第4話:蘆屋道満の塚。
歳も違うし、たぶん価値観も違う・・・女子高生の考えてることなんか、
俺には理解できないと思うし・・・理解もしたくないけど・・・なんてったって
一応は異性だ・・・男と女には違いない。
そしたら、もしかして・・・って一度は血迷ったって不思議じゃない。
真凛ちゃんにその気がなくてもね。
今のところ彼女には肉体がないんだから、どうこうできる問題じゃないんだけど、
もし実体に戻れたとしても相手は未成年・・・論外な話。
俺は、恥ずかしい考えをすぐに否定した。
そんなことより真凛ちゃんをもとに戻す方法を見つけないと・・・。
でも、何にも思いつかない。
何から、どこから手をつけたらいいのやら・・・。
お寺のお坊さんとか、霊媒師とか、除霊師?・・・そういう人に
見てもらってうってのは、って考えたが、そういうインチキ臭いそうな
人たちにお金を払うなんてドブに金を捨てるようなもんだ。
俺は迷信深いわけでもないし信心深いわけでもない。
ましてや占いとかは好きじゃない・・・なんで自分の人生、生きかたを人に
委ねないといけないんだよって思ってる。
自分が決めて、進む先に不幸が待ち受けていたとしても、それは俺が選んだ道
後悔したり悔やんだりする必要なんてないんだ。
ご先祖様が、陰陽師なんて訳の分からない職業だったにも関わらず、そういう
類の連中は、まったく信じない。
真凛ちゃんには、まだ悲しみが残ってる・・・心の悲しみが残ってるうちは
元の体には戻れないんだろうと俺は思った。
旅館には、打ち合わせのため四・五日滞在したが俺は真凛ちゃんのために
なるべく明るく振る舞って彼女の心が癒されるよう気遣った。
彼女は俺の、しょうもないダジャレに、腹を抱えてよく笑った。
子供のようにコロコロ笑う彼女は本当に可愛い。
で、俺はヤバいと思った。
相手は、まだ子供なのに・・・俺の心の中に彼女が少しづつ入りこんで来ていた。
ダメだって分かっていても、どうしようもなく真凛ちゃん・・・真凛に惹かれている
自分がいた。
そのことを否定すると無性に切なくなった。
いつしか俺は彼女のことを「真凛」って呼び捨てにしていた。
そして俺との出会いが真凛の運命を少しづつ変えていくことになる。
そんな気持ちを抱えたまま俺は真凛のご先祖様である蘆屋道満について
調べ始めた。
すると、たまたまこの岡山に道満の塚があるってことを知った。
それなら一度、真凛を連れて蘆屋道満のお塚さんを訪ねてみてはどうかと思った。
何も得られないかもしれない・・・でもなにかしないと先に進まないと。
真凛を連れて電車に乗って
それから約1キロほど歩いたところに林に囲まれて道満の塚があった。
「ここだ・・・」
「私、こんなところにご先祖様がお祀りされてるなんて知らなかった」
「ご両親からは聞いてなかったの?」
「お塚さんなんか祟りがあるって教えてくれかったもん」
「私も深く考えてなかったし・・・調べもしなかった」
俺と真凛はどちらからともなくお塚さんに手を合わせた。
「このあたりで何か参考になる情報が聞けたらいいんだけど・・・」
「ご先祖様と私、なにか関係あるのかな?」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
「ここにボーッと佇んでいても拉致があかないよな・・・」
「街へ降りて観光協会でも訪ねてみるか」
そう思って俺たちは道満の塚を離れようとした。
が、その時だった。
道満の塚のあたりから、急にあたりが暗くなってきて、さっきまで太陽の陽が
木々の間に差し込んでいたのに・・・にわかに様子が変わってきた。
完全に日光が遮られると、塚の前あたりに、少しづつ人の影のようなもの?
が現れはじめた。
俺たち、ふたりともなにが起きたのか分からず、キミが悪くなってその場から
逃げようとした時、後ろで誰かの声がした。
「おまえたち、わしに用があって来たのであろうが・・・」
振り返ると声の主は姿がはっきりと見えてきて、その人はまるで平安時代の
お公家さんみたいな格好をしていて、髭なんか生やしたお年寄りで、威厳に
満ち溢れたオーラを放って塚の前に立っていた。
つづく。
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