第2話:不幸続きの少女。
「実は私、幽体離脱してるんです」
「幽体離脱だって??」
「って思うんですけど・・・」
「幽体離脱って・・・体から魂が抜け出るってことだろ?」
「それにしちゃ、俺にははっきり君の姿形が見えてるけど・・・」
「透き通ってもないし、ボケてもないし・・・」
「まあ、俺にも経験あるけどな幽体離脱・・・子供の頃だけど・・・」
「そうなんですか?・・・で?、阿部さんはすぐ戻れたんですか?」
「そうだね、あ、抜けてるって思ったけど、ヤバいと思って戻りたいって
思ったら戻ってたね」
「え?じゃ〜君の本体は?」
「私の家で眠ってます」
「で、眠ったまま、一ヶ月以上も戻ってなくて・・・って言うか戻れなくて」
「その間、私は体を抜け出したままなんです・・・」
「またなんで、そんなことになったの?」
「あまりに悲しいことがいっぱい重なって私ひとりになっちゃって、それが
原因で悲しみに囚われて精神的ショックで・・・生きてても意味ないなって
思ったら、体から魂だけ抜けるようになっちゃったんです」
「悲しいことって?・・・」
「最初は、大好きだった祖父母が次々なくなっちゃって、その出来事が
収まらないうちに、私の両親と弟が交通事故で亡くなっちゃったんです・・・」
「家に帰っても誰もいなくなっちゃって・・・私は悲しみのあまり放心状態に
なっちゃうし・・・ボーッと天井を眺めてたら、ス〜って・・・」
「もう抜け出て一ヶ月経ったから、多少は精神的に落ち着いて来てますけど
それでも起きたことは忘れられませんからね・・・」
「なんか、不幸続きだね・・気の毒に・・・」
「そりゃ、魂だって抜けるわな・・・」
「そうなんです・・・どうやったら元に戻れるのか、さっぱり分からなくて、
こうして彷徨ってるんです」
「で、君はなんでこの駅にいたのかな?」
「昼も夜も街中を彷徨ったんですけど、ここだけまだ来てなかったから・・・」
「それに駅ならいろんな人が出入りするから、もしかして一人くらい私のこと
見える人がいるかもしれないと思って」
「で、偶然出会った俺は君が見える、特別仕様な男だったわけだ・・・」
「俺って霊感ゼロなんだけど・・・」
「あ、電車が入ってきた・・・」
「じゃ〜ね、悪い、俺行かなきゃ・・・」
「え?行っちゃうんですか?」
「そうだね、仕事だからね」
「私もついてっちゃダメですか?」
「え?なんで?」
「だって、私が見えたのは唯一、阿部さんだけですもん」
「見える俺にも責任があるってわけか?」
「責任とってください」
「なんでよ」
「だいたい、そういう言い方したら、俺が君にとってもいけないことしたみたい
じゃないかよ」
「いたずらされたって訴えます」
「なに言ってんの?」
「だいいち、真凛ちゃんのこと誰も見えないんだろ?」
「あ、そうでした」
「ねえ、お願い・・・私も連れてって・・・」
「もう・・・しょうがないな・・・連れてくけど、俺の足手まといにならないこと」
「いい?」
「はいっ」
つづく。
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