7
青痣の件から1週間後のことだった。
深夜2時、私と雅人がベッドで寝ていた。すると、誰かに肩を揺さぶられた。私は驚いて目を覚ました。
そこには、健が立っていた。
「どうしたの、こんな遅くに」
「痒くて眠れない」
私は、リモコンで電気をつけた。蛍光灯の光が部屋中に広がった。
「痒いてどこが?」
「身体全部が」というと、健は右腕のパジャマの袖を捲った。すると、腕に多くの引っ掻き傷があり、とこどころ血が滲んでいた。
私は、健のパジャマを脱がした。すると、全身に引っ掻き傷があった。唖然とした。
「どうしたの?」
「だから、痒いだって」
「自分でかいたの?」
「そうだよ。痒いから」
雅人が目を覚ました。「どうしたいったい?」と雅人は上半身裸で掻きむしった肌をしている健を見た。「健、どうした?」
「身体中が痒いん」
これは、アトピーかアレルギーに違いないと思った。
「ねえ、今日はもう遅いから朝一番に病院に行くね。我慢できる?」
「分からない」
「そう、でも我慢してね。病院に行けば必ずよくなるから」
*
私は健を引き連れて朝イチで皮膚科に向かった。待合室は混んでいた。その間、何度も帰るは身体中をかいていた。
「ダメよ。かいちゃ。もっと痒くなるから」
「でも、痒くてたまらないだもん」
「いいから、あと少しだからね。お医者さんがなんとかしてくれる」
「うん、我慢してみる」
それから1時間待たされた。私たちの番になり診察室へ入った。
医者は20代の若者で、新卒1年目のような印象を受けた。どことなく頼りなさそうな感じがした。本当にこの医者で大丈夫かと思った。
「今日はどうしましたか?」
「息子が痒いと言って、身体中を掻きむしっています」
「そうですか。じゃあ、君、えっと、健くん。Tシャツを脱いでくれるかな?」
健はTシャツを脱いだ。全身掻きむしった跡があった。
「お母さん。健くんにアレルギーなどありますか?」
「いいえ。私の知っている限りでは」
「そうですか。健くん。どのくらい痒い?」
「すごく痒い」
「いつから痒いのかな?」
「昨日の夜から」
「そうですか。お母さん。昨日の晩御飯はなんでしたか?」
「麻婆豆腐です」
「そうですか」というと、医者はThinkPadのノートパソコンのキーを叩いた。
「それで、家には何か動物は飼っていますか?」
「犬を飼っています」
「なるほど、最近変わったことはありますか?何か生活の変化などは?」
「最近、引っ越してきました」
「なるほど、新居ですか?」
「はい」
「他に変わったことは?」
「そうですね。そうだ、少し前に、何箇所かこの子の体に青痣が出来ていました」
「青痣ですか。なるほど」と医者が言うと、何処か不思議そうな表情をしていた。
「親戚にアトピーを患っていた方はいましたか?」
「いいえ」
「先生、健はなんの病気なのでしょうか?」
「おそらくは、じんましん、汗疹、アトピーでしょう。もしくは、アレルギーかと考えられます。最近、転校したりしてストレスを感じているのかもしれなし、犬の毛が原因かもしれない。他にも新居で使われていた溶剤の影響も考えられます」
「そうですか。それで治りそうですか?」
「現段階では、まだなんとも言えません。一応、痒み止めの塗り薬と飲み薬を出しておきます。それと、来週また来てください。そうだアレルギーをチェックするために採血します。よろしいですか?」
「はい」
「採血って?」と健が云った。
「これから、健くんの血を抜くことだよ」
「血を抜くって、どうやって?」
「注射をするんだ。大丈夫。そんなに痛くないから」
「嫌だよ」
「健。我慢しなさい」
健は注射を見た瞬間に泣き喚いた。
「大丈夫よ。すぐに終わるから」と40代の看護師がいうと、健の腕の静脈に針を刺して注射器に真っ赤な血が流れ込んだ。
「ほら、すぐに終わったでしょ?」
「うん」健は強がりを云っているのが私には分かった。
*
雅人が帰ってきたのは22時だった。私は、作っていた料理を電子レンジで温め彼に出した。
「それで、健の病気はなんだって?」
「まだ、分からないけど、じんましんか、アトピーか、アレルギーですって。原因は血液検査待ちだけど、自分で調べたら、環境の変化、ストレス、ダニ、なんかでなるみたいよ」
「そうか。確かに、急に学校を転校させたのが悪かったのかもしれないな。それかジョンのせいか?」
「まあ、塗り薬と飲み薬を飲んだら健も痒みが楽になったって云っていたし、ストレスかもね」
「なるほどね。そうだ、青痣もストレスの一種だったのかな?」
「かもしれない」
「だとしたら虐めはなかったかもしれないな」
「そうかもね」
「まあ、どちらにしろ、痒みは今のところ治ったんだろ?あまり気にしないほうがいいかも」
「そうね。あとはアレルギーかもね。雅人はアレルギーある?」
「いや、花粉症以外ないけど、明美は?」
「私も無いよ。もしかするとあるけど気づいて無いだけかもしれないけど」
「まあ、来週まで様子見だな」
「そうね」
もし、健にアトピー、じんましん、アレルギー以外の病気があったらどうしようかと思った。もっと、酷い病気の前兆だったら。でも、とりあえずは来週まで待とう。あまり心配しすぎるのも体に悪いから。
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