第13話:予母都志許売(ヨモツシコメ)
それは、豚に似ていて人間ふたりくらい乗せられるくらい大きくて足は
6本あって顔は目も口もなく豚特有の鼻だけが真ん中についていた。
そして、背中に大きな羽が生えていた。
羽の生えた豚さんになった鴻鈞道人は口もないのにしゃべった。
「ふたりとも、わしの背中に乗れ、ブヒ」
そう言われて俺と真凛は、羽の生えた豚の背中に乗った。
そしたら豚は勢い良く羽を羽ばたいて、あっと言う間に空に舞い上がった。
「しっかり捕まっておれよ・・・落ちるなよ、ブヒ」
俺たちを乗せた、豚は湖を難なく超えて、
そしたら豚は、屋敷の入り口を探してる間に鴻鈞道人に戻っていた。
「忍び込むぞ、ブヒ」
「あ、ブヒは言わなくていいのか・・・」
「真凛、俺から離れるなよ」
「うん、春樹にくっついてる」
俺たちは入り口から堂々と入って、見つかったら面倒だと思って
他の入り口を探したが、どこにも勝手口らしき場所は見つからなかった。
「どこの家だって勝手口くらいはあるだろう、まったく」
「しかたないのう・・・正面から乗り込むか・・・」
「ヨモツシコメは、すばしこいからの・・・捕まって食われんようにしろよ」
「春樹・・・式神は?」
「そうだ・・・式神」
真凛に言われて式神をもらってることを思い出した俺は、人型を二枚とも
シャツの胸のポケットから出した。
「なんじゅ?それ」
「俺のご先祖様の陰陽師から、もらった式神・・・俺たちを守ってくれるって」
「ほう・・・そんな便利なものがあるのか?」
「だから、ヨモツシコメに見つかるようなことがあったら、式神にそいつを
阻止してもらってる間に鏡から俺たちの世界に帰るって寸法」
「じゃ〜まずは鏡のある部屋を探さんとな・・・」
「屋敷は思ったより広かった・・・まずは一階から・・・ひとつひとつ部屋を
見て回ったが一階には鏡は見つからなかった」
「鏡はどこにあるんだよ・・・」
「ほんとにあるのかな?」
「上にあがってみるか・・・」
俺たちは階段を上っていった。
「真凛・・・離れるなよ」
「うん・・・くっついてる」
二階の部屋も一階に部屋と似たような部屋だった。
「このぶんじゃと三階も四階も同じじゃな・・・」
「たぶん鏡は最上階にあるとわしは思うんじゃが・・・」
「たしかに・・・大事なものは下の階なんかに置かないもんな」
俺たちは一気に最上階まで、階段を上っていった。
一番上の部屋は、他の部屋に比べて、超豪華絢爛だった。
しかも中央に大きな風呂があって、その中に五人くらいの綺麗な女たちが
湯浴みをしていた。
その真ん中の女性が一番派手で、まるで花魁さんみたいな、出で立ちで
キセルなんかくゆらせていた。
「もしかして、真ん中の女がヨモツシコメ?」
「みたいじゃの・・・」
「綺麗な人ね・・・」
「娘御・・・あれはカムフラージュじゃ」
「本性は見るに耐えない化け物じゃて・・・」
そしたら、そのめっちゃ派手な着物を来た、めっちゃ不気味でめっちゃ妖艶な
おばさんが、こっちを見て舌なめずりしながら笑っていた。
「ヨモツシコメ・・・」
「おまえら、なにしに来た・・・妾に食われにか?」
「ばああ・・・俺の大事な人をよくも食いおったな!!」
爺さんが憤慨した。
「おう、誰かと思えば
「おまえも妾に食われに来たか・・・」
ヨモツシコメの後ろに目をやると、そこに姿見くらいの大きさの丸い鏡が
綺麗な飾り棚に取り付けられてあった。
「鏡、見つけた・・・あの鏡だろ?」
そう言ったかと思ったら、いきなりヨモツシコメが襲ってきた。
「なんでもいよいわ・・・理由なぞどうでもよい」
「我が屋敷に足を踏み入れたからには、ただでは返さんぞ・・・」
化け物女の馬鹿でかいクチがパカッと開いたかと思ったら
「わ、おじいちゃん食べられちゃった」
「んんん〜・・・まずい、じじいじゃのう・・・次はおまえらで口直しじゃ」
「真凛、俺の後ろから絶対出るなよ」
「春樹にしがみついてる・・・」
「そうだ・・・式神っ」
俺は、すぐに、向かってこようとしているヨモツシコメに向かって人形型をした
式札を二枚とも投げた。
つづく。
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