仕事がひと段落ついて、自転車で健と一緒に近所のスーパーに出かけた。今日はひき肉が安かったので、ピーマンの肉詰めを作る事にした。

 午後8時。雅人は今日も残業で遅くなる為、先に雅人と一緒にピーマンの肉詰めを食べた。

「どう?おいしい?」

「うん、美味しい」

 健はピーマンをやっと食べられるようになった。去年まではピーマンが苦手でいっさい口にしなかったが、ピーマンの肉詰めを作り出してから、やっと食わず嫌いを克服した。このまま、健が嫌いな、大葉、セロリ、アスパラガス、鯖、鯵、なども食べてほしいが、それは欲張りすぎかもしれない。そういう自分も嫌いな食べ物がある。キノコとホルモンとウナギだ。この3食を見るだけでも不快に思う。なので、多少の好き嫌いは仕方ないのかもしれない。それに、健は他の子供に比べれば野菜を食べるほうだ。あまり気にしなくても大丈夫なはずだ。


   *


 ご飯を食べた後、健と一緒に近所の公園へジョンを散歩に連れて行った。夜は涼しいせいか、昼間より元気がよく、何度もリードを放しそうになるくらいジョンは動き回った。

 家に着いたのは20時のことだった。健と一緒にお風呂に入った。痣の具合を確かめる為だ。

 痣は、発見した時から比べるとだいぶ良くなって消えかかっている。少なくても、雅人のせいではなさそうだ。やはり、学校で虐めに遭っていかもしれない。

 健がシャワーを浴び終わると浴槽に浸かった。

「ねえ、ママ。いつまで一緒にお風呂に入るつもり?」

「なんで?」

「恥ずかしいよ。友達でママと一緒にお風呂に入っている奴なんていないよ」

「そうなの。分かった。考えとく」

 確かに、もう7歳だ。母親と一緒にお風呂に入るのは恥ずかしい年頃に突入している。つい最近まで、幼稚園児の頃は、私が一緒じゃないとお風呂に入らないと言っていた事を思い出した。そう考えると子供の成長は早い。

 お風呂から出ると、タオルで健の背中を拭いた。すると、右肩に5センチほどの長さの太い剛毛が目に飛び込んできた。

 なんで、こんなところに剛毛が生えているのだろう?しかも7歳の子供が。

 私はその剛毛に触った。剛毛は太くて硬かった。試しに引っこ抜く事にした。剛毛を引っ張ると、反発するかのように固く、取れなかった。

「痛いよ。何するんだよ。ママ」

「ごめん。健の背中に剛毛が生えていたから」

「剛毛?剛毛って何?」

「硬い毛のことだよ」

「僕の背中にそんなの生えていたんだ。それって普通のことなの?」

「まあ、たまにそう言う人がいる見たいだから気にしなくて大丈夫よ」

「そうなのだ。分かった」

 それにしても、硬い剛毛だった。まるで金属のようだった。だが、たいして気にしなかった。健に言ったように変わった場所に毛が生えることなどよくあることだ。それに、痣が消えかかっていて安心した。


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