最弱スキル:ダウジングは激レア装備を探知できるチートだったので、Sランク美少女パーティーに同行しながら最強装備を整えるお手伝いをしようと思う。

クレアチンパウダー

第1話.雑魚アイテムしか探知できないので、幼馴染パーティーから追い出されました

「あのさあ、アイテム見つけるだけだったら誰でも出来んだよ。なんだよその棒切れは」


 リーダーシップ気取りの自称最強剣士。


「確かにい、レアアイテムくらいならさあ、その辺にいるB以上のモンスター狩れば良いしねー」


 その取り巻きである金髪ギャルヒーラー。


「まあ、ギルドで1人ぼっちにさせるのも可哀想だったし、他に組んでくれる子もいなそうだったしね......」


 防御役のくせにガードがゆるそうな清楚ビッチ系ガーディアン。


「贔屓でパーティーインさせてやったけどさあ、何にも貢献してないじゃん。ただ棒を持ち歩いて、どこにあるかも分からんアイテムを探知できるだけって」


「特にBランク以上のクエストだとさあ、あんたが戦えないせいでゴールド稼ぎの効率落ちんだよなあ」


「ほんとそれ......。昔馴染みだから、せっかく数合わせでパーティー入れてあげたのに、結局何もできてないよね......」


 それぞれ畳み掛けるように俺に対して悪態をつく。


 俺はクラスの幼馴染たちと中世ファンタジー風PRGの世界に転移したのだが、スキル鑑定の際にダウジングという一風変わったスキルを授かった。


 具体的に何ができるかというと、レア以上のアイテムの在処が分かるということだけだ......。


「ぶっちゃけ、レア以上だとそれなりに売れるしさ、1人でアイテム拾いながら暮らせば良くね?」


「くす、それがお似合いっていうかー」


「ここ最近、ギルドにも有望な新人がたくさんいますので、その方に入って頂こうかと思っております」


「結局俺のパーティーに必要なのは実力だからさ。ってわけでまあ、新人くんを1人選んで採用ってことになりそうだわ」


「ま、あんたが役に立たなすぎたのが悪いっつーか」


「そうですねえ。パーティーの登録メンバーも4人までなので、今のままだと新人くんが入れないですし......」


「はい、それじゃあこの書類にサインよろしく。ちなこれ辞表ね」


 俺は手渡された書類に無言でサインをし、ベルベリと強い音を立てながら紙を半分に破いた。


「うわだっさ。オラついちゃう系?」


「はあ、紙切れに当たるだなんて......。頭を下げてお願いすれば、まだチャンスを与えたというのに......」


「はあ......俺たちとパーティーを組めていることの有り難みを分かってなかったみたいだな」


「まあ、道端で野垂れ死んじゃえばいいんじゃねー?」


「ふふ、私達なしで宝を回収するのは、相当難しいかと思います」


「ってことでまあ、おいとまさせてもらおうかなと。ヴァニッシュ!」


「はあい、さよならー」


「ごめんなさいねー」


 3人とも剣士のワープ魔法によって、どこかに消え去った。


 恐らく冒険者ギルドに向かい、さっそく除名処分をしている頃だろう。


 戦えない守れない、ただの足手まといにしかならない俺はついにパーティーを追放されたらしい。


「......だけどこのスキル、意外と強くね?」


 俺はレア以上のアイテムを探知できるだけで、それ以外は特に何もできない......。

 だがそんな俺のダウジングスキルにも、可能性を感じることがある。


 まず、棒切れというしょぼい初期装備にも関わらず、確定でレアアイテム90%、スーパーレアアイテム9%、Sランクアイテム1%と、結構な高確率でスーパーレア以上のアイテムを回収できるという点だ。


「全体の事象から、外れ続ける確率を引けば…少なくとも1回は当たるであろう確率が出てくる......」


 棒切れを使って地面に計算式を書く。


 一般的なガチャのように考えると、100回探知すればおおよそ63%以上の確率でSランクアイテムを1つ回収できる。


「改めて計算し直してみると、一攫千金のチャンスは十分にあるな......」


 具体的には45回くらい探知すれば、99%以上の確率でスーパーレアのアイテムを1つ回収できる。


 少なくとも10回くらい探知すれば、65%くらいの確率でスーパーレア以上が1つ回収できると予想される。


「問題は、俺が1人で回収できるかどうかなんだけど......」


 実際にアイテムを回収しない限り、取らぬ狸の皮算用でしかない。


 まともに生活するためには、毎日何かしらのアイテムを1つは回収していく必要がある。


「まあ、なるようにしかならないか......」


 まずは呼吸を整え、ダウジング用の棒切れに意識を集中させ、五感を研ぎ澄ませていく。


 すると、アイテムの方角はもちろん、おおよその位置関係がぼんやり掴めてくる。


「なるほど。まずはこの辺りから探索するか」


 アイテムが近ければ近いほど、ダウジング用の装備も強く反応するようになるので、まずは手探りしながら歩き回ることになる。


「今はただの棒切れだけど、いつか良い装備を手に入れたいところ......」


 新たなダウジング装備を手に入れ、激レアの出現確率をアップさせられれば、無駄足に終わるリスクも下がる。


 レアアイテムは10,000〜ほどだが、スーパーレアアイテムは100,000〜で、Sランクアイテムはさらに1桁飛んで1,000,000〜と破格の買取り価格になっている。


「ギルド飯が3,000〜5,000ゴールドほどだから…昼と晩合わせて6,000〜10,000ゴールドほどか」


 一生涯に1回しか見つからないと言われるほど激レアであるSランクアイテムをたくさん売れば、生涯食う分には困らない生活を送れるだろうが......現実はやはり甘くはない。


「命懸けなのにずっとレアアイテムしか取れなかったら、マジで泣けるけど......」


 ギルド飯に10,000ゴールドほど使わないと、食事の栄養が偏るため、健康的には暮らしていけない。


 世界中の食料や果物などはギルドが大部分を占領しているため、自給自足も難しい。


「しばらくはダウジングを続けるしかないよな......やっぱり」


 ギルドに提示されるクエストで高報酬なものはどれも討伐系ばかりで、採集クエストをやるくらいならダウジングでワンチャン狙った方が稼げる可能性が高い。


「はあ......なんて中途半端なスキルなんだ......」


 物を見つけられるだけで、実質ノースキルのようなものなので、他のジョブに転職もできない。


 やはり命がけのワンチャン探索ライフを続けるしかないようだ......。


「何か良いものが見つかればいいんだけど......」


 棒切れが示す方角に沿って、まずは浅い坂を下り、川沿いの道に沿って進んでいく。


「そういえば......近所に下水道まで通じる地下通路があったよな......」


 まさかそこにある訳じゃないよなと祈りながら進んでみると、案の定だった。


「マジかよ......絶対臭いぞこの中......」


 腐ったネズミがいそうな地下通路のドアを開け、中に侵入する。


「おええ......何だこの臭い......。でも我慢だ......稼ぎのために我慢するしかない......」


 不幸中の幸いだが、普段はギルドが管理している場所なので強敵はいないはずだし、かなり安全な探索になるだろう。


 腐ったドブをミックスしたような吐き気を催す匂いに耐えながら、下水道に通じる道路の手前付近にたどり着く。


 ーーーピピっっ!


 脳内に直接、アイテムが近くにあることを示す音が響き、俺の体を強く引っ張るようにダウジング用の棒切れが反応している。


「どこだ......上か......?」


 どうやら巨大な換気ファンの近くにダウジング用の装備があることに気づいた。


「クソ......よじ登るしかないか......」


 高さ2メートルほどの壁に思いっきりジャンプし、なんとか両手を乗せて全身を持ち上げた。


「お......何かあるぞ......?」


 換気ファンのちょうど手前くらいに、黒い石の棒が落ちてあった。


 回転する羽に指を巻き込まれないよう、そっと手を伸ばして、アイテムを回収する。


「マグネットの棒......みたいな感じに見えるけど、名称はマグネットバーか......」


 パイプのような形をした磁石の棒が見つかった。


 さっそく手に取ってみると、史上初のダウジング装備であることが分かった。


 さらに、脳内でビビビッ!という音が響き、レアリティはまさかのSランクと表示されている......。


「マジかよ......なんでこんなところで見つかったんだ......。


てか待て......何だこの性能......?


 なんとレアアイテム1%、スーパーレアアイテム50%、Sランクアイテム49%…つまり激レア以上を99%というとんでもない高確率で探知できるSランク装備だった。


 これからの探索効率が爆上がりするのは間違いない。


「今まで棒切れを使ってたのがアホらしくなるくらい強え......」


 ダウジングの反応も完全になくなったので、探知したのはこのアイテムで間違いないだろう。


「さて、もうこんなとこに用はないし帰るか......!」


 ウキウキな気分で、ササッと段差を下りようとしたら、何かがモゾモゾ蠢いている音がした。


「何だこいつら......?」


 体長1メートルほどの巨大ラットが3匹、血走った目で周囲をウロウロしている。


「くそっっ......とにかく臭いし、戦いたくねえ......」


 棒切れとは違い、マグネットバーはかなり頑丈な作りだが、あくまでも探知用でしかない。


 護身用の武器として殴っても、体格の大きいモンスター相手にはまず効かないだろう。


「よし、逃げるしかないな......」


 まずは奴らが背後を見せた隙に、足音を立てないように下り、ゆっくりと離れ、そのまま全速力で逃げる!


「っっごおおおお......!」


「っぎゃあああ......!」


 こちらに向かって奇声をあげながら、全速力で追いかけてくる。


 巨大なものに追われる恐ろしさに逃走本能が刺激され、自分の力量以上のスピードが出ており、どんどんラットとの距離が開いていく。


「よし......ドアのところまで戻れたぞ......」


 ーーーバタン!


「っふうう......っはあ......っはあ......」


 思いっきりドアを閉めて、深呼吸をした。


 逃げ足だけは早いので、なんとか襲われずに済んだ。


「これでようやく、棒切れもいらなくなったし、土に植えるか......」


 ダウジング用の装備とはいえ、所詮は棒切れなので1ゴールドの価値もないだろう。


 と思ったが、レアアイテムの中にも貴重なアイテムはあるので、ポケットに入れ直した。


 マグネットバーの方は超高額で売れそうだが、商売道具として持っておく必要がある。


「残ってるのは宿代と、パン1つ分だけか......。ほぼ無一文になるけど......しょうがない......」


 これからはもっと高く売れるものを拾いに行けるはず。今日はなんとか耐え凌ぎ、明日こそはちょっぴり豪華な飯を食いたい......。

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