一粒の願いを添えて

学生初心者@NIT所属

願うは何を

 7月7日。七夕。

 彦星と織姫星が会える日。

 願いごとをする日。


 そんな日であることすら忘れていた少女は普段通り、学校に向かった。


 学校生活で七夕だから何かあるというわけでもない。

 定期考査も終わり、夏休みが近づいている日の一つでしかなかった。


 夏休みの予定も徐々に埋まり始め、その日々を楽しみにしている彼女にとって、授業というものは退屈でしかない。


 それでも、しっかり受け、いつも通り、友達と下校していた。夏休みについての予定をより膨らませながら。


 そうして、友達とも別れ、一人となり、家に向かって歩みを進めていっていたとき。ふと、視界に入るものがあった。


 短冊だ。


 それを見たとき、今までの七夕の思い出が蘇ってきた。


 あるときは短冊にアイドルになりたいと書いた時もあれば、イケメン有名人と会いたいと書いた時もある。書きたいことがたくさんありすぎて、たくさんの短冊に書こうとして怒られた時もあった。


 そんな幼かった時の記憶。


 そんな願いは叶うことなんてなかったけれども、久しぶりに短冊に願いを書くのもいいと思った。


 しかし、書きたいものがあるかと言うとパッと浮かぶようなものはなかった。

 願うほどの欲がある物事がなかったからだ。


 でも、思い返すこともあった。最近、自分で何かやろうと思ったことってあったっけと。


 普段どこかに行くときも友達に誘われ、友達から通話が来て話をしたり。自らの意思で何かしようとしたことがなかった。

 すべてが友達からの誘い。

 それはまるで人形のようだった。


 そうして、彼女が書いた一言。


『自分のしたいことを見つけたい』


 それを笹につけて、少女。いや、女性は去っていった。

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