……」

「や、やっぱり本当なんだっ!」

「まだまだありますよ、動画投稿サイトでは……ロングだと20万、ショートの方だと10万人ですね、もちろん個人で、ですよ」

「……」


(個人で、なんだよね……3人みんなでやっているアカウントの方がたくさん、フォロワーもファンもいるもん……ボクは下手くそだから、大切な仲間を、プロデューサーを失って1人ぼっちになったボクは、もう……)


空は下を向く

実は空はかなり自己肯定感が低い

自分のダンスや歌を上手いと思ったことがないし、ファンも自分のファンなんていないと思っている

そして今、仲間やプロデューサーを失って1人ぼっち

とてつもなく心細いのだ


「まぁ、空くんは実はすごいんです、ということで、あなたがいじめられないようにするために、先に会場に入ってもらいます」


ルナは空と一緒に会場に入りたかったが、空もいじめられるかもしれないと聞き、渋々1人で入っていった



「空くん、さっきの女の子はキミの彼女さんかな?」

「ち、ちがう……」

「うん、わかった、それじゃあ入るね」


男装少女は空の手を掴んで歓迎会の会場へと連れ込んだ


「キミたち、予定通り空くんを連れてきた」

「「「わぁー!空様くんだー!生の空様くん、かわいいー!」」」


(ルナ、ちゃんといるかな……?)


空が入ってきた途端、会場が歓声に包まれる

最も、空はそんなの慣れっこで、あんま気にせずにルナがいるかを気にしていたのだが

男装少女は空に向かってこう言った


「空くん?たとえキミが1人ぼっちになってしまった、離れてしまった人もたくさんいるとしても、キミを愛するファンはたくさんいるさ、だから自分に自信を持つんだ、今の空くんは、見ててこっちが辛いよ……」


男装少女が涙目で、上目遣いで空に訴えかけてきた

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