第3話:ご先祖様は陰陽師。

ってわけで、幽体離脱したままの女子高生、真凛ちゃんは俺について来る

ことになった。

まあ、どうせ他の人には見えないんだし迷惑かけることもないだろ・・・。


でも、思い返して見たら、びっくりすることだよな。

俺に魂が見えるなんて・・・なにか特別な能力が備わってるのかな?

こんなの生まれて初めての経験だよ。

もしかしてご先祖様の影響とか・・・。


まあ、見えることだし・・・見えてる以上このまま放って行ってしまうのも

可哀想だし・・・


俺は真凛ちゃんを連れて電車に乗って岡山に向かった。


まばらな他の客からは俺しか見えない。

誰も真凛ちゃんが見えないからね・・・。


「わ〜外、綺麗だよ・・・見てみて・・・」


電車はちょうど橋梁の上を走っていて緑一面の田んぼと綺麗な河が見えていた。


「悲しみに囚われたって言ってた割に案外元気じゃないかよ」


「落ち込んでたってしょうがないでしょ・・・」

「私、立ち直りだけは早いんだよ」


「ノ〜天気なだけだろ・・・」


「え?なに?」


「なにも・・・」


さて、これからどうしたもんか・・・。


「そうだ、腹減ってないか?」


「あのね・・・私、空気みたいなもんだから・・・なにも食べられないからね」


「あ〜俺の方がノ〜天気だったわ・・・」


とりあえず、岡山駅に降りたら腹ごしらえして先方さんに顔を出してから泊

まる旅館かホテルを探すか・・・。

当然、真凛ちゃんも金魚のうんこみたいに俺についてくるだろうし・・・。


岡山駅に着くと俺は、2階在来線中央改札付近にある「おみやげ街道」内にある

駅弁コーナーで、人気ナンバーワンの「桃太郎の祭りずし」を買った。


「駅弁、美味しい?」


「美味いよ・・・食べさせてやりたいよ」


「いいな〜、私も早く元の体に戻って美味しいモノ死ぬほど食べたい」


「そうだな・・・早く戻れるといいな・・・」


「おい〜・・・そんなに近くで覗くなよ・・・鼻息が荒いよ」


「あ・・・ごめん・・・食べられないくせによだれが出ちゃう」


「もし、戻れたら俺が腹一杯、ご飯おごってやるよ」


「本当?まじで言ってる?」


「まじ、まじ・・・」


駅弁食ったあとは駅からタクシーで友人の古民家へ。


軽く挨拶をしてから、お店の広告デザインについて打ち合わせをした。

その間、真凛ちゃんはカフェの中を珍しそうに物色していた。

ここでも店のオーナーも客も俺しか見えてない。


その夜は、宿泊した旅館で真凛ちゃんといろんな話をした。

連れがいるのに連れの旅館代がいらないって俺も幽体離脱したかった。


先祖代々の言い伝えによると真凛ちゃんのご先祖様は陰陽師だったらしい

ことが判明・・・。


これがまた、偶然にも僕のご先祖様も同じ陰陽師。

僕のご先祖様は、歴史上かの有名な「安倍晴明あべのせいめい


真凛ちゃんは、その苗字からして「蘆屋道満あしやどうまん」が想像されるが、彼女は間違いなく、そのおじさんだって言う・・・あまり興味なさそう。

実際そうだったかは先祖代々の言い伝えによるもの。


蘆屋道満は平安時代の呪術師、非官人の陰陽師で僕のご先祖様、安倍晴明とは

ライバルだったって話は聞いていた。


しかも真凛ちゃんの左腕の付け根には格子状のアザ(ドーマン)があるらしい。

で、実は俺の左腕の付け根にも、星形のアザ(セーマン)があるんだ。


ふたつ揃ってセーマンドーマンと言って海女さんが身につける魔除けと同じらしい。


その起源は陰陽道と関係するのではないかと言われていて、セーマンは

安倍晴明、ドーマンは蘆屋道満の名に由来すると、俺のじいさんから聞いた

ことがある。


やはり、俺と真凛ちゃんはなにか繋がり、関係があるのかもしれない。


遠い昔の話だから、どこまで信憑性があるのかは分からないが、

でも、そういう過去からの血脈が受け継がれていて、そのことで真凛ちゃんが

幽体離脱した要因になってるのかもしれないって俺は勝手に解釈した。


どちらにしても俺より真凛ちゃんのほうが霊感が人より強いらしいから、

その影響は多分にあるのかもしれない。


で、俺は真凛ちゃんを元の体に戻す、その方法を見つけるため、まるで

決められていたことのように彼女と行動をともにすることなった。


つづく。


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