第14話:前鬼と後鬼。

俺がヨモツシコメに投げた式札二枚は、空中で何かに変身した。


式札は、デカくなると見る間に化け物に変わっていった。

それはに二匹の鬼だった。

たぶん鬼だろうって俺は思った・・・。

でも見ると、ひとりは赤鬼、もうひとりは青鬼で二人とも凄まじい形相をしていた。


床に降りた鬼たちは俺に向かって言った。


「春樹・・・俺たちは前鬼ぜんき後鬼こうきってんだ・・・よろしくな」


「なんで俺の名前を知ってるんですか?」


「式神を使ったやつの名前くらい分かるのさ」


赤いほうの鬼はデカい釜を持っていて、青い鬼のほうもデカいかめを抱えていた。


この式神たちのことは、これまたあとで安倍晴明に聞いたんだけど、

なんでも、夫婦の鬼なんだそうで前鬼が旦那で、後鬼が嫁だって教えてくれた。

ラブラブカップルな鬼だったみたいだ。


そういえば後鬼、嫁のほうは、ちゃんとデッカいおっぱいがあった。

あまりじろじろ見てると真凛にどこ見てんのって怒られるな。


「え〜いなんじゃ・・・式神か・・・」


ヨモツシコメも、式神くらいは知ってるようだった。


「春樹、私たちがあいつの相手をしてる間に鏡のところまで行きなさい」


嫁の後鬼が言った。


「そうなんだ・・・君達は俺たちのことすべて知ってるんだ」

「これも俺のご先祖さまの安倍晴明の仕業なんだね」

「分かった・・・任せる」

「真凛、行くぞ・・・絶対俺から離れるなよ」


「くっついてるよ、金魚のウンチみたいに・・・」


真凛は俺のシャツにずっとしがみついていた。


「おまえらの狙いは鏡か?・・・おまえら生き魂だな・・・」

「おのれ〜そうはさせるか・・・」


ヨモツシコメが俺たちを襲おうと、迫ってきた。

そこにすかさず、後鬼がかめの中の水をヨモツシコメにぶっかけた。


かめの水は浄真水って水が入っていて化け物はその水を浴びせらて、

苦しさでのたうち回った。


「ほれ、春樹今の内じゃ・・・いけ」


今度は前鬼が言った。


式神とヨモツシコメが戦いが始まったので風呂に入っていた綺麗どころは

蜘蛛の子を散らすように、どこかへいなくなった。


そしてヨモツシコメに隙ができたおかげで俺と真凛はデカい風呂桶を回り込んで

鏡の場所までたどり着いた。


「おじいちゃん、食べられちゃった・・・かわいそう」


「しかたないよ・・・もう、あの化け物の腹に中で消化されてるかもな、諦めよう」

「さあ、アザを出して鏡に映すぞ・・・」


俺はシャツを抜いで真凛は着物の袖をめくった。


そして後ろを振り向くと、ヨモツシコメはいつの間にか右手にデカい薙刀のような武器を持っていて前鬼に立ち向かっていた。


つづく。


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