第17話:子泣きじじいみたい。

鴻鈞道人こうきんどうじんの爺さんを相手にしてたら道満さんがいつの間にか消えていた。


「もう大丈夫だ・・・さあ、マンションへ帰ろう」


「それにしても俺たちのためとはいえヨモツシコメには悪いことをしたな」

「俺たちさえ黄泉国に行かなきゃ、死なずに済んだのに・・・」


「あの女も散々、悪さしてきたんじゃ、あれがヨモツシコメの定めだったんじゃよ」

「気にすることはない・・・それにわしの友達に仇も打てたしな・・・」


「たとえ悪人でも誰も死んで欲しくなかっただけど・・・」


「おまえは優しいやつじゃの・・・春樹」

「さ、もう終わったんじゃ・・・おまえらはおまえらの道を、未来を行け」


俺は真凛と爺さんを連れてマンションに帰った。

ただし・・・小さいおじいちゃんは電車の中で、めちゃめだっていた。


「ジロジロ人を見おって・・・そんなにわしが珍しいか」


「そりゃ、珍しいだろ」

「じいさんみたいな人、人間の世界にはいないし・・・」

「子泣きじじいみたいな妖怪にしか見えないよ」


「なんじゃ、その子泣きじじっちゅうのは?」


「俺たちの世界、日本ってところには妖怪って想像上のお化けがいるんだよ・・・

その中に子泣きじじって妖怪がいるんだ・・・」


「失礼な・・・わしを、その妖怪とやらと一緒にするな」


「おじいちゃん、子泣きじじいよりいいキャラしてるよ」

「キャラ?・・・娘御、なんじゃそのキャラっちゅうのは?」


「キャラはキャラだよ・・・意味なんか分かんない」


「なんでもよいわ・・・それにしてもこの乗り物、便利じゃのう」

「もっともわしは、どこへでも空を飛んでいけるがな・・・」


「そうだよ・・・豚に変身した時は驚いたよ」


「豚ではないわ・・・あれは渾沌こんとんちゅうて、わしの別の姿じゃ」

わしは、もともと中国の仙人じゃからの」


「おじいちゃん、仙人さんなんだ・・・じゃ〜カスミ食べて生きてるの?」


「カスミじゃと?そんなもん食って美味いか?」


「だって仙人さんってカスミ食べてるって伝説みたいになってるよ」


「そんなもん食うか・・・いいかげんな情報じゃのう」


「じゃ〜おじいちゃん何食べてるの?」


「わしは何も食わんでも百年は生きるがの・・・」


「え〜百年も生きるの?」

「今現在、九十九年と3ヶ月更新中じゃ」


鴻鈞道人こうきんどうじんは自慢げにそう言った。


一連のこの非現実的な出来事は本当にあったこと。

誰も経験したことにない絵空事みたいな話。


おそらく誰かに話したところで信じて、もらえそうになかった。

そもそも、魂だけになった真凛が俺に見えるってこと自体が不思議で

しょうがなかった。


つづく。

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