第3話 ツチスナ・お月見

真夏のピークがようやく過ぎた。

久しぶりに涼しいと感じられる夜風に誘われるように、ツチノコとスナネコは夜のお散歩に出かける。


隣を歩くスナネコの顔をツチノコはちらと見る。

その目線に気づいたスナネコが、ツチノコに微笑みかけた。


「どうしたんですか?」


すっかり夜だというのに、大きな満月の灯りに照らされて、互いの顔がよく見えた。

ツチノコを見るスナネコの瞳が、きらりと輝く。

ツチノコは目を逸らした。


「いや……今夜は綺麗だなって、月が」

「綺麗ですよね、お月様」



無理やり逸らした話題は、それきり尽きた。

二人で黙って月を見上げている。

中秋の風に冷やされた指が、他人の温もりを求めて重なる。


暑過ぎてくっつくことさえ憚られた季節は、すでに終わりつつあった。


「少し寒いので、帰りましょう」

「そうだな」


 手を繋いで帰る二人の影が、夜の砂漠に長く伸びていた。

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