最弱スキル:ダウジングは激レア装備を探知できるチートだったので、Sランク美少女パーティーに同行しながら最強装備を整えるお手伝いをしようと思う。
第2話.Sランクのダウジング装備で探索効率は上がったが…探索そのものが過酷すぎる件
第2話.Sランクのダウジング装備で探索効率は上がったが…探索そのものが過酷すぎる件
「はあっはあっ......っふう......。なんとか回収できたけど、帰り道が地獄すぎる......」
峡谷のとてつもなく狭い足場を渡り歩き、ようやく見つけたスーパーレアアイテム。
新たなダウジング装備であるマグネットバーを使い、周辺を探っていたところ、ビビっと体を引っ張られるような感覚があった。
「ここを真っ直ぐ行けば見つかりそう」というシグナルが示されたのだが、その場所は峡谷の狭すぎる足場を進んだ先だった。
中間地点まで進んだところ、小さな宝箱のようなものを目視できたため、命懸けで取りに行った。
「まともに戦えない以上、これしか食っていける手段はない......」
ようやく宝箱を回収できたが、ここから無事帰れなければ悲惨な死を迎えることになる。
一歩一歩、慎重に足を踏み入れるたびに、枯れ葉を踏みつけるグシャっという音がして、心臓がドクドク脈打つ。
「やばいっっ......死ぬっっ......神様......」
岩壁に張り付きながら、目を閉じて無事を祈る。
「俺は生き残ってこれを売る......そして大金を稼ぐ......」
一歩、また一歩と進み続け、ようやく目を開くと…広い陸地に戻っていた。
「っしゃああ......! 生き延びたぞ俺は......!」
歓喜のあまり、周囲に誰かがいることを忘れて大声で叫んでしまったが…多分誰もいないよな......。
「あん?なんだあいつ......こんな危険地帯に1人で」
「ってかあいつ。すげえ高そうな宝箱持ってんだけど」
「......嘘だろ?」
あいつらは巷で有名なギルド荒らしの盗賊団メンバーじゃないか......?
身軽そうな薄手のフードを被り、軽快に動けそうなブーツを履いている。
俺がパーティーにいた頃、似たような風貌の奴らが冒険者ギルドで騒いだり、喧嘩をふっかけていたところを見かけたことがある。
「あーあ。大声出してボクお宝持ってまーすなんてアピールしちゃったらさあ、奪うしかないよなあ」
「はあい、ボクちゃーん。死にたくなきゃ、さっさとブツを寄越しやがれ......!」
2人とも、腰に巻いていたダガーナイフを手に取り、命がけで回収した宝を横取りしようとしている。
「くそっっ......俺も生き残るために......必死なんだよ......!」
全力の逃げ足でその場を去る。
「おいっっ、逃がすと思ったか......!」
「さっさと捕まえるぞ......って」
不意を突いて逃げ出した俺に向かって、咄嗟に走り出そうとするが、既に100mほどの距離を取っていた。
「なっ、なんだよあの逃げ足」
「閃光のような......とんでもねえ逃げ足だ......」
「数回瞬きしたら、もう追いつけねえ距離にいやがる......」
「くそ......これは諦めるしかねえか。おい小僧......!運が良かったな......!」
「その逃げ足と宝への執念に敬意を込めて、今回は見逃してやる......!次はねえからな......!」
なんとなく頭を下げた後、全速力で走り抜けた。
「っっふう......っはあ......ここまで来れば安心だろ......」
安全のため冒険者ギルドに戻り、盗賊被害に遭いかけたことを報告する。
そのまま椅子に腰かけて、一旦呼吸を整える。
「っふうう......よし、さっそく中身を確認するぞ......」
パカっと音を立てて、目の前に現れたのは......なんと100,000ゴールドほどの豪華アイテム......スカーレットルビーの指輪だった。
「っしゃあ......今日はマジで運が良いぞ......これで2週間くらいは何とかなりそうだ」
さっそく換金するために、ギルドの鑑定士に見てもらうことにした。
「すみません。これなんですけど......いくらくらいの買取ですかね?」
「ふむ......この指輪は買取表でも100,000は下らない代物です。ただし......傷無しの場合ですが」
「それってどういう......傷なんか一切ついてないと思いますけど」
「目立つ傷ではないですが......売買するうえでは気になるレベルの擦り傷が残っているようです......」
「え......マジか......見た感じ何もなさそうですけど…どうやって確認したんですか......?」
「まずはこのレンズで拡大してみて下さい」
手の平サイズのレンズを渡されたので、注意深く観察したところ、表面に薄い線のようなものがあった。
「もしくは、こちらの布手袋で、表面を触ってみて下さい」
布越しに表面全体を撫でてみると、確かに、極小だがヒビ割れのような擦り傷があった。
「お分かり頂けましたでしょうか。この程度の微細な傷でも、買取価格としては半額になりますので......50,000でしたら買取可能です」
「マジかよ......」
このような高級アクセサリーは上級貴族たちが買う品だと思われるが、傷ありだと一般のお客さんでも手が届くような絶妙な価格設定になるのだろうか。
「しかしこの傷......何も思いあたる節はないのですか?宝箱に保管されていたようですし、注意深く扱えば、まずこんな傷が出来ることはないと思うのですが......」
「......あっっ」
ついさっき盗賊に追われかけて走り回っていたのを思い出す。
恐らくその衝撃で、些細だけど致命的な傷が生じてしまったんだ…。
「まあ、売れないよりは全然有り難いですし......50,000ゴールドで買取します」
「かしこまりました。それではこちら50,000ゴールドです。布袋に詰めておきますね」
「ありがとうございます。確かに受けとりました」
内心ガッカリしながら売却を決意したが、それでも50,000ゴールドで買い取れたのは不幸中の幸いだった。
重量感のある布袋を片手で吊るし、さっそく冒険者ギルドの銀行にて40,000ゴールドを預ける。
そして手元に残した10,000ゴールドで、豪華な飯を食うことにした。
「ギルドの最高級メニューください!」
「あいよ......! たんぱく質100グラムの猛牛筋肉ステーキ、巨大人喰いガニのかにみそ、俊足フラッシュマグロの刺身、栄養満点のスーパーサラダ、糖質満点デブエットケーキ......残さず食いな!」
料理スキル持ちの筋骨隆々なおっさんが手慣れた感じで料理を完成させ、ウエイトレスのお姉さんがトレーを運んでくる。
「最高級のマッスルミートコースでえす......!ちなみにこれ、1人で食べきれますかね......?」
「何とか......いけると思います......」
テーブル一面が大量の皿で埋め尽くされ、とんでもないボリュームの料理が並んでいる。
「はああむ......うめえ......死にそうなくらいうめえ......むしゃむしゃむしゃ......」
食べ切れるか心配になるほどのボリュームだが、昨日から空腹で死にかけていたこともあり、ガツガツ夢中になって食っていたらいつの間にか完食していた。
「ああ......腹がパンッパンに膨らんでる。幸せで死にそう......」
本当に地獄の日々だったが、今日だけはダウジングをやってて良かったなと心の底から思えた。
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