プロローグ 空の覚悟

 とある寮の一室

 静かな雰囲気が漂う中、ベッドの上で叫び散らかしている少年がいた


「うわぁぁぁぁ!ルナに抱きついて泣き喚いちゃった!やっちゃった!」


 とても整っている中性的な顔を真っ赤にしながらブレザーを脱いだ姿でシャツにシワが付くのを気にせずベッドの上で寝転びながらあっちへ行ったりこっちへ行ったりしてる少年の名は砕月空

 思い出すのは昨夜の出来事

 ルナのまっすぐな瞳、包容力、優しさや甘さに心を溶かされ、泣き喚いてしまった


「る、ルナの前で、泣き喚く?こ、このボクが?」


 ほとんど無意識で、限界を迎えていた空の精神だ

 胸の奥から湧き上がっていた感情を、抑えきれずにルナの前で爆発してしまった

 好きな子の前で弱々しい姿を見せてしまった

 空の真紅の瞳のように、顔はどんどん赤くなっていく


「それにしても、ルナの体、柔らかかった……ルナ、ほんとにごめん……」


 空はスマホでルナの画像を見る

 ルナと一緒にプール行ったときに撮った、ルナのビキニ姿の写真

 空はそれを見ると、タブレットで何かの入力を始めた


「……この時の……一緒にプール行ったとき、恥ずかしがってボクにしかビキニ姿見せなかったよね……ボクたくさん、抱きついてきたよね……ごめん、ルナ……」


 およそ10分のあいだ、空は入力を続けていた


「ルナがアイドルになって、成功する確率……運動神経はいい、なんならダンスの全国大会に出ている、歌は未知数だけど……この前カラオケ行ったときに95点出してたから……うん、オリ曲でどうなるかだよね……顔は……最高……至高……神……」


 他のトップアイドル、そしてルナを見比べて、ルナの特徴を洗っていく

 強み、弱み、そしてそれを活かすパフォーマンス

 そんなことをしている中、空は突然とあることを思い浮かべた


(いつか、ボクはルナと……)


 ルナとの結婚生活を思い描いていた

 でも、ルナが自分を好きとは限らない

 なんなら、好きじゃない可能性の方が高い

 空の趣味はアニメやラノベ鑑賞なので、幼馴染は負けヒロインになることが多い

 ということを知っている


(ボクは男だけど、負けちゃうのかな?ルナがボク以外の男に、寝取られて……ダメだ!想像しちゃ……泣きたくなる……)


 それを知った途端、空はルナが他の男に取られないようにしければ、ルナを自分のものにしなければ、という気持ちになった

 空にはルナとずっとに一緒にいて、誰よりもルナのことを愛し、知っているという自信がある


(そうだ!いっそのことボクだって……!)


 空はあることをしようと思いついた


(茨の道になるかもしれない、あそこは男でも大丈夫なはず……ボクは、ルナのことが大好きなんだっ!)


 空の真紅の目と心に、さらに赤く熱い炎が灯った

 それは空にとって、久方ぶりの情熱、心を突き動かすこととなった



 もう空は止まれない

 この決断が、どんな結果を招いたとしても

 空は止まることができない

 愛する幼馴染のために……

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