第6話:なんだかんだ言って、いい感じのふたり・・・。
蘆屋道満に会えて、いろいろ分かったことはあったが、真凛を元にもどす
直接の手立ては得られなかった。
その件については道満が言葉をにごしたので意味が分からなかった。
道満がそのことを晴樹に話さなかったのは、それをふたりに教えると、ふたりが
お互い意識してしまって、ことがうまく運ばなくなることを懸念してのことだった。
だからそれいじょう踏み込まなかったのだ・・・。
男と女の関係は繊細だから・・・。
真凛を元にもどすヒントすらなく俺は魂だけになった真凛と生活をともにする
ことになった。
真凛の明るい性格は俺に癒しを与えてくれた。
まるで俺に妹が出来たみたいに・・・いや、もしかしたら恋人かもしれない。
そう思うのはまんざらな気持ちじゃなかった。
だからずっと、このままでもいいかもって思ったりした。
俺は仕事をしなくちゃいけなかったが、デザイナーなんかしてるから、
クライアントを訪ねる以外は自宅で作業できたので、ほぼ真凛と一緒にいて
やれた。
「あのさ・・ひとつ疑問・・・」
「なに?疑問って?」
「なんでさ・・・真凛、学生服着てるの?」
「魂になっちゃったら、普通なにも着てないんじゃないか?」
「ああ、それはね・・・最初、体を抜けた時は裸だったけどね」
「誰も、私のこと見えないんだから裸でも別にいいじゃん、って思ったけど、
晴樹みたいに見える人が現れた時は、裸じゃマズいでしょ」
「だからね、この制服は擬似的に着てるの」
「そう見えるようにしてるだけ・・・」
「制服・・・イヤ?」
「イヤじゃないよ・・・擬似的ってそんなことできるんだ」
「どんな衣装にでも変えることできるよ」
「へ〜便利だね」
「たぶん道満さんの力だと思う」
「ああ、それはあるかも・・・」
「あのさ・・・もう元に戻らなくてもいいんじゃないか?」
「なに?・・・どういうこと?、なに言ってるの・・・」
「ダメだよ、このままだと好きな人ができても恋愛とかできないじゃん」
「そうか・・・なるほどな、誰にも真凛が見えないしな・・・」
「見えてる人がひとりいるけどね・・・」
「いっそ、その人とラブラブな関係になるってすじがきもあるけど?」
「え?俺のことか?・・・ないない・・・いくつ歳が離れてるって
思ってるんだよ」
「俺なんか下手したら、おじさんのエリアに足突っ込んでるんだぜ」
「そっちはキャピキャピな女子高生だろ」
「恋愛対象になんかならないよ・・・なに言ってんだよ」
「そんなこと言ったって晴樹、私に好意持ってくれてるんでしょ?」
「道満さんがそう言ってたじゃん」
「好意って・・・意味がいろいろあるだろ」
「それがすぐに好きとか恋とかってのには結びつかないだろ?」
「私は・・・晴樹のこと・・・ちょっぴり好きになりかけてるんだけど」
「迷惑?」
「まさか・・・迷惑なんて、そんなことはないよ・・・」
「いやいや・・・無理だって・・・」
「なんで?・・・歳の差なんて関係ないんじゃなかったの?」
「たしかに、そうは言ったけど・・・」
「真凛には恋愛なんてまだ早いんだよ」
「ちゃんと勉強して、一流の大学に入って・・・」
真凛は自分の人差し指で俺の口を塞いで言った。
「亡くなったママと同じこと言ってる・・・」
「大人ってなんで、そんな当たり前で意味のない発想しか浮かばないのかな」
「それでよくデザイナーやってますなんて言えるね」
「悪かったな・・・もういいから寝ろ」
「私は眠らないから・・・眠らなくても体がない分疲れないし、体力を
回復する必要もないの 」
「晴樹と朝まで、ずっとしゃべっていられるよ」
「じゃ〜ひとりでしゃべってろ・・・俺は風呂入って寝るからな」
「私も一緒にお風呂に入る・・・」
「お〜っとなにげに大胆なことをいう子だな・・・」
「一緒にって・・・恋人でも夫婦でもないのに?」
「それに体がないんだから、入る必要ないだろ」
「気持ち、気持ち・・・魂でも綺麗にしとかないといけないじゃん」
「屁理屈こねて・・・一緒になんか入らないよ」
「あ〜ん・・・見捨てないでよ・・・はるき〜」
そう言って真凛は俺にしがみついてきた。
「え〜い離せ・・・そんな訴えるような目で俺を見るな・・・」
「いくら、甘えたって無駄だからな」
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます